要注意!これが「打たれ弱い」部下へのNGワードだ

2012年11月29日 11時28分39秒 | Weblog
 「我慢が足りない」「些細な失敗でくじけやすい」若手社員が急増しているという。「打たれ弱い」社員とどう向き合っていけばいいのかを探った。

■ネガティブ思考の人ほど打たれ弱い

 ちょっと厳しく叱っただけなのに、次の日からその部下が会社に来なくなった――。極端な例だが、多くの企業で起きている。その理由として、「20~30代を中心に、我慢が足りない、葛藤場面に弱い、些細な失敗でくじけやすいといった『打たれ弱い』人が増えているからです」とメディカルケア虎ノ門の五十嵐良雄院長は分析する。

 打たれ弱い若者が増えている理由はいくつか考えられる。例えば、社会人になるまでに人間関係の訓練ができていないこと。気の合う友人同士のつきあいといった横の関係は濃密なものの、縦の関係の経験が不足している。そのため、会社勤めでは当たり前である上司と部下といった上下関係によるプレッシャーに耐えられず心が折れてしまう。

 部下が、打たれ弱いかどうかを見分けるポイントは何か。企業にEAP(従業員支援プログラム)を提供するアドバンテッジリスクマネジメントの執行役員研究開発担当エグゼクティブカウンセラーの奈良元壽氏によれば、ネガティブ思考に陥りやすい人や悲観的思考が強い人ほど打たれ弱いという。

 さらに「最近の研究では、自分自身と自分の思考や感情との距離感がうまく取れていない人も、打たれ弱いことがわかっている」(奈良氏)。つまり、観察者の立場で自分の思考や感情を捉えられればそれらに振り回されないが、一体化してしまうと些細なことにも大げさな行動を起こしてしまうという。

 また、過去や未来の出来事が優位になり、現在のことに集中できない人も打たれ弱いことがわかっているという。過去の失敗や未来の不安に捉われ、少しのミスにも動揺してしまう。

 では、こうした打たれ弱い部下を持つ上司は、どのように彼らと接したらよいのだろうか。

 「まずは、褒めること。いいところを見つけて褒めることで、相手の不安や緊張感を取り除いてあげることが必要です」と五十嵐氏は話す。

 メンタルヘルスに特化したコンサルティングを行うメンタルグロウの相場聖社長は、「打たれ弱い部下の褒め方には2つのポイントがある」という。

 一つは、具体的に褒めること。どの仕事のどの部分がよかったのか、どの辺が評価に値するのかなどをきちんと伝えることが大事だという。

 もう一つは、当たり前のことでも、きちんとこなしていることに関して褒めること。打たれ弱い部下の場合、自信をつけさせていくことが重要で、「自分自身が意識していない、当たり前にできていることも、評価を言葉で伝えてあげることが本人の自信につながる」(相場氏)。

 褒めるだけでは、人は成長しない。「言うべきことはしっかり言うことが必要」(五十嵐氏)であり、時には叱ることも大事だ。相場氏によれば、打たれ弱い人を叱る際、その人自身の人間性を否定するような言い方ではなく、事実を伝えていくことが大切だという。そのうえで「これからどうすればいいのか」「同じ失敗を繰り返さないようにするためにはどうすればいいのか」を自分で考えさせていくことが必要となる。

 また、「私は、君が○○してくれたら、とてもありがたい」というように、肯定的な依頼をすることが重要だと奈良氏は指摘する。そして失敗の対策は短期的かつ改善しやすいものにする必要があるという。例えば、よく遅刻する部下に対して「おまえはだらしがないだめなやつだ」と怒るのではなく、「遅刻はよくない。これからは、いつもより10分早く起きてみなさい」と、達成しやすい改善目標を指摘する。さらに「直面した困難さや辛さから逃げ出さず、部下と一緒にしみじみと味わい、自分の感情をコントロールさせることも重要です」(奈良氏)と付け加える。

■「新型うつ病」への対処法

 打たれ弱いこと自体は決して病気ではないが、最近では、不幸にして、部下がメンタルな疾患をわずらってしまうことも少なくない。その場合は、産業医や精神科医に診察してもらうことが何よりも肝心だ。

