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福田の雑記帖

www.mfukuda.com 徒然日記の抜粋です。

秋田から東京を考える(1)  小池知事の都民ファーストという姿勢には疑問

2016年11月25日 08時56分45秒 | 時事問題 社会問題
 小池氏(64)が女性初の都知事に就任したのは熱暑が続く8月であった。高い指導力を期待されて就任した小池知事、その後の働きは東京五輪、豊洲問題を含めて連日マスコミを賑わしている。その働きは目覚しいものがある。私は、少なくとも悪しき印象は持っていないが、知事が問題を掘り起こす毎に問題が深みを増し、「どこで落し前をつける」のか心配になるほどである。

 就任会見では、自身が本部長となる「都政改革本部」を新設すると発表した。私は詳細は理解できていないが、都政には知事の力も及び難い伏魔殿があるという。これに対抗するために外部委員も入れて都が関わる業務や予算などを点検し、情報公開を進めて都民を味方につける、ということだろうと思う。改革の対象は、都政の事業や組織の廃止、経営形態も含めて対応を検討すると言うものであったが、その際、「都政を都民ファーストに改善していく」と話した。

 この「都民ファースト」と言う言葉に私は嫌な感じを持った。
 「都民ファースト」とは何を意味するのか?多分、都政を都民のために取り戻す、という意味で用いたのだろうだろう、と思う。それならば理解できる。

 何しろ前任者たちは国政をも意識した独自政策を打ち上げて注目を集めたが、都知事といえど地方自治体の首長である。知事の職務の範囲は地方自治法で決められている。法では「住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する」と定める。

 にもかかわらず、歴代都知事は通常の地方自治体の業務に収まらない問題にも口を出してきた。
 象徴的なのは、石原元知事が12年4月に沖縄県・尖閣諸島の購入計画である。何で東京都がこんな重大なことに口を出すのか、聞いた時に大変なことになると思ったものだ。
 舛添前知事が取り組んだのも「国家間の外交を補完する都市外交」だった。これらはいずれも都の業務ではない。
 今から振り返るとただ目立つスタンドプレーだった。

 何で「都民ファースト」に対して私が嫌な感覚を持ったのか??
 それは東京都は単独では自立できない最大の欠陥自治体だからである。もちろん地方の自治体も東京の恩恵を受けているから持ちつ持たれつの関係にある。例えば、ライフラインひとつとっても、食料も水も電気も都で賄っているものは一つもない。さらに人材、ほとんど地方から集まっている。

 一方、都道府県別名目総生産額は91兆円で国内総生産額の20%も占める。ちなみに秋田は3.4兆円。
 要するに、都は旺盛な経済活動で生きているが、地方がコケたら息の根が止まる。逆に、地方は東京がコケたらやっていけなくなる。いま東京都は一見華やかだが、見方によっては瀕死の状態にある、とも言える。

 だから私は「都民ファースト」に対し違和感を覚えるのだ。



介護保険2016(3) 岩手県の介護施設の現況を通して考える

2016年11月24日 05時04分28秒 | 医療、医学
 岩手県の介護施設の現況を岩手日報の記事を参照して考えてみる。

 岩手県の調査によると2015年度に岩手県内で廃止・休止した介護事業所は86力所だった。多くが経営難や介護人材の不足を理由に挙げている。県は昨年4月の介護報酬引き下げも影響したとみている。
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15年度に廃止・休止した岩手県内の介護簒秦所の内訳
▽ 居宅介護受領事業所25ヵ所
▽ 通所介護19力所
▽ 訪問介護19ヵ所など。
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 全国老人福祉施設協礪会が介護報酬改定前後を比較調査したところ、特別養護老人ホームー施設あたり月額54万円の減収となっていた。岩手県内の事業所も一様に経営が厳しくなったという。これでは人件費の改善は困難である。

 岩手県の事業所の数自体は介護需要に応じて増えており、県が指定する介護事業所は4月現在8200箇所、で前年同月に比し200箇所増えている。各施設ごとの介護人材の不足は続いていて十分機能しているとは言えない。
 へー、こんなに沢山の事業所があるのか!!! と驚く。勉強不足であった。

