徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:谷知子編、『百人一首』(角川ソフィア文庫)&あんの秀子著『ちはやと覚える百人一首(早覚え版)』

2016年02月14日 | 書評―古典

この頃古典づいてますが、今日のテーマは小倉百人一首です。解説本は山ほど出ていますが、他の角川ソフィア文庫のビギナーズ・クラシックスシリーズから出ている本(枕草子や更級日記など)でいい印象を持っていたので、同シリーズから出ている谷知子編「百人一首」を選びました。

基本的に1首につき見開き2ページで解説されています。まず定番の現代語訳、それから作者について、歌の詠まれた背景についてや関連する歌などが紹介されています。必要に応じて語釈や文法的説明もあります。
またコラムには歌の技法や歌を作る場、現代に繋がる文化など興味深い話題が掲載されており、勉強になります。

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実は私はまんがの「ちはやふる」のファンでもありまして、その関係であんの秀子著「ちはやと覚える百人一首(早覚え版)」も買ってしまいました。こちらの構成は1首につき1ページで、現代語訳の他、「教えて!かなちゃん!!」という「ちはやふる」のキャラで古典の得意なかなちゃんが解説をするコーナー、「ちはやふる」から歌に合う一コマ、それに「xxくん(ちゃん)意訳してみて」というコーナーがあります。また目立たないくらい小さいのですが、和歌が全部ひらがな書きしてあり、競技かるたのための「決まり字」がマークされているので、この決まり字と下の句を結びつけて覚えれば、競技かるたもできるようになるかもしれません。

この2冊を並行して読みました。1首ごとにまずは「ちはやと。。。」の方を読み、それからビギナーズ・クラシックスの方を読んで、もう少し詳しい背景情報を補足しました。

「ちはやと。。。」の魅力は「xxくん(ちゃん)意訳してみて」だと思いました。高校生というか若い人ならではの現代語意訳で、思わずふっと吹き出してしまうようなものもあります。例えばう大将道綱母作「嘆きつつひとり寝る夜の明くる間はいかに久しきものとかは知る」の意訳が「私と付き合ってるのに色んな子にヘラヘラして!今更メールくれたって絶対返信しないから!」とか、清少納言の「夜をこめて鳥のそら音ははかるともよに逢坂の関はゆるさじ」の意訳は「せっかく楽しく話してたと思ったのに突然帰っちゃって!誰からのメール?!もう一度誘われたってお断りだから!」など。原文が台無し、といえばそうなのかもしれませんが、昔の人も現代人もメンタルはそれほど変わっているわけでもありませんから、こうして現代っ子風に意訳することで若い人たちが古典に親しみを感じてくれるなら、いいのではないでしょうか。

「百人一首」は平安時代末期から鎌倉時代にかけて活躍した歌人・藤原定家が選んだ和歌集と言われています。依頼人は鎌倉幕府御家人で歌人でもある宇都宮頼綱で、百首の素晴らしい歌を書いた色紙を山荘の襖に飾りたいので、その百首を選ぶように定家に頼んだそうです。定家は「古今和歌集」を始めとする勅撰集から百首の歌を彼の別荘小倉山荘にちなんで「小倉百人一首」として後世に伝えられるようになったとか。1235年5月27日に小倉百人一首が完成されたとされることから5月27日は「百人一首の日」になっているらしい(全く知りませんでした)。

引用された歌集:

  • 古今和歌集(905年)―醍醐天皇
  • 後撰和歌集(950年ごろ)―村上天皇
  • 拾遺和歌集(1005年ごろ)―花山院
  • 後拾遺和歌集(1086年)―白河天皇
  • 金葉和歌集(1127年ごろ)―白河院
  • 詞花和歌集(1151年)―崇徳院
  • 千載和歌集(1187年)―後白河院
  • 新古今和歌集(1205年)―後鳥羽院
  • 新勅撰和歌集(1235年)―後堀河天皇
  • 続後撰和歌集(1251年)―後嵯峨院