「財務省の言いなり」予算編成に警戒せよ…岸田政権「公約破り」の懸念をどう払拭するか

2021年11月08日 09時50分55秒 | Weblog
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11/8(月) 6:02配信
現代ビジネス
不安だらけの補正予算

 今週10日に特別国会が召集される。この特別国会で、岸田自民党総裁が内閣総理大臣として指名されることになる。


 また、補正予算は待ったなしだ。総選挙で約束した大型景気対策をやってもらわないと困る。一方で財務省は、事業費を膨らませても真水を少なくしたり、前年度の使い残しの振替等の予算手法で可能な限り真の予算規模を小さくしたいだろう。

 あまりに財務省の言いなりになると、自民党は公約を実行しないという批判がおき、来年の参議院選挙は岸田政権では戦えないという自民党内の意見も出てくるかもしれない。

 補正予算の規模は、真水ベースで30兆円以上だ。というのは、GDPギャップは35兆円程度あるからだ。

 しかし、10月11日の筆者記事〈財務事務次官「異例の論考」に思わず失笑…もはや隠蔽工作レベルの「財政再建論」〉でも手厳しく批判した矢野康治事務次官はおとがめなしで、補正予算編成に従事しているようだ。となると、本当に国民が総選挙で臨んだ補正予算ができるかどうか、心許ない。

 そもそも、矢野氏には申し訳ないが、会計学の基本すら危ういレベルなので、きちんと仕事ができるのかというレベルだ。安倍晋三元首相も、月刊誌「WILL」21年12月号において、矢野氏は「(手法と主張の)二つの間違いがある」としている。
財務省に任せきりなのは大きな課題

 国会においても、矢野氏の資質について野党は大いに追及すべきである。事務次官は国会答弁に立たないという国会運営上の慣行があるが、それは政府の決めたことではない。実際には、国会が求めて事務次官も答弁したこともある。2014年6月3日の参議院厚生労働委員会における村木厚子厚生労働事務次官(当時)だ。

 ここで、与党が矢野次官の答弁を拒否すれば、国民の目にも誰が庇護者であるのかがはっきりわかるだろう。

 来年度の予算編成に残された時間もほとんどない。9月から自民党総裁選、そのまま総選挙に突入して、財務省に予算の中身もスケジュールもすべておんぶに抱っこという状態なので、これもある意味では大きな課題だ。

 いずれにしても、補正予算と来年度予算をどうするかは内政における大きな課題だ。下手をすると、岸田カラーはほぼなく、財務省色一色になる可能性もある。これは、来年の参院選を控えて大きな火種になる可能性がある。

 外政においては、総選挙期間中、中ロ艦隊が日本一周したのは看過できない。岸田政権の動きを探るために計画的された行動だ。それに対して、岸信夫防衛大臣はまともに反応したが、岸田首相の発信力は心もとない。緊急記者会見くらい開くべきだ。

 今回多くの国民に明らかになったのは、かねてから指摘されてきた日本の領海法の不備だ。10月25日の本コラム〈立憲民主、公明、共産の「お花畑」議論にもううんざり…大切にして欲しい「リアルな議論」〉 でも書いたが、40年間以上前、津軽海峡、大隈海峡等を領海にせず公海(国際海峡)にしたのは不味かった。

 津軽海峡は本来日本の「領海」だが、その中に「公海」があるのは、まるで家の中に「公道」があり誰でも通っていいようなものだと筆者は書いた。理屈上、そこで軍事的な行動をされても文句を言えない。今回の中ロ艦隊の行動は事実上軍事的行動であるが、まともな抗議すらできない。

 津軽海峡などを公海としている根拠は領海法附則なので、一刻も早く削除し、これらを日本の領海とすべきだ。これは、総選挙後の国会で行うべき法改正だ。津軽海峡等を日本の「領海」としても、外国籍船舶には無害通航権があるので、その範囲で対処すればよく、通常の航行には支障が生じない。