 岩手県内介護福祉士養成校の今春の卒業者数は計151人、一方、入学者数は計98人にとどまる。要するに介護福祉士の人気自体が落ちている。その背景は、業務内容が厳しい、にもかかわらず給与が少なく、自身の生活も成り立たない・・などなどである。

 岩手県は、介護職に再就職する際の準備金として最大40万円を貸し付け、県内で2年間働けば返済を免除する、と言う。国の取り組みに呼応して介護士の確保に力を入れている。
 これがお隣の県の実情である。秋田県の現状はどうなっているのだろうか?
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 介護保険制度について
 この制度は、介護が必要な高齢者を社会全体で支えるため、2000年に始まった。40歳以上が保険料を支払い、原則65歳以上の要介護認定を受けた人が費用の一部負担でサービスを利用できる。
 15年3月末時点で要介護認定者は606万人。総費用は16年度予算ベースで10兆4千億円と、2000年の約2.9倍に膨らんだ。高齢化を背景に対象者が増加しているためである。65歳以上の保険料も当初の金額から倍近くに上昇し、現在は全国平均で月5500円。

 厚労省はいま介護費用の抑制を考えている。
@ 2018年から一部の人を対象に利用時の自己負担を現在の2割から3割に増やす。介護保険の利用者負担は原則1割であったが、昨年8月から年280万円以上の所得がある人は2割になった。さらに年収370万円以上の人を3割にしたい考え。
@ 高額介護サービス費では、一定の収入がある人を対象に、負担限度額を現行の月37.200円から44.400円に引き上げる。
@ 40〜64歳が支払う保険料の計算方法を見直し、収入に応じた「総報酬割」という仕組みにする。大企業の社員は負担が増えるが、中小企業は負担が減る。
@ 車いすなど福祉用具のレンタル価格は、全国平均に一定額を上乗せする。
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 うーん、一層厳しくなる。


介護保険2016(2) ヘルパーの働きを見直し待遇改善を 

2016年11月23日 17時55分59秒 | 医療、医学
 介護の費用は、2025年には今の2倍以上になると試算されている。
 大変な事態になる。有効な介護費用抑制策を導入しなければやっていけなくなる。

 私は、細かな計算はできないが、なんでもネガティブ思考で経費を抑制する、という今の考え方では展望は生まれて来ないような気がする。
 国は介護保険利用者の自己負担増を検討している。
 しかし、施設介護から在宅介護に今一層シフトさせるというならば、そのシステムをドラスティックに作り上げなければ小手先の方策のレベルにとどまる。
 いい方法はないだろうか。私はヘルパー増と待遇改善がその鍵を握ると思う。

 古き良き(??)時代は施設介護または家族の犠牲による在宅介護が中心であった。2000年に開始された介護保険制度は介護の社会性をうたった画期的制度であった。
 今は73%が介護を受けながら在宅で暮らしている。その際、立派な理念を持つ介護保険が十分に利用されているのかというと決して十分ではない。
 ほぼ全介助状態で最も手のかかる要介護度5でも限度額の64%しか使われていない。軽度の要支援1の方々は限度額の40%の利用にとどまっている。
 要介護度5でも利用率が低い理由は、利用者の自己負担費用、患者の家族環境、個人の考え方もあろうが、ヘルパー不足で在宅介護が十分機能していないことにもあると思っている。
 
 要介護3の比較であるが、介護施設の経費は約15万円、在宅の場合はその半分程度である。だから、一人でも多く在宅で暮らすことにすれば、高齢者の医療費や介護費用は大幅に減らせる。その際、鍵を握るのはヘルパーの活動であり、ヘルパーを支えれば介護保険の給付は結果的に抑制できるはずである。

 在宅介護がヘルパー不足で十分機能していない。ヘルパーの方々は低い人件費で働いている。給与は10数万円だという。この程度ではヘルパー自身が生きていけない。志を持って就業しても意欲が減ってくるのは当然でもある。 

 ヘルパーの就業の増加は地場産業として、地域の経済活性化にもつながる。 
 在宅介護は我が国の社会保障費の軽減のためにも、患者にとっても住み慣れた自宅で過ごせるというメリットがあり、ヘルパーの待遇改善が伴えば、ヘルパーにもプラス、地域のためにもなる。 