 「面倒見のいい上司は、メンタルな疾患に罹患した部下の問題を一人で抱え込み、自分まで調子が悪くなってしまうことがあります。自分の健康を管理するうえでも、医師や上役に相談することが重要です」と五十嵐氏は話す。

 メンタルな疾患にもいろいろあるが、その代表的なものが「うつ病」だ。「うつ病は従来、40~50代の人がよく患う病気でしたが、最近は20代後半~30代が中心になってきています」。五十嵐氏はその傾向についてこう語る。

 特に最近、20~30代を中心に増えているのが、従来型のうつ病と異なる特徴を持つ「新型うつ病」だ。相場氏は、「新型うつ病という名前は正式な病名ではなく、基準すら明確になっていませんが、従来型のうつ病とは明らかに違う病態として増加しています」と説明する。

 従来型のうつ病の特徴は、頑張りすぎて疲弊し、一人で悩みを抱え込んで発症してしまうことが多く、「自分が悪い」「自分はだめな人間だ」といった自責傾向が強い。

 これに対して新型うつ病は、自分の好きな仕事や活動のときだけ元気になったり、自責感に乏しく、他責的で、自分のうつ症状を会社や上司のせいにしたりするといった傾向がある。

 相場氏によれば、新型うつ病になってしまった部下と接する際のポイントは4つある。

 1つは、「頑張れ」などの励ましの言葉を避けること。これは従来型のうつ病に限らず、新型うつ病でも同じである。

 2つ目は、「○○してはいけない」「○○でなければだめだ」といった強制的・管理的な関わり、関係性を避けること。

 3つ目は、愛情型のコミュニケーションを取ること。まずは相手を受容し、心の痛みをわかろうとするといったことだ。

 4つ目は、自立促進型のコミュニケーション。相手が自分自身で行動していけるように接することで、これが新型うつ病への対応のキーポイントになる。

 打たれ弱い部下を持つ上司は、何かと気を使うことが多くなりそうだ。しかし、自分のチームに打たれ弱い部下がいたとしても、うまくコントロールしてチームに貢献できる人材に育てることができれば、チームの業績が上がるだけでなく、上司自身のリーダーとしての資質も磨かれていく。打たれ弱い部下は邪魔な存在ではなく、上司を鍛えてくれる“切り札”だと考えてみてはいかがだろうか。

百瀬崇=文 宇佐見利明=撮影

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20120831-00007017-president-bus_all

今日からストップ!脳を老けさせるNG習慣

2012年11月20日 09時10分08秒 | Weblog
日経ウーマンオンライン(日経ヘルス) 11月15日(木)13時55分配信

 年齢を重ねるとともに、物忘れが多くなったり、アイデアが浮かばなかったりと、“もしかしてこれって年のせい?”と心配になったことはありませんか?

 もしかしたら、それは、脳を老けさせる習慣のせいかも!

 医師で「脳の学校」代表取締役の加藤俊徳さんによると、生活習慣や、ものの考え方ひとつで脳のストレスが増えてしまい、成長が妨げられるそう。

 そこで、加藤さんに、「脳を老けさせるNG習慣」について教えてもらいました。

1■21時以降に食事をとる

21時以降は脳や体がお休みモードに入っていく時間。食べることによっても脳は働くので、この時間の食事は、休むはずの脳に負担を強いることになってしまう。

2■人の悪口を言う

人の悪口など、否定的な言葉を使ったとき、一番に聞こえるのは、自分の耳。「ネガティブワードは、脳を鈍化させます。脳をいつまでも成長させたいなら、ネガティブな言動はできるだけ避けましょう」

3■会社と家の往復のみ

毎日決まりきったマンネリな生活では、脳が“慣れ”てしまい、働きが鈍化する。たまに通勤ルートを変えたり、寄り道したりするなど、日常生活に変化を与えるだけでリフレッシュできる。

4■太りすぎる!

「肥満などの生活習慣病は、脳細胞が傷つく原因になります。食生活に気をつけたりコンスタントに運動をしたりして、脳の成長を妨げないように気を付けましょう」

5■運動不足!

