哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

『倚りかからず』(ちくま文庫)

2013-04-10 01:54:45 | 
茨木のり子さんの詩の評判がいいことを知って、表題の詩集をだいぶ以前に買ったのだが、当初読んだ時は、あまり印象が良くなかった。金子みすずさんや谷川俊太郎氏のわかりやすい詩に比較して、言いたいことがすぐに捉えられず、何故か感性が合わないような感じがしたのだ。

ところが、しばらくして改めて読んで見ると、ほとんどの詩がストンと肚に落ちた。文庫の帯に「しなやかに、凛として」とあるが、まさにその形容がぴったり当てはまるような詩ばかりだ。谷川俊太郎氏の詩が子どもの感性なら、茨木のり子さんは大人の感性と言えるだろう。

題名の「倚りかからず」は、「もはや できあいの思想には倚りかかりたくない」と始まり、まさに人間精神の凛とした崇高な独立宣言のようにさえ思える。しかも、それは長い人生において見ざるを得なかった、世間の思想や権威の裏切りを見てきた末のような思いにみえる。最近、城山三郎氏の文章も読んだりしているのだが、茨木のり子さんの考え方とシンクロしている気がするのである。

なかには、国歌について「私は立たない 坐ってます」と書いている部分もある。改憲派の政治家やナショナリズムを鼓舞する向きからは反発を受けるだろうが、著者の姿勢は至って静かに凛としているようだ。

「時代おくれ」という詩では、「そんなに情報集めてどうするの そんなに急いで何をするの 頭はからっぽのまま」とあって、まるで池田晶子さんと同じような言葉にうれしくもあった。