拉致:元工作員、蓮池さんに「私も命令に従っている」

2006年02月24日 07時42分15秒 | Weblog
拉致:元工作員、蓮池さんに「私も命令に従っている」

 蓮池薫さん(48)夫妻拉致事件で逮捕状が出た北朝鮮の元工作員、通称「チェ・スンチョル」容疑者(年齢不詳)が、「私も命令に従っている。(拉致は)仕方がなかった」と蓮池さんに話していたことが分かった。チェ容疑者は朝鮮労働党の工作機関「対外情報調査部」に所属していたとみられ、警察当局は同部が拉致を主導、チェ容疑者に指示を出していた人物がいるとみている。

 蓮池さん夫妻は78年7月31日に新潟県柏崎市の海岸で拉致された。蓮池さんの話から、拉致された際「たばこの火を貸してくれ」と殴りかかってきた男が、チェ容疑者だった疑いが出ている。拉致後、監視役として夫妻のそばにいたが、いったん姿を消した。

 チェ容疑者は北海道出身の小住健蔵さんに成りすまして取得した旅券で、83年にマレーシアへ渡航したまま所在不明となった。警視庁は85年、スパイ事件「西新井事件」を摘発し、当時「朴」と名乗っていたチェ容疑者の逮捕状を取り行方を追っていた。

 チェ容疑者は再び蓮池さん夫妻のもとに戻り、子供たちが04年5月に帰国するまでいたことも判明。警察当局は、チェ容疑者が警視庁の摘発で工作員としての活動ができなくなり、監視役をするなどして暮らさざるを得なくなったとみている。

 対外情報調査部は、拉致や破壊工作、海外からの韓国侵入が主な任務で、地村保志さん(50)夫妻拉致で逮捕状が出た辛光洙(シングァンス)容疑者(76)も所属していたとされる。警察当局は同部が複数の日本人拉致事件を主導していた可能性があるとみて実態解明を急いでいる。

 ◇「これを機に進展を」家族会会見

 2人に逮捕状が出たことを受けて、拉致被害者の家族会メンバーが23日、東京都内で記者会見した。代表の横田滋さん(73)が「これをきっかけに(拉致問題が)進展することを期待する」と述べるなど警察の動きを評価した。

 副代表の飯塚繁雄さん(67)は「こういう要求を強め、北朝鮮が『本当に日本は怒っている。被害者を早く帰した方が得策だ』と考えるよう、彼らを追いつめていきたい」。また、横田早紀江さん(70)は「本当に長い年月だったが、一つ一つの積み重ねでここまできた。苦しみ続けてきた被害者や家族の人生が、どこかできちんとされるまで、頑張りたい」と語った。【西脇真一】

 ◇「国家的意思を証明」警察庁長官

 警察庁の漆間巌長官は23日、定例会見で「(辛容疑者ら)2人に指示する人間がいたと分かってきた。(拉致が)国家的意思だと推定することが証明できたのではないか」と述べた。また、「拉致は特定のグループがそれぞれ日本人化教育などのために行っていたとみられていたが、何らかの形でつながっているのではないか」との見方を示した。

毎日新聞 2006年2月24日 3時00分 (最終更新時間 2月24日 3時09分)http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20060224k0000m040176000c.html