こんな時は、やはり感謝心のデザートのサービスである。何と無く、その一人はオイラの娘に似ている。今流行りの柳原かなこ似なのである。写真雑誌を捲りながら書き込んでいるが、その二人は恋愛の話し中である。でも、悟られぬ様にコック帽を立ててカバーして書き込んでいる。光と影である。たまに、雑誌を捲りながら実は見ていないのだが、やはり悟られぬ様にである。隣のテーブルだから距離だって2㍍しか離れていない。だから話もよーく聞こえてしまう。只、恋愛話にはもう興味が無いから世代の違いの人間模様を目にしているだけだ。
台風だなっ!今宵の暇差加減は。で、古本屋で仕入れた写真雑誌を捲りながら大通りを見れば、段々と激しくなる雨だ。通り向こうには二軒の居酒屋が在り、裸電球の一軒に誘われた仕事帰りの中年が悩み、ビニール傘を畳んだ。入店だっ!引き戸が閉まった店内の感謝心のが想像出来る、何しろこの大雨である。と、書きつつ当店にも若い女性の二人連れが網に掛る。網に掛るとは、クモの巣の様であるが決めて入店している。メニューが決まっていたのだ、「秘密のへんなスパゲティ」である。マァ、この大雨によく来店してくれたもんである。感謝っ!
昨夜、暇ながら五・六年振りのお客さん。光と影である。文房具屋を営む方で老舗である。相手は経理士さんであり、盗み聞きするとやはり経営難だ。以前、文房具屋とか酒屋とか米屋などは大変羽振りが良かった。近年では、どれも安売り店の為にやられている。そういう当家も30年前迄は、時計店だった。未々、時計や眼鏡、貴金属が貴重で贅沢品だったから当家もナカナカの羽振りで在ったが時代の流れでやはり安売りの為、飲食店に商売換えした訳だ。先日出掛けた「三崎」の街も蔵が沢山在り過去の盛隆を思わせるが、今街は閑散の光と影だ。
しかも今月から「トリエンナーレ」という三年に一度の港地区を挙げての芸術祭でそれはそれで楽しみなのだが、やはり当たらない処は影である。更に、来年は「開港150周年」だから益々に光と影だ。昨日、発表された基準地価も光と影で、思えば全てが光と影だ。で、そのコントラストが強く成っている傾向にある。オイラが、その様に見るのは写真も光と影の世界だからであり始終、人間露出計でここの、今の光と影を計測してフィルムに写しているからだろう。しかもオイラは、影を見るから、つまり「侘・寂」に興味の対象が在るから光の部分が邪魔なのだ。