ヨガ歴1年半という川崎市の主婦篠部(ささべ)藍(あい)さん(28)は、ヨガを始めてから、自分の中に大きな変化を感じている。
感情に振り回されず、精神状態を冷静に見つめ、すぐに軌道修正ができるようになった。決まった仕事は片づけないと気がすまなかったが、今は疲れたら休み、状況を見てペースを調整する。以前よりも「自然体」で日々を過ごす。
なぜ、こういう変化が起きたのか――。
篠部さんが通うクリパルヨガスタジオ(東京・渋谷)。ゆっくりと体を曲げていき、それ以上曲げたら痛い段階になると、主宰者の三浦徒志郎(としろう)さんから静かに声がかかる。
「無理に曲げようとしないでください」
動きを止めたまま、腹や胸の膨らみを感じながら、鼻から息をたっぷり吸い、ゆっくりと息を吐き出す。
「息を吸った時と吐いた時で、体は微妙に変化します。その感覚を感じて、身をゆだねてください」
「その時々の心の動きも、そのまま見つめて……」
篠部さんは、エアロビクスやバレエなど、動きの速い運動は経験していたが、こうしたゆっくりした運動は初めて。当初は雑念がわいてきたが、動作に慣れるに従い、体や心に意識を集中できるようになった。
回を重ねるうちに体も軟らかくなり、終わると、深い眠りから目覚めたような「すっきりした気分」を感じるようになった。
三浦さんは「ヨガは体を使いながら、自分の内面に意識を集中していくものです」と言う。どうやら、こうした特徴が〈自分の感情を冷静に見つめられる〉〈無理をしない〉という心の変化に結び付いたらしい。
東邦大医学部教授(統合生理学)の有田秀穂さんは、「すっきりした気分」を脳内の化学変化で説明する。被験者にヨガを30分やってもらうと、脳内の神経伝達物質「セロトニン」の量が増えた。この物質は精神を安定させ、不足するとうつ状態になる。
「ヨガのゆっくりとした腹式呼吸法は、この物質の伝達を担うセロトニン神経を活性化させる」という。
ただ、セロトニンに着目した研究では、太極拳、座禅、さらにウオーキングやフラダンスでも同様の結果が得られた。「腹筋を使った意識的な呼吸が共通点」と有田さんは考える。
ヨガが精神状態に及ぼす影響については不明な点も多く、今後の科学的な解明がまたれる。
(2005年8月26日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/renai/20050826ik04.htm
感情に振り回されず、精神状態を冷静に見つめ、すぐに軌道修正ができるようになった。決まった仕事は片づけないと気がすまなかったが、今は疲れたら休み、状況を見てペースを調整する。以前よりも「自然体」で日々を過ごす。
なぜ、こういう変化が起きたのか――。
篠部さんが通うクリパルヨガスタジオ(東京・渋谷)。ゆっくりと体を曲げていき、それ以上曲げたら痛い段階になると、主宰者の三浦徒志郎(としろう)さんから静かに声がかかる。
「無理に曲げようとしないでください」
動きを止めたまま、腹や胸の膨らみを感じながら、鼻から息をたっぷり吸い、ゆっくりと息を吐き出す。
「息を吸った時と吐いた時で、体は微妙に変化します。その感覚を感じて、身をゆだねてください」
「その時々の心の動きも、そのまま見つめて……」
篠部さんは、エアロビクスやバレエなど、動きの速い運動は経験していたが、こうしたゆっくりした運動は初めて。当初は雑念がわいてきたが、動作に慣れるに従い、体や心に意識を集中できるようになった。
回を重ねるうちに体も軟らかくなり、終わると、深い眠りから目覚めたような「すっきりした気分」を感じるようになった。
三浦さんは「ヨガは体を使いながら、自分の内面に意識を集中していくものです」と言う。どうやら、こうした特徴が〈自分の感情を冷静に見つめられる〉〈無理をしない〉という心の変化に結び付いたらしい。
東邦大医学部教授(統合生理学)の有田秀穂さんは、「すっきりした気分」を脳内の化学変化で説明する。被験者にヨガを30分やってもらうと、脳内の神経伝達物質「セロトニン」の量が増えた。この物質は精神を安定させ、不足するとうつ状態になる。
「ヨガのゆっくりとした腹式呼吸法は、この物質の伝達を担うセロトニン神経を活性化させる」という。
ただ、セロトニンに着目した研究では、太極拳、座禅、さらにウオーキングやフラダンスでも同様の結果が得られた。「腹筋を使った意識的な呼吸が共通点」と有田さんは考える。
ヨガが精神状態に及ぼす影響については不明な点も多く、今後の科学的な解明がまたれる。
(2005年8月26日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/renai/20050826ik04.htm