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肘井 学 : 英語講師
2021/08/11 14:00
英語を身につけるためには避けて通れない英文法の学習ですが、英文法の存在する理由やそれが成立した背景を知ると、より理解が進みます。リクルートが主催するネット講義サービス「スタディサプリ」で教鞭をとり、新著『話すための英文法ハック100』を上梓した人気講師の肘井学氏が、今回は「可算名詞・不可算名詞」について解説します。
前回:英語学ぶ人が悩む「助動詞」微妙な使い分けのコツ
前々回:知ると深い!英語が「過去形で丁寧表現」を表す訳
名詞を数えられる名詞と数えられない名詞に分類したとき、前者を可算名詞と言い、後者を不可算名詞と言います。
英語学習を始めたころに、私が不可算名詞のことをいまいち理解できなかったのは、不可算名詞を「数えられない名詞」と否定的に定義しているだけで、実像が全然つかめなかったせいでした。不可算名詞が「数えられない名詞」というのはわかったものの、じゃあどんな名詞なのだと思ったものです。今回は名詞に関する英文法のハックをご紹介します。
上の疑問に答えると、不可算名詞とは、ずばり量でとらえる名詞になります。これがわかると、すべてがつながってきます。
例えば、可算名詞の「多い・少ない」はmany、fewで表して、不可算名詞の「多い・少ない」はmuch、littleで表すと言われます。これはなぜかというと、manyやfewは「数の多い・少ない」を表すので、可算名詞に使います。
一方で、muchやlittleは「量の多い・少ない」を表すので、不可算名詞に使うのです。品詞は副詞になりますが、Thank you very much.と感謝を量で表す表現を考えればわかるでしょう。それでは、不可算名詞の正体がつかめたことで、具体的な1つ1つの不可算名詞を見ていきましょう。
○ハック① money がなぜ数えられない名詞になるか
不可算名詞の代表例に、money「お金」がありますが、そもそもmoney「お金」が数えられないと言われても、日本人の感覚であれば納得できないでしょう。なぜならば、5円玉や10円玉は1枚、2枚と数え、千円札や一万円札も1枚、2枚と数えるからです
実はこの5円玉や10円玉、あるいは千円札や一万円札は、厳密には英語のmoneyではありません。5円玉や10円玉は「硬貨」なので英語ではcoinです。千円札や一万円札は「紙幣」なので英語ではbillです。
では、moneyの正体とはいったい何か?
moneyはcoin「硬貨」やbill「紙幣」をすべてひっくるめた「お金全部」という意味になります。よって、1つ、2つと数えるのではなく、どれくらいあるかと量で考える不可算名詞になります。
続いて、furniture「家具」も数えられない名詞だと言われてもピンときません。机は1つ、2つ、椅子も1つ、2つと数えることができます。実は、机はdesk、椅子はchairで、furnitureとは異なるのです。furnitureの正体はdeskやchairをすべてひっくるめた「家具全部」という意味なのです。よって、moneyと同様に量でとらえる不可算名詞になります。
英語には全部ひとまとめで考える名詞があり、それは1つ2つと数えずに、全部でどれくらいあるかと量でとらえる不可算名詞になります。上記であげた以外の全部ひとまとめで考える不可算名詞を整理します。
全部ひとまとめで考える不可算名詞
● baggage(bag + suitcase) 「荷物全部」
● equipment(light + bathroom)「設備全部」
● machinery(drill + screwdriver)「機械全部」
baggageはアメリカ英語で、イギリス英語はluggageです。これも厳密には「荷物」ではなく、bagやsuitcaseなどをひとまとめにした「荷物全部」を指します。equipmentは「設備全部」、office equipment「事務設備」は、light「電気」、bathroom「トイレ」などをすべてひっくるめたものです。machinery「機械全部」も、drill「ドリル」やscrewdriver「ドライバー(工具)」をひとまとめで考えたものです。
ここまでをまとめると、money = coin「硬貨」+ bill「お札」と「お金全部」の意味なので、全部でどれくらいあるかと量でとらえる不可算名詞になるということでした。次のハックに進みます。
○ハック② water がなぜ数えられない名詞になるか?
moneyに引き続き、waterも不可算名詞です。私自身も当初はwaterが不可算名詞だと言われても、よく理解できませんでした。水が1本、2本と数えられるじゃないかと。しかし当時の私がイメージしていたものは、水の入ったペットボトルです。このような場合はa bottle of waterといって確かにペットボトル自体は数えることができます。
次の例文をご覧ください。
例文1
May I have some water, please?