日中、体を動かさないと、夜もいい睡眠が取れず、脳も休まらない。また、運動不足だと、運動を司る脳領域が活性化しないので、意識して体を動かそう。

6■10cm以上の高さのハイヒールを履く

足首を立てて履くハイヒールは、足のほか肩や腰にもこりや痛み生む。痛みを感じるのは脳の思考系の領域。痛みが大きくなると、その分、判断力や思考力などが低下してしまう。

7■焦る・慌てる・急ぐ

ゆっくり物事と向き合って考え、行動すると神経細胞の枝が伸び、各脳領域が連動して働くので、思慮の深さが育まれる。急ぎすぎていると感じたらペースダウンを。

8■イライラする

「いら立ちの原因はいろいろありますが、そのひとつが脳の同じ部位を酷使すること。脳内の血流が悪くなり、疲れから怒りっぽくなる場合があります」そんなときこそ深呼吸で気分転換を。

9■ケータイ・スマホを手放せない

毎日の予定も、友人の電話番号も書いたり覚えたりせず、ケータイやスマホに頼り続けると次第に脳を使わなくなり、老化が進む。アナログな習慣も取り入れて。

10■人の目を気にしすぎる

自分が心地よいこと、楽しいことを積極的に行うことで脳は成長していく。人の目を気にして、行動を制限すると脳は成長しにくくなるので「自分思考」を大切にしよう。

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 加藤さんは、「脳の神経細胞の数は、生まれたときが一番多く、年齢とともに減少しますが、脳細胞は、新しい刺激によって、年齢に関わらずどんどん発達します。そして、脳のネットワークが強化されると、脳は成長できるのです」といいます。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20121115-00000001-health-soci

佐藤優(下)「歴史と国際政治の教養を磨け」

2012年11月14日 10時55分18秒 | Weblog
 トップを目指す人にとって、読書は絶対に欠かせない。読書が代理経験になるからだ。組織のピラミッドを上がっていく人たちの体験には、何か共通するものがある。



 だから、成功者の伝記を読むのはすごく意味がある。ただし、むやみやたらに読んでも意味はない。読むなら、日本人の伝記よりも、海外の伝記のほうがいい。

 おそらく日本的なノウハウというのは、すでにみんな持っている。それよりも、カーネギー、ロックフェラー3世、李明博といった海外の人物の自伝のほうがお勧めだ。そちらのほうが、グローバルな時代に生き残るためのヒントを多く得られるだろう。

 今、どこの企業も混乱しており、30、40代の人は、どうすれば自分の仕事が評価されるかわからなくなっていると思う。実はこの混乱は、政治の混乱とものすごく関係している。

 日本の内政が極度に混乱するのは、国際情勢がすごく混乱しているからだ。つまり、これは構造的な問題といえる。

■ 世界が混乱すると、日本も混乱する

 たとえば、14世紀の南北朝時代に動乱が起きたのは、明という新たな世界帝国が誕生してアジアを支配したことと関係している。明という巨大国家とどう付き合うかが、日本、朝鮮、ベトナムなどの周辺国にとって、深刻な問題となった。

 そうした中で、日本は2つに分かれた。一つは、グローバルな潮流に従おうとする北朝の流れ。もう一つは、グローバル化に逆らおうとする南朝の流れ。今でいうと、「TPP亡国論」を唱えているような人たちだ。しかし、南朝のような考えはアナクロニズムで通らず、結局、グローバリズムを一部取り入れることになった。

 次の大混乱は16世紀。それを引き起こしたのは、スペインとポルトガルの世界制覇だ。ポルトガル人が日本に到達して、鉄砲を持ってくると同時に、キリスト教というグローバル基準の宗教を持ってきた。これに対してどう対応するかで国が割れた。

 織田信長がグローバルな流れに入っていこうとしたのに対して、明智光秀、豊臣秀吉、徳川家康らは天皇との関係を重視し、キリスト教に対してネガティブな態度をとった。鉄砲などの技術的なものは取り入れる一方で、キリスト教(カトリシズム)というドクトリンは取り入れなかった。そして鎖国の方向へ向かっていった。

 こうして江戸時代の安定した状況が続いたが、幕末に再び混乱が生じた。その背景にあったのは、アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、オランダによる帝国主義だ。こうした国々が、清帝国の衰えによって生まれた空白を狙い、東アジアでも露骨に植民地獲得に走り始めた。

 グローバル化の圧力によって、アウタルキー(自給自足の経済)を維持できなくなった日本は、新しいシステムへの適応を目指した。そして、近代化に成功した日本には、憲法ができ、普通選挙ができ、2大政党制までできた。

