梟の独り言

色々考える、しかし直ぐ忘れてしまう、書き留めておくには重過ぎる、徒然に思い付きを書いて置こうとはじめる

Nさんの話

2020-11-27 10:24:17 | 雑記
Nさんは「事件屋」である、と言ってもフリーライターなんかではない
倒産したり開発に行き詰まった土地なんかで競売にかけられたり抵当が複雑に絡んだような物件を得意とする不動産関係の仕事をしている
事故物件を扱うので「事故屋」と言うのが正確だが私たちは「事件屋」と言う、
Nさんがこの仕事に関わっているのはNさんの父親がこの仕事をしていたのをそのまま継いだという話である、
父親の方はいわゆる「筋」の通った屋号を構えていたらしいがNさんはその筋ではない、
堅気の不動産屋であるが資格を持っているかどうかは解らない、
親からの資産(?)を継いでいるので顔が広い、いわゆる”筋の人“から大手のゼネコン、金融関係、官庁から政治家まで実に色んな付き合いがあるらしい、
私が知り合ったのは太陽光発電の土地を探している時で公共事業に使う山砂利を採った跡地を紹介してもらう関係からだだった、
私より何歳か上で人の好い田舎の不動産屋と言う様な小柄な人で何となくウマが合い、「はい、Nです、」と野太い声で電話が掛かって来る、
Nさんには障害のある娘さんが居るらしい事は一緒に現地を廻る車の中で聞いた事があった、
Nさんは何か持病があるらしく少し足を引きずっていてしんどそうな感じで「娘が心配でね」などと言っていたのだが先日Nさんから紹介してもらったCさんと言う人から「Nさんの娘さんは実の子じゃないんだよね」と言う話を聞いた、
「一緒に飲んだ時に自分から話しだしたんだが」と前置きをして話してくれた、
Nさんが結婚したのはいつ頃か知らないが何年か一緒に暮らした後、子を成さないまま奥さんが家出をしたと言う、
そして何年かしたら障害のある幼い娘を連れてふらりと帰って来たそうだがNさんはそのまま誰の子か解らないその子と生活を続けてきたと言う
その奥さんは数年前に他界し今では娘さんと二人で生活をしているらしい、
「凄いね」と思わず言ってしまったがCさんも「本当にすごいよね、俺が出来るかと言われたら絶対に無理だ」と言うが私でも恐らく出来ないだろうと思う、
そしてその奥方の気持ちも想像すると針の筵に寝起きしていたんじゃないのかとも思う、
身からた錆だとしても自分一人ではない、恐らく親族にも見放されていたのではないだろうか、Nさんの為にと言うのは失礼かもしれないが彼女の中に“針の筵”信じたい、
この話を聞いた後は未だ会っていないが少しだけNさんの好感度が増した気がする