常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

月山

2016年04月23日 | 登山


家の付近から望む月山と、頂上に立って見る景色の落差に驚かされる。素晴らしい晴天のうちに出発したが、山中ではガスがかかり、強い風が吹いた。登山道から時おり、頂上の様子を見せるがあっという間にかき消される。右手奥には湯殿山が見え、写真では見えないがその右手には品倉山から、羽黒山の出羽三山の山々が、朝日連峰に対峙している。この風景に接して、この山塊で修業を積んだ修験道のことをふと思い浮かべた。この荒涼とした山道を、走り登り、駈け下りながら肉体限界までいじめ、そこに宗教の開眼を得る。そのためには、この大自然の大きさが必要条件であったのではあるまいか。

朝、7時に山形を出発、午前9時には姥沢のスキーリフトに着く。姥沢では、例年に比べて雪は少ないものの、雪解けの始まった月山の景色が目に美しい。本日の参加者6名。初て参加するYさんの姿があった。



駐車場でゆっくり時間をとって装備を整える。ここではまだ微風で温かささえ感じられるが、リフトや山頂では、風や気温が低下することを予測して冬装備をしっかりと確認。目を西南に転じれば朝日連峰へと続く山並みが指呼の間である。



上雲はうづまく尾根に下雲は展けし谷のうへをとびをり 結城哀草果

斎藤茂吉しかり、その門人であった哀草果もまた月山に連なる出羽三山に畏敬の念を払っていた。この見はるかす景色に触れる時、この大自然のもとに育った詩人の心情がすんなりと受け入れられる。

先行して10数名のグループが頂上を目指している。大雪原にごまを散らしたように見える人影は春スキーを楽しむスキーヤーやボーダー達だ。駐車場に止めてある車を見ると、ほとんどが県外からやってきているスキーヤー達だ。尾根に出るころ、雲が厚くなり、風が吹き始めた。やはり山の天気は、里でいる時の予想を超えて厳しい。それだけに、普段見ることのできない気象の激変に遭遇する。火事小屋跡に至る急坂で、先行していたグループが下山してきた。みなアイゼンをを履き、急坂を駆け下りて来る。元気のいい女性が大きく手を振り、頂上がよかった声をかけてきた。聞けば地元鶴岡の人たちであった。



頂上前の尾根では強風とはいえまだ温かい風であったが、頂上の広場に出て吹き荒れる風は、皮膚を切るような冷たい風になった。それでも山小屋の陰で風を避け弁当を食べる。Tさんの持参した厚焼き卵がおいしい。初めて登るYさんは、やはり長い雪道で疲労困憊の様子だった。



春スキーは、冬のスキーに比べてハードだ。ゲレンデの上に導くロープトウが1基あるだけで、登りもスキーを履くか、急坂ではスキーを担いで、高みへと登って行かなければならないからだ。しかし、ゆったりと気温の高い解放感は、冬スキーにない魅力を感じさせる。関東周辺から車を走らせて、この奥深い山に来ることが絶えないのは、その魅力によるだろう。スノボーに向くゲレンデ作りにも工夫の跡が見られる。
コメント
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