「原因つくったパパも罪を償う」 奈良放火、長男と面会

2006年08月03日 00時00分48秒 | Weblog
 奈良県田原本町の医師(47)宅が全焼し、母子3人が死亡した事件で、現住建造物等放火と殺人などの非行事実で家裁送致された長男(16)の第2回審判が2日、奈良家裁で開かれた。石田裕一裁判長は付添人の弁護士から申請のあった精神鑑定の採用を決めた。また、弁護士は医師の父親が事件後に長男と初めて面会した時の様子を記したメモを提出した。その中で父親は「暴力をふるったパパを許してくれ」と謝罪し、「原因をつくったパパも罪を償う」と、更生を願う気持ちを打ち明けている。

 弁護士によると、審判には父親が出廷。「医者にしたいとの自分の思いを押しつけて勉強漬けにし、思い通りにならないと乱暴を加えた」と打ち明け、髪をつかんで引きずり倒したり、殴ったりする暴力を10年間断続的に続けていたと述べた。父親は先月13日に奈良少年鑑別所で面会した。

      ◇

 父親と長男の面会の様子を記したメモの内容は次の通り。

 7月13日、事件後、初めてA(長男の名前)に面会してきました。そのときの様子を報告します。

 まず、会ってすぐ、Aは、直立して、「ごめんなさい」と謝ってくれました。話の途中からは、泣きじゃくって謝ってくれました。

 Aはやはり表現、言葉も顔の表情もうまく出せないようです。

 事件を起こしたときも、捕まった後も、人生をほかして(捨てて)いる様な感じです。

 捕まった後、何をしてももう一緒、もし外に出てもパパにしかられるし、自分は外ではもう生きられないと、自分から望みを絶ったのかもしれません。

 でも、しっかり反省していました。面会の後、鑑別所の職員が、「まだ一日見ただけですが、お父さんの前で、急に子どもらしい感情表現をしましたね」と言っていました。

 Aは父である私の愛情に非常に飢えている様子です。また、友達の友情にも心を動かされるようでした。私はできるだけ頻回にAに会って、少しでも心を開かせたいと思います。

 大まかな話の内容です。参考までに。

 私「パパが悪かった。おまえに度々暴力をふるって悪かった。家にいてもずっとパパに監視されていて、家にいるのがつらかったやろ」

 A(だまってうなずく)

 私「暴力ふるったパパを許してくれ」

 A(うなずき、少し涙)

 私「今、何か困っているものあるか? 何でも言いや。服のサイズはあれで合っているか?」

 A「サイズは合っているし、今は、何も欲しいものはない」

 私「ママらも死んでしまった。自分が何をしたかわかるやろ」

 A「ごめんなさい」(泣きながら謝る)

 私「3人とももう帰ってこない。罪を償わなければならない。原因をつくったパパも、罪を償う」

 A「ごめんなさい」(泣きじゃくりながら謝る)

 私「Aが牢屋(ろうや)に入っていることだけでは償いにはならないと、パパは思う。それは法律上の償いでしかない。3人への本当の償いは、A自身がちゃんと更生し、人生をもう一度やり直すことが本当の償いだと、パパは思う。Aも自分でどうしたら3人に謝れるのか、罪を償えるのか考えて欲しい。Aが出てきても、もうパパは勉強しろと言わない。パパは、死ぬまで、Aと一緒になって、罪を背負って生きていくつもりやし、できうる限り、Aをサポートする。けど、A自身が、自分で考え自分で道を決めていかなければならない。ゆっくり考えなさい。自分で考える道を歩むためには、まず、今現在どうすればよいかを考えなさい。まず、今は一層反省して謝罪をすること。それが償いのはじまりや」

 A(泣きじゃくりながら聞いていた)

 私「Aは友達多かったということを、今回の事件後よく分かった。みんなAのこと思って、嘆願書を書いたり、手紙くれたりしたよ。B君本人と、B君のお母さんがパパに直接メールくれたよ。B君『Aは何があっても一生の親友です』お母さん『Aが京都から帰ってくるとき、BとC君がAを迎えに行くと言って警察まで行き、Aが帰ってきても、少しでもAのそばにいたいと言って、雨の中夜遅くまで警察の前で立っていた』そうや。パパより遥(はる)かに友達多い。みんな待ってるで。Aが更生して出てくることを。親友の為にも頑張らないとあかん」

 A(一層、強く泣き出す)

 私「もし、Aが20歳以上なら、3人死亡しているので、間違いなく死刑。しかし、Aは16歳だから、少年法で裁かれる。少年法は将来のある子どもを少しでも更生させようとする法律や。パパは、Aがもう一度やり直せる可能性があると信じてる。おまえはまだ若いから、まだまだやり直せる」

 A(泣きじゃくりながら聞いている)

 私「Aは俺(おれ)そっくりなんや。おれの悪い癖そっくり受け継いでいるんや。だからパパにはおまえが何を考えているかよくわかる。でもな、他の人には全くわからへんで。今は涙もろくなったけれど、パパは、心の内を表情に出さないのや。学生のとき、先生に怒られたら、必ず言われた。何笑っているんや、叱(しか)られているのに何をにたにたしているんや、とさらに先生にしかられた。自分では何も笑っていないし、先生を馬鹿にしているわけではない。反省しているのに、そんな表情しか出せなかった。Aも同じや。おまえ、パパに似て口下手やろ。おべんちゃらなんて絶対言えない。でもな、警察でも調書取られたやろ。口に出して言わないと、調書に書いてもらわれないんやで。わかるやろ。心の中でどんなに反省してても、口に出して言わないと他の人はわかってくれないよ」

 私「3人に対し、今はどう思ってるんや」

 A(泣きながら)「ごめんなさい。ほんとにひどいことしてしまったと思ってる。僕の代わりに、毎日花供えたって」

 私「わかった」

 私「X(亡くなった母の実家の地名)のおじいさん、おばあさん、わかっていると思うけどAとは血がつながっていない。でも、こんな事件を起こしても、おまえのこと孫やと言うてくれているで。夏、山登りに連れて行って欲しかったんやろ。毎年、アユ釣りや山菜採りに行きたかったが、パパが許さなかったんや。もっとXに遊びに行きたかったんやろ。パパが悪い、おまえの楽しみをすべて取り上げていたんや。ごめん」

 私(職員に)「手紙のやりとりはできますか」

 職員「できます」

 A「パパにちゃんと手紙書きます」

 私「パパも出すよ。XとY(父方の実家の地名)の両方のじいちゃん、ばあちゃんに手紙書いたり。安心するよ」

 私「また会いに来ていいか」

 A「会いに来て欲しい」

(Aは鼻水垂らしてずっと泣いていました)

http://www.asahi.com/national/update/0802/OSK200608020089.html

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