 それが1930年代になって再び混乱する。原因はナチスの台頭だ。ナチスやイタリアのファシズムは、これまでの国際法秩序を一方的に覆そうとして、日本もその流れに乗ろうとした。

■ 帝国として再編する中国

 つまり、歴史を振り返ってもわかるように、日本に大きな混乱が起きるときには、必ず世界秩序の大きな変化が起きている。そして今起きている大変化には、2つの震源地がある。

 1カ所は中国だ。現在の中国は、帝国として再編をすると同時に、民族形成(ネーション・ビルディング)を始めている。この2つが同時進行するのは、かつてなかった形態だ。強いて言えば、ハプスブルク帝国に似ている。

 これまでの中国は、共産党の中央委員会に対して忠誠を誓っていればいいという、プレモダンな帝国だった。均質なネーションではなかったし、農民が中心になって動かない状態にあった。当時は、文字言語を通じてのコミュニケーションはできたけれども、中国人同士でも口語では意思疎通が必ずしもできなかった。

 その状況が産業化によって変わった。

 産業化は、民族形成と近代化とパッケージになっている。産業化に伴い、同じ文字言語を話す人たちが出てくることによって、中華帝国における「漢人」とは異なる、「中国人」という国民が生まれつつある。しかも、ネーションが形成されるには、必ず敵のイメージが必要になる。その敵のイメージが日本になってしまっている。

 ナショナリズムが形成されて、ネーションビルディングが行われる過程においては、自分たちの代表者によって自分たちは統治されるという、「自己統治の原則」が必ず出てくる。それは民主的な普通選挙と関係してくる。

 しかし、中国では普通選挙が保証されておらず、今も国家指導部は共産党の密室の中で選ばれている。これは絶対に持たないと思う。中国ぐらいのGDPがあって、1人当たりGDPにしても日本の10分の1はある国で、今のような略奪や焼き打ちが起きるというのは、異常な現象だ。

 ほかに、合理的に考えて明らかに意味がない航空母艦を作るのも理解できない。第7世代の戦闘機が出てくれば、こんなもの単なる標的にしかならない。それから近隣諸国との領土問題も深刻化している。日本だけではなく、フィリピン、ベトナムなど周辺国との関係がすべて悪化している。

 なぜこうしたことが起きているのか。それは中国人自身にもわからない。何かに対して怒っていることは間違いないが、何に対して怒っているのかがよくわからない。

 突然眠りから覚めた龍が、何かわからないけれど怒って尻尾を振り回して、あっちこっちが迷惑しているという状況だ。世界はどうやって中国と付き合ったらいいかがわからなくなっている。だからこそ、「中国とどう付き合うか」が、今の政治の大きな軸の一つになっている。

■ もう一つの震源地はイラン

 もう一つの震源地はイランだ。イランはペルシャ帝国の再建し、世界帝国になろうとしている。その背景には、シーア派による支配という論理と、核を保有しているということがある。イランも、中国と同じように、帝国を形成していくプロセスにおいて、国際社会の既存のゲームのルールを一方的に破壊し、自己に有利なものに変えようとしている。

 こうした状況下で、世界的な規模の混乱が起きている。その混乱の中で日本の政治の混乱があり、日本の経済の混乱が起きている。企業にとって、中国ビジネス抜きの企業戦略は考えられないし、中東抜きのエネルギー戦略は考えられない。

 中国、イランで大きな動きが起きている一方で、アメリカも岐路に来ている。

 私が重要だと思うのは、シェールガスの開発だ。シェールガスが完全に確保できるようになれば、アメリカは2030年代にエネルギーの輸出国になるだろう。そうなった場合、もしかしたら新しいアメリカの時代が来るかもしれない。それは世界帝国としてのアメリカではなくて、モンロー主義(孤立主義)への回帰かもしれない。

 これまで、アメリカが世界帝国を目指して、中東まで出掛けていたったのは、エネルギーを確保しなければいけなかったからだ。もし自力でエネルギーを確保できるようになれば、「国内の成長を優先したほうがいい」「無理をして人に嫌われてまで外国に出てく必要はない」というふうになるかもしれない。

 そうなったとき、アメリカの勢力圏が南北アメリカに留まるのか、大西洋、太平洋を含めた構造になるのか、あるいは大西洋になるのか、それはわからない。しかし、アメリカも変わっていくことは間違いない。

