エニアグラムの背景 | エニアグラムの目的 | エニアグラムの概要 | 囚われ | タイプ別説明
エニアグラムの背景
二千年間イスラム社会に秘匿された神秘の人間学
エニアグラムの発祥についての詳細は定かではないが、およそ二千年前のアフガニスタン地方で、その体系が築かれたとされる。
紀元七世紀にイスラム教が生まれ、アラビア半島からアジアに教勢を拡大し、八世紀には北 西インドにまで勢力を伸ばした。ここでイスラム教は、エニアグラムと遭遇することになる。
その後、エニアグラムは、イスラム教徒に受け入れられ、徐々にイスラム世界全域に浸透していった。
エニアグラムを特に重視したのは、スラム教の神秘主義的宗派であるスーフィー派だった。スーフィー派は、エニアグラムを天体の運行から、人間の意識の発達のマッピングにまで幅広く活用したが、ことに社会のリーダー育成のマニュアルとして重視し、その実用性と論理性を高めていった。
スーフィー派において、エニアグラムは、門外不出の”秘伝”とされ、霊的指導者から、二人の優れた弟子に代々口伝された。ただし実際にエニアグラムを使うことは、そのうちの一人 である次代の指導者にしか許されず、もう一人は、指導者の不慮の死に備えるための存在で、実際にエニアグラムを活用することは許されなかった。さらにその他のリーダーたちには、エニアグラムの全容が明かされることはなく、各人のタイプに関する智恵だけが授けられ、タイプごとの適切な能力開発が実践されたという。
こうした事実から、スーフィー派が、このエニアグラムをいかに貴重な知恵とみなしてきたかがわかる。そして社会のリーダーを育成するために何百年もの間、大きな効果を発揮し続けたことを物語っている。
“9つのタイプとその本質”というエニアグラムの概念は、少なくてもスーフィー派の社会で十分に検証され、矛盾を生じずに受け入れられてきたのだ。
長い間、イスラム世界に秘匿されていたエニアグラムを西欧社会にもたらしたのは、コーカサス地方出身で高いカリスマ性を発揮した神秘家ゲオルギィ・イワノヴィッチ・グルジェフ(1877~1949)だった。
二十世紀初頭、インドからイスラム世界を行脚したグルジェフは、その旅の中で、スーフィーのエニアグラムを知り、ただちにこの概念のもつ意味を理解した。彼は、非常な努力をもってエニアグラムを修めた。そしてこの宝をもって帰国しようとしたが、故郷はおりしもロシア革命の混乱に見舞われていたために、フランスに移った。
グルジェフが、パリを中心に、この神秘の人間学を紹介すると、多くの西欧知識人がこれに関心を示した。ただしグルジェフやその弟子たちは、エニアグラムの神秘のベールをあえて取り去ろうとはしなかった。彼は、エニアグラムをあくまでも秘儀として伝えたのだ。
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エニアグラムの目的
人間の本質は必ず9つに分類できる
「エニアグラム」という言葉は、ギリシャ語で「9」の意味をもつ「エネア」と「図」の意味 をもつ「グラム」の合成語で「九つの点をもった図」を意味する。その全容は、右図のような 円と、そこに付された九つの点、さらにその九点を結ぶ線で表わされる。この単純な図の中に人間の内面の地図のすべてが表わされている。にわかには信じがたいだろうが、本書を読み進めてもらえば、この円と点と線だけの図がいかに巧妙に構成されているかを納得してもらえるはずだ。
血液型分類や星座分類のような性格分類に興味を示す人は多い、「自分とはいったい何物か?」というのは、多くの人が抱く疑問であり、血液型や生れた時期だけで、自分を知ることができるという単純明解さに人は引きつけられるのだろう。
しかし、人間の性格は十人十色といわれる。似たような性格に見える人でも、細部を観察すれば、異なる部分が見えてくる。この多様な人間の性格を安易に分類し、決めつけることに反感を感じる人もまたたくさんいる。
エニアグラムでは、「人間には九種類の本質があり、すべての人間は、そのうちの一つを持って生れてくる」というのが公理だ。しかも男女がほぼ半分ずつの比率で生まれてくるのと同様に、世界中のどの地域でも、各タイプの本質を持った人間の数は、九等分の比率である規定している。
安易な分類を好まない人々にとっては、これもまた非科学的な決めつけに感じるだろう。