共産党との連携を解消すべき

 衆院選で議席を減らした立憲民主党は枝野幸男代表が辞任することになったが、来年の参院選や次回の衆院選に向けて、野党第一党として立ち直るには何が必要なのか。

 立憲民主党が総選挙で負けたのは、共産党との選挙協力だった。いくら閣外協力といっても、自衛隊違憲、日米安保条約破棄の共産党とは組めないという感覚はないようだ。

 「立憲共産党」と揶揄され、実際、連合やトヨタ労組はアレルギー反応を示した。その結果、立憲民主党は議席を大きく減らした。

 岸田政権がいまいちピリッとしない中、立憲民主党は、共産党との選挙協力をしなければ、大幅な議席増が望めたが、共産党との選挙協力という禁断の果実に手を出したばかりに、千載一遇のチャンスを逃した。結果として選挙協力がかえってアダになるのだ。そもそも世界の先進国では共産党が議席を持っている国は少なく、非合法化している国も多い。

 立憲民主党の打開策は、共産党との関係を元に戻すことであるが、個別の選挙区事情もあり、そう簡単ではない。首相指名選挙が行なわれる特別国会の閉会後、立憲民主党の代表選も行われるが、その際、共産党の距離感が争点になるだろう。何にもまして、共産党との連携を白紙に戻すくらいでないと、立憲民主党の立ち直りは期待できないだろう。

 かつては同じ民主党だったが、希望の党の設立で立憲民主党と分かれた国民民主党は、今回の総選挙を受けて、「改革中道」「対決より解決」の立場で、いわゆる野党合同ヒアリングにも参加しないとした。興味深い動きだ。
イメージ戦略が奏功した

 衆院選で日本維新の会が大きく議席を増やした。

 その背景と、今後の国政でどのような存在感を発揮するのか、維新の政策が反映される可能性はあるのか。

 維新は、公示前11から41へと大躍進だった。議席増30は、自民、立憲民主、共産のそれぞれ議席減15、14、2をそっくり吸収した結果だ。安倍政権から岸田政権になってやや左傾化し、立憲民主と共産は労働組合などから呆れられた。空いた保守層とリアルな選挙民層を、保守系の維新がいただいた格好だ。

 また、岸田政権となって、規制改革などに代表される「改革派」の影が薄くなり、株式市場関係者などから夢がなくなったという不満が出ていた。維新は、既存政党の中で唯一「改革」を標榜しており、この点でも不満層を上手く取り込んだ。

 安倍・菅政権は改革路線であったので、維新は差別化できずにそれほど議席数を伸ばせなかったが、岸田政権になって改革色がなくなったため、改めて見直されたとも言えるだろう。

 維新内でのイメージ戦略も功を奏した。大阪都構想での敗北で、橋下徹前大阪市長が政界引退し吉村洋文大阪府知事が維新の表看板になった。その結果、大阪小選挙区では、維新は公明に配慮し候補者を立てなかった4つを除き15で勝利した。自民は全敗だ。

 さらに、大阪では、府と多くの市で首長を抑えており、議会もかなり維新系議員が多い。彼らが選挙ではフル稼働するので維新勢力は強い。今回の総選挙では、大阪以外でも小選挙区で勝利するなど全国にも勢力を伸ばしている。これまで国政政党で一時の風で人気を集めた政党はあったが、下部組織までしっかりとしたものはなかった。その意味で、維新は初めての国政政党になろうとしている。

 維新が今後国政でどうなるか。まず、規制改革でその存在感を出すだろう。なにしろ、岸田首相は所信表明としては40年ぶりに規制改革に言及しなかった。衆院選公約集の中にも盛り込まない方針だったが、自民党党内の改革派からの要求で入れたらしい。
憲法改正に持ち込むことはできるか

 次に憲法改正だ。マスコミは、自公で改憲勢力というが不正確だ。公明党は改憲に熱心でなく、実際憲法審査会の運営に消去的だった。

 今回維新が、自民、立憲民主に次いで第三党になった。しかも、改憲に前向きな自民261議席、国民民主11議席と合わせると313議席となり、公明抜きでも衆院の3分の2、310議席を超える。

 となると、憲法審査会の議論は進むと期待できる。コロナ対応、国際情勢で日本が改憲しなかったために適切な対応ができなかったが、一刻も早く憲法改正に向けて議論すべきだ。

髙橋 洋一(経済学者)

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