■ エリートは感情に流されてはいけない

 そうした変化があるにもかかわらず、日本ではいまだに詐術が横行している。たとえば、日本政府もマスメディアも「尖閣諸島は日米安保条約5条の適用範囲だから、中国が攻めてきても米軍が守ってくれる」という雰囲気を醸し出そうとしている。

 しかし、実際に安保条約の5条を読んでみればわかるが、米国が自動的に介入するわけではない。第5条には、「自国の憲法上の規定及び手続に従つて」という制約が付されている。米国憲法では、大統領に宣戦布告を行う権利はない。宣戦布告権や軍隊の編成権、歳出権などは、連邦議会に属している。

 では、米議会が中国に対して宣戦布告するのか? 

 それはまったく現実的ではない。だから、もし尖閣諸島をめぐって日中の武力衝突が発生しても、米軍が日本側に立って行動する可能性は低いとみていたほうがいい。

 こうした背景から、何となくアメリカは頼りにならないのではないかという形で、感情的な反米が出てくる。こういうのがいちばん危ない。エリートになる人たちは、こうした感情論に流されてはいけない。冷たく現実のメカニズムがどう動いているのかについて勢力均衡的なものの見方をしなければいけない。

 こうした思考の訓練は、ビジネスパーソンにも欠かせない。特に歴史や国際政治の教養は必須の教養になる。

 歴史というのは近代的な現象であって、複数存在する。だから反米史観も構築できるし、親米史観も構築できる。ただ、うそだけはついてはいけない。歴史に点と線をつないでいくときに、点のないところに点をつくってはいけない。そのルールを守れるかが、複数の歴史観を持つか、陰謀史観、謀略史観に染まるかの違いになってくる。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20121114-00011683-toyo-bus_all


佐藤優(上)「死から逆算して生きよ」

2012年11月14日 10時45分06秒 | Weblog
東洋経済オンライン 11月13日(火)11時30分配信

 日本の新しいモデルを創る「新世代リーダー」とはどんな人なのか。どんな能力、教養、マイ ンドセット、行動が必要となるのか。国内外のリーダーを知り尽くした、各界の識者たちに「新世代リーダーの条件」を聞く。
 第1回目は、『週刊東洋経済』で 「知の技法 出世の作法」を連載している作家の佐藤優さんが、組織でトップを目指す人間に求められることを語る。
 日本のロールモデルを目指すような人たちは、まず目的論的な思考をすべきだ。世界では目的論的な考え方が主流なのに、日本ではポストモダン的な思想が強く、目的論が否定されてしまっている。しかも、日本の仏教的な土壌では、すべては縁起から成り立つという考え方が強い。

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 大きな物語がないところで、ポストモダンということになると、何もなくてただ現象面だけに漂流することになる。たとえば、スキルだけをやみくもに追ったりしてしまう。

だから、どんな目標でもいいから、まず目標を持つことだ。そして、自分が社長なり会長になったときに、何をやるかというふうに、終わりから考える。 棺桶に入るとき、死ぬときのことも考えたほうがいい。ギリシヤ語でいうところのテロス。これは、終わり、目的、完成という意味だ。後ろから逆算して考えて、今は何をやるかという組み立てをすることがいちばん重要になる。

■ 耳学問の前に、基本を勉強せよ

 それから、大きな矜持を持って、小さなプライドを捨てることだ。特に重要なのは、知らないことと知っていることの仕分け。知らないことを知ったかぶりしてはいけない。そのうえで、ちゃんとした手続きに従って、積み重ねて勉強していけばいい。

 大切になるのは全体の見取り図だ。たとえば、これから中国マーケットが非常に重要になるとして、35歳の人が、仕 事で使えるような中国語を習得するとなると、大体5年間はかかる。もし40代後半であれば、記憶力が鈍るのでもっと時間がかかる。そのあたりの時間的なコ ストの仕分けをしないといけない。

 各論を学ぶ際には、確立した学術論文や本から基礎知識を身につけたほうがいい。そのうえで、耳学問、勉強会であるとか、同業者間のフェイスブックであるとかに入っていけばいい。その順番を間違ってはいけない。