ただし、エニアグラムがめざしているのは、分類ではなく、あなたを憑き動かしているエネルギーをバランスのとれた状態にもっていくことにある。エニアグラムでは、すべての人間が、自分では自覚していないすばらしい能力をもっているとする。そしてまず本当の自分、つまり本質を探し出し、それを前提にあなたにまとわり付いているこだわりやためらい、恐怖、過信 などを自覚し、あなたの”本当の可能性”を伸ばすためのバランスを回復させるのだ。タイプ分けは、こうしたエニアグラムの恩恵を受けるためのスタートラインなのだ。
しかし、あなたは「何を根拠にそう断言できるのか?」と問うかもしれない。安易な分類を嫌う人々の多くは、他の性格分類と同様に抵抗を感じるはずだ。その問いに答えるためには、まずエニアグラムの歴史について語らねばならない。
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エニアグラムの概要
自分の内面と語り合う「自分探し」
人は誰でも「性格」に興味を抱くものだ。「彼は短気な人だ」「彼女は内気すぎる」「僕は楽天的だから」・・・など性格を表わす言葉で、自分や他人を評価し、ラベルを貼ることを多くの人が好む。
しかし、ひとつの形容詞で表わせるほど人の性格は単純ではない。真面目で温厚なはずの人が短気さを見せたり、いつもロマンチックに夢を語る人が、ふさぎ込んで愚痴っぽくなったり、忠誠心の裏から反抗心をちらつかせたり・・・。誰もが、表面だけを見たのではわからない複雑さをもっている。だからこそ人間はおもしろい。
では「あなたはどういう性格ですか?」と聞かれたら、何と答えるだろうか?明確に自分を表現する人もいるし、あやふやな人もいる。また、自己分析が説得力をもつ人もいるし、自己イメージと他者の受ける印象がまったく異なる人もいる。
だが、自分の性格をきちんと把握し、周囲の人も百パーセント同意できるという人には、なかなかお目にかかれない。しかも中には周囲の受けるイメージに合わせて、まるで俳優のようにひとつの役柄を演じる“器用な人”もいるから、自分も周囲も納得しながら、その自己イ メージが、本当の自分ではないケースも少なくない。だから自分の性格でさえ、人は、なかなか把握できないのだ。まさに「人間はミステリアス」と言えるだろう。
しかしこのミステリアスで、把握しがたい人間の性格を、本質から解き明かし、明確なあなたの人間性を描き出す方法がある。それが、エニアグラムである。
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囚われ
悩み、苦しみの根元は「囚われ」という思い込み
私たちが、日常接する人々には、それぞれ個性がある。正義感の強い人、行動力のある人、 好奇心の旺盛な人、社交的な人・・・。中には、行動力、洞察力、忍耐力など、あなたが“とて もまねができない"と敬服するすばらしい能力をもっている人もいる。こうした個性や人にま ねができないような能力も、本質から生み出されたものであることが多い。
しかし、人は誰でも魅力や能力と同時に短所や欠点ももっている。“なぜ、あんなに非難めい た口調でしゃべるんだろう?"“なぜこんな簡単な決断を下すことをためらうんだろう?"“な ぜあんなに周囲の顔色ばかりうかがっているんだろう?"職場で上司や同僚、部課の言動を見 れば、あなたは、いくつもの問題点を指摘することができるだろう。 しかもそうした問題点は、苦境に置かれたときほど、強調される傾向がある。ふだんは包容 力があり、温厚で面倒見のよい上司が、プロジェクトの先行きに不安感が出てくるにつれ、部 下のあら探しをはじめ、責任転嫁としか思えないような言動に終始するようになるといったケ -スはよく見聞きする。 心にゆとりのあるとき、私たちはさまざまな行動をとることができる。仕事が順調で職場の 人間関係が好ましい状態で、健康や私生活にも問題がないなら、他者を思いやることも、広い 視野からものを見ることも、新しい価値を受け入れることも容易なのだ。しかし、苦境に陥った 場合、その行動や心情は、非常に限定されたものになる。しかも、その行動や心情は、往々に して好ましくないものになりやすい。そして苦境に立たされたときの姿の方が、より本質を反 映しやすいのだ。 “各人が生まれもって与えられるすばらしさ"である本質から生じる、このように悪い傾向を 強める原動力をエニアグラムでは「囚われ」と呼ぶ。