お水をいただけますか。
レストランなどで水を頼む際に使える丁寧な表現です。Water, please.で十分伝わりますが、礼儀を示したいときは、例文の表現を使ってみてください。では、なぜwaterが不可算名詞なのかの核心に入っていきます。
実は、英語のwaterとはあくまで水という液体そのものを指します。私たちは「水」をイメージすると、ついついペットボトルに入った水や、コップに入った水をイメージするので、1本、2本や、1杯、2杯と数えます。しかし、ネイティブには、それらの表現はa bottle of waterであり、a glass of waterになります。
英語のwaterは水という液体そのものを指すので、1つ、2つと数えることなく、どれくらいあるかと量でとらえて、不可算名詞になります。このように液体や食材などを指すいわゆる物質名詞も不可算名詞なので、すでにあげたwaterを除いて整理します。
物質名詞にあたる不可算名詞
● 液体系 ⇒ milk「牛乳」/ tea「お茶」/ coffee「コーヒー」
● 食材系 ⇒ bread「パン」/ cake「ケーキ」/ butter「バター」
● 素材系 ⇒ paper「紙」/ chalk「チョーク
waterに代表される液体が物質名詞の代表例で、不可算名詞になります。ほかにも、milk「牛乳」、tea「お茶」、coffee「コーヒー」なども不可算名詞です。次に、bread「パン」、cake「ケーキ」、butter「バター」などの食材を意味する名詞も物質名詞で、不可算名詞になります。paper「紙」やchalk「チョーク」もその素材に着目した物質名詞なので、不可算名詞です。
○1杯のコーヒーはa cup of coffee
次の英文をご覧ください。
例文2
Would you like to go for coffee?
コーヒー飲みに行きませんか?
知り合いを、コーヒーを飲みに誘うときに使う丁寧な表現です。なお、「1杯のコーヒー」はa cup of coffee、「パン1切れ」はa piece of bread、「ケーキ(のひとかけら)」はa piece of cake、「紙1枚」はa sheet of paperとa 名詞 ofを付けると数えることが可能になります。
次の英文をご覧ください。
例文3
It's a piece of cake.
朝飯前だよ。
日本語でとても簡単なことを、「朝飯前」と言います。朝ご飯を食べる前のわずかな時間でできる簡単なことという意味です。英語でも同様に、食べ物を使ってとても簡単なことをIt's a piece of cake.と言います。
その昔、“cakewalk”という、いかに変な格好で歩けるかを競う競技がありました。その競技で勝った賞としてケーキが贈られていました。その競技で勝利するのが簡単だったため、It's a piece of cake.でとても簡単なことを意味するようになったというのが1つの説です。
英語で仕事を頼まれたときに、It's a piece of cake.と返してあげたら、きっと相手が笑みを浮かべてくれるに違いありません。ここまでをまとめると、waterに代表される物質名詞は量でとらえて、1つ、2つとは数えないからという内容でした。最後のハックに進みます。
○ハック③ informationはなぜ数えられない名詞か?
