
梅の花は一輪づつ観賞するもの、それに対して桜は集合体の花を楽しむもの、と所感を述べた人がいる。山の新緑のなかの点景として桜をみるならこれもうなずけるが、アップで撮った写真を見ると、梅は蕊が前面に出すぎ、桜の柔らかい花弁が勝っているような気もする。桜は万葉時代から日本の花として歌人の心を捉えてきた。
梅の花咲きて散りなば桜花継て咲くべくなりにてあらずや (巻5・829)
坂巻川の桜は、陽のさすなかで、その柔らかな花弁が存在を強調している。だが、まだ集合体としての並木の花を賞味するまでにには至っていない。