例えば、仕事が失敗しそうになると部下 のあら探しをしたり、責任転嫁的な言動が見られる例は、タイプ3に多いが、その「囚われ」 は「成功こそ人生」という思い込みだ。
エニアグラムの最重要テーマのひとつが、この「囚われ」を知ることだ。「囚われ」は、各タ イプの本質から生まれるものなので、「囚われ」自体が各タイプごとに独特なものとなる。同 時に何に囚われているかを知ることは、本質を知るための道しるべでもある。 各タイプの「囚われ」は、各タイプの本質と同様に内面の深い部分に隠れていることが多く、 自分にも周囲にも見えにくい。 しかし、エニアグラムは、各タイプの「囚われ」を非常に明確に描写している。あなたが、 自分のタイプを正確に把握していれば、エニアグラムは、あなたの可能性を押え込んでいる 「囚われ」を的確に把握することができる。
壁につきあたったとき、自分をコントロールする
あなたの本質と、その「囚われ」を把握したところで、エニアグラムの知恵をいかに実生活やビジネスライフに生かすかについて語らなければならない。多くの性格分類が、分類自体に重きをおいているのに対し、エニアグラムは、きわめて実践性の高い生きた知恵を提示することができる。いわゆる自己改革、自己実現の方法論である。エニアグラムの「本質探し」は、自分を知ることで、自分のよさをもっと生かし、悪い傾向をうまくコントロールすることを目標にしている。性格分類は、そのスタートラインに過ぎないのだ。
企業人として、ある程度キャリアを積むと、職場での責任が大きくなる。下からのつき上げがあり、上からの厳しい要求にも応えねばならない。と同時に過程でも父親としての務め、夫としての務めを果たさなければならない。若さに任せて、必至に生きてきた時代から、中年時代に入る三十代後半以降のビジネスマンには、さまざまな重責が課されている。 この時期は、一日で言えば、ちょうど正午に当たる。体力の衰えも感じるようになり、自分の人生の見通しがだいたいつき、限界も見えてくる。若いときに夢見たことが、その通りにはいかないことも感じ始める。そして四十代に入ると、何らかの形で危機に見舞われるケースが増えてくる。これを一般に「中年の危機」と呼ぶ。
これは、誰にとっても好ましくない状況に映るが、一方で人生の大切なものに目覚めるための試練と考えることもできる。今まで目に見える価値観の下で生きてきた人々が、人生の本質に目を向け、人生の後半を支える価値観を構築することには大きな意義がある。
ある程度、人生経験を積み、人生がバラ色でないことを知り、さまざまな壁を意識し始める人々。エニアグラムの知恵がもっとも生きるのは、まさにそうした人々なのだ。自分の価値観をもう一度見直す必要があるとき、エニアグラムは、貴重な指針を与えてくれる。エニアグラムに従って「自分探しの旅」に出て、自分をしっかり探し出したときに、自分の内面と外界のバランスをとる方法を知ることができ、自分を大切にできる最適な生き方を見つけることができるのだ。
注意点
人間は、自分の嫌なところを見たくない。しかしそれを直視しないで、奥へ押し込めることで、欠点は自己嫌悪や劣等感を生み出す。エニアグラムは、あなたの本当の姿を示し、悪い部分をも苦痛なく受け入れる道筋を示している。自分の嫌なところ、ダメなところを取り除くことが人間の成長ではない。そうした行為は、自分に都合のよいものをよしとし、都合の悪いものを悪いとする身勝手な価値判断からのものであることが多い。あなたが欠点とか、嫌いな点と信じていることも、これまであなたを衝き動かし、守るためのエネルギーを与えてくれたはずだ。ただ、それがゆきすぎてしまうと、自分の能力を抑え込み、人間関係も悪化させてしまう。
よいとか悪いではなく、あなたがもつすべてのエネルギーをバランスよく働かせる知恵をもつことが重要なのだ。
人間は誰でも不完全だ。どの人もすばらしさと同時に、それをゆがめるエネルギー源をもっている。だから、そういうエネルギーの働きをバランスのよいものにする。それがエニアグラムの知恵なのだ。
まずあなたが背負っている重荷を直視して、受け容れることから始めよう。そしてあなたが、自分を受け容れ、解放されて、自由になれば、周囲の人々も心地好さと快適さを味わうことになる。すべてはあなたから始まるのだ。