information「情報」も不可算名詞と言われますが、なぜ不可算名詞なのでしょうか。
information「情報」と言われても、その形をイメージできる人はいないでしょう。目に見えない以上、1つ、2つと数えることはできません。このように、目に見えないものは英語の世界では数えないのです。
目に見えない名詞を抽象名詞といいます。workはぼんやりとした「仕事」を指すので不可算名詞で、それから派生したhomework「宿題」も不可算名詞です。
一方で、assignment「宿題」はアメリカ英語で、実際に課された1つひとつの課題を指すので可算名詞になります。
fun「楽しみ」も目に見えないので、不可算名詞です。news、adviceと情報系の単語も不可算名詞になります。
抽象名詞にあたる不可算名詞
● work「仕事」/ homework「宿題」/ fun「楽しみ」
● news「ニュース」/ advice「助言」
最後の内容もまとめると、information「情報」は目に見えないから数えないということでした。
今回紹介してきたハックのように、英文法の背景を知り、これらを使いこなせれば、あなたの英語力は数段アップするでしょう。
肘井 学 : 英語講師
2021/08/11 14:00
英語を身につけるためには避けて通れない英文法の学習ですが、英文法の存在する理由やそれが成立した背景を知ると、より理解が進みます。リクルートが主催するネット講義サービス「スタディサプリ」で教鞭をとり、新著『話すための英文法ハック100』を上梓した人気講師の肘井学氏が、今回は「可算名詞・不可算名詞」について解説します。
前回:英語学ぶ人が悩む「助動詞」微妙な使い分けのコツ
前々回:知ると深い!英語が「過去形で丁寧表現」を表す訳
名詞を数えられる名詞と数えられない名詞に分類したとき、前者を可算名詞と言い、後者を不可算名詞と言います。
英語学習を始めたころに、私が不可算名詞のことをいまいち理解できなかったのは、不可算名詞を「数えられない名詞」と否定的に定義しているだけで、実像が全然つかめなかったせいでした。不可算名詞が「数えられない名詞」というのはわかったものの、じゃあどんな名詞なのだと思ったものです。今回は名詞に関する英文法のハックをご紹介します。
上の疑問に答えると、不可算名詞とは、ずばり量でとらえる名詞になります。これがわかると、すべてがつながってきます。
例えば、可算名詞の「多い・少ない」はmany、fewで表して、不可算名詞の「多い・少ない」はmuch、littleで表すと言われます。これはなぜかというと、manyやfewは「数の多い・少ない」を表すので、可算名詞に使います。
一方で、muchやlittleは「量の多い・少ない」を表すので、不可算名詞に使うのです。品詞は副詞になりますが、Thank you very much.と感謝を量で表す表現を考えればわかるでしょう。それでは、不可算名詞の正体がつかめたことで、具体的な1つ1つの不可算名詞を見ていきましょう。
○ハック① money がなぜ数えられない名詞になるか
不可算名詞の代表例に、money「お金」がありますが、そもそもmoney「お金」が数えられないと言われても、日本人の感覚であれば納得できないでしょう。なぜならば、5円玉や10円玉は1枚、2枚と数え、千円札や一万円札も1枚、2枚と数えるからです
実はこの5円玉や10円玉、あるいは千円札や一万円札は、厳密には英語のmoneyではありません。5円玉や10円玉は「硬貨」なので英語ではcoinです。千円札や一万円札は「紙幣」なので英語ではbillです。
では、moneyの正体とはいったい何か?
moneyはcoin「硬貨」やbill「紙幣」をすべてひっくるめた「お金全部」という意味になります。よって、1つ、2つと数えるのではなく、どれくらいあるかと量で考える不可算名詞になります。
続いて、furniture「家具」も数えられない名詞だと言われてもピンときません。机は1つ、2つ、椅子も1つ、2つと数えることができます。実は、机はdesk、椅子はchairで、furnitureとは異なるのです。furnitureの正体はdeskやchairをすべてひっくるめた「家具全部」という意味なのです。よって、moneyと同様に量でとらえる不可算名詞になります。
英語には全部ひとまとめで考える名詞があり、それは1つ2つと数えずに、全部でどれくらいあるかと量でとらえる不可算名詞になります。上記であげた以外の全部ひとまとめで考える不可算名詞を整理します。
全部ひとまとめで考える不可算名詞
● baggage(bag + suitcase) 「荷物全部」
● equipment(light + bathroom)「設備全部」
● machinery(drill + screwdriver)「機械全部」
baggageはアメリカ英語で、イギリス英語はluggageです。これも厳密には「荷物」ではなく、bagやsuitcaseなどをひとまとめにした「荷物全部」を指します。equipmentは「設備全部」、office equipment「事務設備」は、light「電気」、bathroom「トイレ」などをすべてひっくるめたものです。machinery「機械全部」も、drill「ドリル」やscrewdriver「ドライバー(工具)」をひとまとめで考えたものです。
ここまでをまとめると、money = coin「硬貨」+ bill「お札」と「お金全部」の意味なので、全部でどれくらいあるかと量でとらえる不可算名詞になるということでした。次のハックに進みます。
○ハック② water がなぜ数えられない名詞になるか?
moneyに引き続き、waterも不可算名詞です。私自身も当初はwaterが不可算名詞だと言われても、よく理解できませんでした。水が1本、2本と数えられるじゃないかと。しかし当時の私がイメージしていたものは、水の入ったペットボトルです。このような場合はa bottle of waterといって確かにペットボトル自体は数えることができます。
次の例文をご覧ください。
例文1
May I have some water, please?
