1年以内の自殺率は66倍…妻を失った老いた父、子供はどう支える?

2013年12月09日 17時31分09秒 | Weblog
日刊ゲンダイ 11月4日(月)10時26分配信

「なんでオレなんかが生き残って、アイツが先に逝くんだ……」

 妻に先立たれた夫は想像以上に大きなダメージを受け、絶望にさいなまれる。妻と死別後、半年以内の死亡率が独身者に比べて40%も上昇。死別後1年でうつ病を発症する率は15%アップし、1年以内の自殺率も66倍にハネ上がる。

 埼玉医大国際医療センターで、がん患者の遺族をサポートする「遺族外来」の担当医で、精神腫瘍科教授の大西秀樹氏が言う。
「女性に比べ、男性は配偶者に対する依存度が高い。高齢の男性は、家事をまったくやったことがないという人もたくさんいます。そんな自分を支えてくれていた大きな存在が、突然いなくなってしまうのですから、その喪失感は計り知れません。〈自分なんてどうなってもいい〉と、食事を食べなくなったり、通っていた医者に行かなくなってしまう人もいる。精神的ダメージは、体にも深刻な影響を与えます」

 男性は料理や洗濯といった家事が苦手だから、生活の質は低下する。女性に比べて悲しみや後悔を自分ひとりで抱え込んでしまう人が多く、遺族外来を受診する患者の8割弱が男性だという。それだけ、妻に先立たれた男性は危ないのだ。

 離れて暮らす自分の母が亡くなり、年老いた父が取り残されてしまった時、子供はどうやって支えればいいのか。

<「ひとり」にしてはいけない>

「まずはひとりにしないこと。可能なら、一緒に住むのがベストです。離れて暮らしている場合、実家に戻ったり、自分のところに呼び寄せる。誰かと一緒に暮らしているという感覚が安心感を与えます。死別直後は、〈一緒にやっていこう〉〈自分たちが支えるから〉と明言して、不安を取り除いてあげるといいでしょう」(大西教授)

 どうしても、そばにいることが難しい場合は、近所、保健所、民生委員などに相談して、できる限り様子を見てもらえるようにお願いする。ひとりきりにしないため、あらゆる手を打っておきたい。

 そばにいてしっかり話を聞き、何がいちばん問題なのかを把握することも重要だという。

 あくまでも「聞く」ことが大切で、余計なアドバイスをしたり、ヘタに励ましてはいけない。

「周囲がよかれと思ってかけた言葉に深く傷つくケースが多い。たとえば、〈時間が解決してくれる〉とか〈早く元気にならなきゃ〉とか〈これからはひとりで頑張っていかないと〉などと言われると、さらに落ち込んでしまいます。配偶者を失った悲しみは、本人以外には分かりません。また、何も言わずに〈もっと早く気づいてやれていれば〉〈もっといい治療法を受けさせてやることができたのでは〉などと自分を責めている。そんなつらい気持ちに追い打ちをかけてしまうのです」(大西教授)

 パートナーを失った遺族に対しては、周囲がしてはいけない援助と、するべき援助がある。

▼有害な援助
・アドバイスをする
・回復を鼓舞する
・陽気に振る舞う
・不遜な態度を取る
・過小評価
・私はあなたが分かる

▼有用な援助
・同じ境遇の人と接する
・感情を吐き出す機会を持つ
・誠実な関心を示す
・そばにいる

「どんな言葉をかけていいのか分からなければ、何も言わない方がいい。そばにいて、話を聞くだけで安心感につながるのです。社会的にも、遺族を傷つけない接し方を広く知ってもらいたい」(大西教授)

 母に先立たれてから父が酒浸りになっていても、無理にやめさせなくていい。たまには一緒に飲んで話を聞き、〈体を壊さないか心配している〉ことを伝える。自分で気づいて酒浸りの生活をやめてもらうしかないからだ。

 継続的にそっと支えることを心がけたい。
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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131104-00000005-nkgendai-life