 国、家族、仕事、趣味など、人生の目的をどこに置くかは、各人の価値観によって違ってくる。

 時間の有効配分の問題として、仕事でトップになることと、家庭生活とを、両立するのは非常に難しい。ゼロサムゲー ムとまでは言わないけれども、構造は限りなくゼロサムに近いと考えたほうがいいと思う。だからトップになった人たちは、人生のどこかで、家庭生活や趣味を 犠牲にしている。すべての面で幸せを望むのは無理だ。

 そして、上に行けば行くほど、偶然の要素が強くなる。物書きでも通訳でも何の世界でも、トップになる人の共通点は運がいいことだ。運の要素がたぶん99%だと思う。ただし、残りの1%に実力がないと絶対に運をつかめない。

 裏返すと、上位10%に入るために、運の要素はほとんど関係ない。ほとんどが実力だ。だから、上位1割に入るため に努力することは、絶対無駄にならない。大体の企業において、中間管理職までは実力でいける。たぶん、執行役員も実力でいける。そこから先は運と巡り合わ せで決まる。

■ 李明博の生き方から学べ

 ビジネスパーソンにとって、韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領の生き方は参考になる。彼の出世モデルから学べることは非常に多い。

 彼は徹底したリアリストだ。上司を選べないことを理解し、上司に合わせていくことによって、40代にして現代建設の会長にまで上り詰めた。大統領としての評価はさまざまだが、大統領になるまでのプロセスにおいて、努力と運の両方をいちばんうまく回してきた人だといえる。

 案外見過ごされているのは、彼が非常に熱心なプロテスタント、カルヴァン派のキリスト教徒だということだ。「仕事 は他者のためにやる」というモラルが非常に強い。これがやっぱり出世のコツだ。逆説的だが、利他性を重視することで、それが自分に返ってくる。「情けは人 のためならず」という構図だ。

 大切なのは、自分のことと、会社のことと、国家のことを重ねるように、同心円的な心理を持つことだ。最近は、新自 由主義批判が行きすぎている。競争に疲れてしまって、若い人たちが競争から簡単に降りすぎるし、自分の狭い世界を簡単につくりすぎてしまっている。それに 対しては警鐘を鳴らしたい。


 「出世は運と関係する」ということにも関係するが、人生を歩むうえで、宗教的な何か、超越的な何かは持っていたほうがいい。どの宗教であるかは関係ない。ご先祖様でも、お母さんでも、お父さんでも何でもいい。

 誰にでも、最終的に宗教がどこかで必要になる。人間には、時間も可能性も永遠ではないという制約条件がある。その死と向かい合うことから宗教が出てくる。無宗教の人でも、死に関しては何らかの理屈が必要になってくる。

 宗教学の基礎を知っていれば、たとえば、靖国神社に代替する宗教的に中立な追悼施設を作るということが、ありえないことがわかる。追悼という行為自体が宗教的だから、それは人造宗教、国家宗教をつくるということになってしまう。

■ 白熱教室よりも、古い形の勉強を

 いわゆるリベラルな人や、靖国神社のA級戦犯合祀に反対する人たちは、宗教的に中立な国の追悼施設だったら構わな いと言うが、公設したら完全な国家神道と同じになってしまう。それは他の宗教の上に立つ宗教をつくることになる。宗教学の基本的な知識に欠けているから、 事実上、そういう議論が出てくる。

 重要なのは、超越的なものや、宗教について無定義のままに話をしないことだ。ところがポストモダンの洗礼を受けて いる30代、40代の人たちは、定義というもの自体を拒否する傾向がある。「定義自体に意味がない」というのが、知的な訓練を受けている人たちの主流な考 え方になっている。

 今重要なのは、ちょっと古い形の勉強だ。たとえば、公務員試験も司法試験も、資格試験は基本的に古い形の勉強といえる。資格勉強というのは、何らかの明確な定義に基づいて、そのうえで運営していく能力を磨くものだ。

 あるいは大学入試の勉強でもいい。それも東大とか一橋とか慶応とか難しい大学の入試ではなくて、大学のセンター試験でいい。ああいう基礎的な知識を確認する試験は、定期的に受けておく必要があるのかもしれない。そうすれば、つねに高校レベルの学力を維持できる。

 サンデル教授のような双方向型の授業は、結局は床屋談義になってしまう。問題は、サンデル教授ではなく、学生の水準にある。大学の助教ぐらいのレベルの人を相手にするならまだしも、学生を相手にしても意味がない。

