夫亡くし半年…寂しさ募る
60代の主婦。夫を亡くして半年たちました。6年半もがんと闘い、大変な日々でした。独り暮らしは覚悟していましたが、現実の生活がこんなにもむなしく、寂しいものだとは思いませんでした。毎日気分が沈んで、涙が出て、時々吐き気におそわれます。
姉妹や友人と楽しいひとときを過ごしても、独りの部屋に帰れば、よけいに寂しさが募ります。
「暑いね」「寒いね」「これおいしいね」と、何気ない会話がすぐそばでできることが幸せなんだとわかりました。
今はできるだけ外出するようにしています。仕事や趣味も探していますが、なかなか見つかりません。いつか何か見つけようと思います。唯一、若いころから本が好きだったので、図書館や本屋巡りをしています。
落ち込むばかりでは何も変わらないので何とか乗り越えたいのですが、なかなか前向きになれません。(埼玉・W子)
◇
大切な人を亡くした後、二人でかわした何気ない会話の幸せをなつかしく思うことは決して後ろ向きではない、と思います。長期にわたる看病、大変でしたね。そして今、仕事や趣味を探そう、いつか何かを見つけたいと思っているあなたは、もう十分前向きに生きていらっしゃいます。夫の死を受け入れ、乗り越えようとしているのですから。
ほんの数日部屋に飾った花でさえ、枯れてなくなった時、その場がぽっかり空虚に感じるもの。何十年もともに過ごした人の存在をそう簡単には忘れられないのは仕方ありません。
あなたが涙を流せるということは、あなたが笑ったり幸せを感じたりできる人であるという証拠。すぐに結果は出ませんが、図書館に行ったり、友人と過ごしたりしているあなたの今の生活が、時間の経過といういやしの中で心の痛みを軽くしてくれると感じます。
ひとつ付け加えれば体をいたわることも忘れずに。1日の中でほんの少し楽しい時間を作り、それを徐々に増やし、寂しい気持ちが起きたらそれを文章にしてみる。それでも体調がすぐれないなら、遠慮なく周りにSOSサインを出して下さい。
(海原 純子・心療内科医)
(2006年9月29日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/jinsei/shinshin/20060929sy41.htm?from=os1
60代の主婦。夫を亡くして半年たちました。6年半もがんと闘い、大変な日々でした。独り暮らしは覚悟していましたが、現実の生活がこんなにもむなしく、寂しいものだとは思いませんでした。毎日気分が沈んで、涙が出て、時々吐き気におそわれます。
姉妹や友人と楽しいひとときを過ごしても、独りの部屋に帰れば、よけいに寂しさが募ります。
「暑いね」「寒いね」「これおいしいね」と、何気ない会話がすぐそばでできることが幸せなんだとわかりました。
今はできるだけ外出するようにしています。仕事や趣味も探していますが、なかなか見つかりません。いつか何か見つけようと思います。唯一、若いころから本が好きだったので、図書館や本屋巡りをしています。
落ち込むばかりでは何も変わらないので何とか乗り越えたいのですが、なかなか前向きになれません。(埼玉・W子)
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大切な人を亡くした後、二人でかわした何気ない会話の幸せをなつかしく思うことは決して後ろ向きではない、と思います。長期にわたる看病、大変でしたね。そして今、仕事や趣味を探そう、いつか何かを見つけたいと思っているあなたは、もう十分前向きに生きていらっしゃいます。夫の死を受け入れ、乗り越えようとしているのですから。
ほんの数日部屋に飾った花でさえ、枯れてなくなった時、その場がぽっかり空虚に感じるもの。何十年もともに過ごした人の存在をそう簡単には忘れられないのは仕方ありません。
あなたが涙を流せるということは、あなたが笑ったり幸せを感じたりできる人であるという証拠。すぐに結果は出ませんが、図書館に行ったり、友人と過ごしたりしているあなたの今の生活が、時間の経過といういやしの中で心の痛みを軽くしてくれると感じます。
ひとつ付け加えれば体をいたわることも忘れずに。1日の中でほんの少し楽しい時間を作り、それを徐々に増やし、寂しい気持ちが起きたらそれを文章にしてみる。それでも体調がすぐれないなら、遠慮なく周りにSOSサインを出して下さい。
(海原 純子・心療内科医)
(2006年9月29日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/jinsei/shinshin/20060929sy41.htm?from=os1