「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

飛びついて獏齧りゆく夏の月 鈴木要一

2021-07-27 03:40:03 | 日記
獏は中国の想像上の動物だが「飛びついて」も「齧りゆく」もリアルで楽しい。5月26日の皆既月食から連想されたのだろうか。月が地球に最も近づいた状態で起きるため、月が大きく見える「スーパームーン」。夢のような瞬間の写生句かと思った。
「兜虫月齧らむと発ちにけり 菅原鬨也」
を思い出した句でもあった。この兜虫らしさが詠まれた句に「獏」をあてると、人の悪夢を食うといい、また、その皮を敷いて寝れば疫病を避けるという存在に、コロナ禍という悪夢から解放してくれるのは獏しかいないと思ったりしたが、獏の皮は手に入らない・・・。変な鑑賞になってしまったが、心置きなく「夏の月」の夜涼を感じながら人々が集える日が早く来ますように。(博子)