 だから学生は、あるところまでは受動的な形で知識を身につけていくことが非常に重要になる。それがないところで「自分の意見を言ってみろ」といっても、知的にはほとんど意味のないことになってしまう。

 仕事でも経験のある上司に2、3人の部下が学ぶみたいな形はとてもいい。ただ、一部の日本企業にあるような、体育会的に「ちょっと若い奴を鍛えてやるか」というのはダメだ。

■ 焼き餅をやいてはいけない

 職場の部下や子どもにストリートスマートさを身につけさせるには、「こういう人は面白いよ」というモデルになる人間を見せたほうがいい。それから焼き餅をやかないように、きちんと教育をしておくべきだ。

 今の偏差値教育、受験競争は焼き餅を助長するところがある。しかも基本的に記憶力の試験だから、反射神経の勝負になってしまう。記憶というのは反復していると、パターン認識されてしまい、外側のものが見えなくなってしまう。その危険性に気づかないといけない。

 結局、若い頃にどれくらい本を読んでいるかがカギになる。

 たとえば、経済学者の中谷巌さんが、主流派経済学から離れたいちばんの理由は、若い頃、肺の病気をしたときに、お父さんが買ってきた世界文学全集を読んでいるという蓄積にあった。あと竹中平蔵さんも読書家だ。若いときに読書経験をある程度ためていないといけない。

 子どもたちには、合理的な受験勉強をやらせるべきだ。

 率直にいって、中央大でも、明治大でも、法政大でも、同志社でも、付属中学や付属高校に入るには、ものすごいエネ ルギーがいる。覚えないといけないことがたくさんある。でも大学レベルで、そうした大学に行くのは難しくない。早稲田や慶応にしたってそうだ。中高で早慶 に入るには、本当に血の小便が出るほど勉強しないといけない。

 だから、もう少し全体像を見て、「この程度のことならできるだろう」と親が差配してあげないと子どもが疲れてしま う。駆け足するときとゆっくり歩くときとを区別してあげないといけない。子どもの頃から、スイミングスクールに通わされて、サッカーやらされて、そのう え、学習塾にも通わされるというのは、かわいそうだ。

 ほかにも、日本の教育には構造的な欠陥がある。理科系の人たちは、歴史や古典をほとんどわからないし、文科系の人は、数学がすってんてんの人が非常に多い。これは危ない。これほど異常にバランスが悪いのは日本ぐらいだ。韓国や中国でもここまでバランスは悪くないと思う。

 日本に多いのは、ピンポイントで一定の分野は深く知っているけれども、あとは全然知らないという人だ。これでは応 用が全然利かない。しかもインターネットがその傾向を加速させている。インターネットの場合、自らが選択しているという形になるから、自分で理解できるも のか、共感できるものしか読まなくなる。

 今のままだと、日本のエリートの劣化が止めどなく進む。そうした状況を打開するには、組織と折り合いをつけられるギリギリのところで、海外に留学するとか、何らかの自己実現を図っていくしかない。

■ 上にいく人は、組織にどっぷり入る

 組織を飛び出すと、一瞬のある短期間においては、上昇しているように見えることがある。しかし、人間は怠け者だから、長続きするのは難しい。組織というのは人を引き上げてくれるところがあるから、やっぱり重要だ。組織を敵と考えるのはよくない。

 むしろ、組織をうまく利用することを考えるべきだ。

 私だって、外務省という組織がなければ、ロシア語は身につかなかったし、政治エリートと付き合うこともできなかった。今はフリーランスにならざるをえなかったからなっている。そもそもフリーランスはまったくフリーじゃない。あくまで、制約の中における自由にすぎない。

 組織に所属しながら、半分フリーランス的に生きることを考える人もいるが、組織というのはそんなに甘くない。そうしたケースは、どちらかというと組織にとって役に立たない人が、自然にはみ出していく形で起きる。

 組織というのはすごく吸心力あるから、実力があって上に行こうとしている人は、どんどん中心に吸い寄せられていく。どこの国でも会社でも、上に行く人たちは、組織にどっぷり入っているし、出世する人は生え抜きの人が非常に多い。(続きは11月13日に公開します)

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20121113-00011623-toyo-bus_all