人は、誰でも組織や社会の中で生きてゆく。そして組織や社会が大きく変化する現在、多くの人々が戸惑いや苦痛を感じている。しかし変化の時代は、むしろあなたの生き方を変えるチャンスでもあるのだ。今までのように組織に合わせていく生き方ではなく、自分を生かすことで、みんなが生き生き働いていける魅力的な組織や社会をつくっていこうではなか。時代もあなたにそれを求めているのだ。
ただし、もしこのエニアグラムの知恵が、あなたを縛り、周囲の人々を縛るようなら、気をつけなければならない。自分を型にはめたり、相手を決めつけたりすることは、エニアグラムの誤用にすぎない。エニアグラムに限らず、人類の深い叡知というものは、人を生かすために積み重ねられてきたものだ。だからこそ何千年もの間、叡知は、生命を保ち続けてきたのだ。エニアグラムは、人を生かす知恵であることを肝に銘じていただきたい。
セルフテストの結果は以下の通りです。
数値の一番大きいものから三番目くらいまでがあなたの属する性格タイプと考え、ワークショップに参加することにより自分のタイプに出会っていくようおすすめします。
TYPE 1 10 ##########
TYPE 2 7 #######
TYPE 3 3 ###
TYPE 4 5 #####
TYPE 5 11 ###########
TYPE 6 8 ########
TYPE 7 0
TYPE 8 0
TYPE 9 0
タイプ5ー知識を得て観察する人
知識を蓄えることを好み、賢明であろうと心がけている。分析力や洞察力に長け、客観的な 傍観者に徹することを好み、現実の観察力に長けているが、口数が少なく、遠慮しがちだ。愚 かさを恐れ、仕事を始める前、あるいは意見を述べる前に、こつこつと情報を収集し、状況を すべてを把握しようとする。また孤独感を好む傾向が強く、自分ひとりの時間をとても大切にして いる。「知恵がある」「賢い」「何でも知っている」ということでもっとも満足感を得る。
タイプ5の「囚われ」
知的で冷静な観察者
孤独を好み、感情から距離をおく
頭ですべてを理解することで自立を表現する
人や物でなく知識に執着
自己改革へのアドバイス
突発的な出来事に慣れ、心の動揺に強くなる
諦めずチャレンジする精神を培う
人の集まる所で自分を披露してみる
タイプ1ー完全でありたい人
何事においても完璧を期し、自らの理想を建設的な姿勢で追い求め、努力を惜しまない。常 に公正と正義を心がけており、正直で信頼できる人柄で自分の論理観には自信をもっている。 ”きちんとした”イメージがあり、常に自制的であることを心がけ、「すべき」という言葉をよ く口にする。「正しいことをしている」「正しいとわかっている」ということでもっとも満足感 を得る。
タイプ1の「囚われ」正義の人、勤勉の人
怒りの回避と完璧さへの「囚われ」
秘めた怒りによる弊害
他者への不寛容さ
自己改革へのアドバイス
自分も相手もほめてみる
素直に怒りや憤りを表す
楽しんだり、楽をする生き方にも価値がある
タイプ6ー安全を求め慎重に行動する人
"安全”への欲求から行動するタイプ6は、二面性をもっている。ひとつの面は、強い保護者 を求め。その保護者に対して、きわめて忠実で責任感を発揮する。その一方で、納得のいかな い権力に反抗し、弱者の主張をよく聞き入れ、旗色の悪い闘いにも果敢にチャレンジする面も もっているのだ。相手のちょっとした言動から、その真意を汲み取る能力をもっており、信頼 関係さえあれば、情け深さや心の温かさを示す。「忠実である」「誠実である」ということに満 足感を感じる一方で「率直さ」「社会規範に順応しない」「危険に勇敢に立ち向かう」というこ とにも満足感を感じる。
タイプ6の「囚われ」
権力への不信感から生まれる二面性
他者の心情を読む鋭い洞察力と公正さへのこだわり
自らの内面より他者に意識が向かう傾向と先送りの傾向
旺盛な想像力で社会をネガティブな側面から見ようとする
自己改革へのアドバイス
自分の内面の不安や恐れを細かく検証する
判断力のある友人に不安を打ち明け、意見を聞く
プラス思考で他者と共感する
http://www.enneagram.gr.jp/enneagram/index.html