お水をいただけますか。
レストランなどで水を頼む際に使える丁寧な表現です。Water, please.で十分伝わりますが、礼儀を示したいときは、例文の表現を使ってみてください。では、なぜwaterが不可算名詞なのかの核心に入っていきます。
実は、英語のwaterとはあくまで水という液体そのものを指します。私たちは「水」をイメージすると、ついついペットボトルに入った水や、コップに入った水をイメージするので、1本、2本や、1杯、2杯と数えます。しかし、ネイティブには、それらの表現はa bottle of waterであり、a glass of waterになります。
英語のwaterは水という液体そのものを指すので、1つ、2つと数えることなく、どれくらいあるかと量でとらえて、不可算名詞になります。このように液体や食材などを指すいわゆる物質名詞も不可算名詞なので、すでにあげたwaterを除いて整理します。
物質名詞にあたる不可算名詞
● 液体系 ⇒ milk「牛乳」/ tea「お茶」/ coffee「コーヒー」
● 食材系 ⇒ bread「パン」/ cake「ケーキ」/ butter「バター」
● 素材系 ⇒ paper「紙」/ chalk「チョーク
waterに代表される液体が物質名詞の代表例で、不可算名詞になります。ほかにも、milk「牛乳」、tea「お茶」、coffee「コーヒー」なども不可算名詞です。次に、bread「パン」、cake「ケーキ」、butter「バター」などの食材を意味する名詞も物質名詞で、不可算名詞になります。paper「紙」やchalk「チョーク」もその素材に着目した物質名詞なので、不可算名詞です。
○1杯のコーヒーはa cup of coffee
次の英文をご覧ください。
例文2
Would you like to go for coffee?
コーヒー飲みに行きませんか?
知り合いを、コーヒーを飲みに誘うときに使う丁寧な表現です。なお、「1杯のコーヒー」はa cup of coffee、「パン1切れ」はa piece of bread、「ケーキ(のひとかけら)」はa piece of cake、「紙1枚」はa sheet of paperとa 名詞 ofを付けると数えることが可能になります。
次の英文をご覧ください。
例文3
It's a piece of cake.
朝飯前だよ。
日本語でとても簡単なことを、「朝飯前」と言います。朝ご飯を食べる前のわずかな時間でできる簡単なことという意味です。英語でも同様に、食べ物を使ってとても簡単なことをIt's a piece of cake.と言います。
その昔、“cakewalk”という、いかに変な格好で歩けるかを競う競技がありました。その競技で勝った賞としてケーキが贈られていました。その競技で勝利するのが簡単だったため、It's a piece of cake.でとても簡単なことを意味するようになったというのが1つの説です。
英語で仕事を頼まれたときに、It's a piece of cake.と返してあげたら、きっと相手が笑みを浮かべてくれるに違いありません。ここまでをまとめると、waterに代表される物質名詞は量でとらえて、1つ、2つとは数えないからという内容でした。最後のハックに進みます。
○ハック③ informationはなぜ数えられない名詞か?
information「情報」も不可算名詞と言われますが、なぜ不可算名詞なのでしょうか。
information「情報」と言われても、その形をイメージできる人はいないでしょう。目に見えない以上、1つ、2つと数えることはできません。このように、目に見えないものは英語の世界では数えないのです。
目に見えない名詞を抽象名詞といいます。workはぼんやりとした「仕事」を指すので不可算名詞で、それから派生したhomework「宿題」も不可算名詞です。
一方で、assignment「宿題」はアメリカ英語で、実際に課された1つひとつの課題を指すので可算名詞になります。
fun「楽しみ」も目に見えないので、不可算名詞です。news、adviceと情報系の単語も不可算名詞になります。
抽象名詞にあたる不可算名詞
● work「仕事」/ homework「宿題」/ fun「楽しみ」
● news「ニュース」/ advice「助言」
最後の内容もまとめると、information「情報」は目に見えないから数えないということでした。
今回紹介してきたハックのように、英文法の背景を知り、これらを使いこなせれば、あなたの英語力は数段アップするでしょう。
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