 高齢になると医療や介護問題はこの長命社会の中誰もが問題となる。本人たちにとっても、子供たちに決して人ごとではない。好きで病気になるわけでない。セフティネットにマイナスの手をつけることはどうなのか、と思う。

介護保険2016(1) 膨れ上がる介護保険費用

2016年11月22日 05時26分52秒 | 医療、医学
 私の担当している外来は高齢の患者が多い。自活できずにショートステイやグループホームに入っている方も少なくない。その場合、家族が付き添ってくる場合もあるが、多くはヘルパーに付き添われてくる。ヘルパーは20代から60代のさまざまな年代である。その際、患者はろくに話も通じないからヘルパーから患者の情報を聴取する。時にヘルパーにいろいろ話をうかかう。

 慢性的な人手不足に対する不満の声も聞かれる。普通に介助しているのに、入所者に嫌味を言われ気分を害され、叩かれたり、引っかかれたりすることもある。深夜勤務で生活のリズムを崩す人もいる。特に苦労するのはお風呂の介助。若いヘルパーでさえ、フラフラになることもある、という。

 なぜ、こんなに厳しい仕事を続けられるのか?と聞くと、「やりかいがある」、「人の役に立ちたい」、「・・・」と続く。うーん、感心する。しかし、リストラにあったから、生活上の問題、他の就業場所が得られなかったから・・と言うのもある。

 ヘルパーの置かれている状態はとても厳しい。社会的地位が低い、給与が安すぎる、仕事は過酷・・・と状況が並ぶ。ヘルパーは重労働でしかも責任が重い。この大変さに見合う報酬が出せる仕組みをつくらないと、なり手はどんどん減っていくだろう。今、志を高くして頑張っているヘルパーも、職場環境がこれより後退すれば、継続が無理、と考えられる。

 このような話を聞くと、介護保険について考えなければならなくなる。
 介護保険は制度化されてから16年、介護施設の経営の困難さ、従業員の確保が厳しいという話題には事欠かないが、国レベルで介護保険の収支を考えると、介護保険料9兆6000億円あり、2000億円ほど黒字になっている。へー、黒字なんだ、と驚く。

 介護保険料は平成12年2900円 いま5000円程度と決して安くはない。半分税金、半部保険料で賄われている。
 一人当たりの介護経費は増えていない、と言う。なんで保険料が高くなったのかというと、高齢化で利用者が増えているからである。

 介護の費用は厚労省の資料によると現在9-10兆円であるが、将来これが21兆円にまで膨らむ、と予測して危機感を煽っている。
 これが本当なら大変な事態になる。有効な抑制策を導入しなければやっていけなくなる。
 国は介護保険利用者の自己負担増を検討しているが他の方法はないだろうか。

経済2016(6) 本:財務省と大新聞が隠す本当は世界一の日本経済 上念司著 講談社α文庫 2016年9月

2016年11月21日 03時48分09秒 | 書評


 日本経済は1000兆円に及ぶ債務を抱え、世界一の借金財政・・と一般的に言われており、経済健全化が必要である・・・。
 しかし、先日聞いた経済アナリストの森永卓郎氏の考え方は私が従来抱いてきた内容と一線を画するものであり、日本の経済は世界的に見て健全である、と述べた。私は無知を恥じ、ショックさえ覚えた。 
 ただ、私にはまだ氏の言われることを理解する能力はない。さらに勉強しなければならない、と感じた。森永氏の主張と類似した文献を探し、上記の書籍を得て急ぎ読んでみた。

 著者の上念 司氏は1969年生まれの経済評論家。著作に「日銀貴族が国を滅ぼす」、「全国民必読 経済ニュースのウソを見抜け!」、「アベノミクスを阻む7つの敵」、「地方は消滅しない!など多数。

 一部表現を変えたが、著者は「まえがき」で、「政府が約1000兆円の借金を抱えており、マスコミも国民の不安を駆り立てているが、同じ日本政府が700兆円近い資産(このうち、換金することのできる金融資産だけでも300兆円以上)を持っており、世界一の金持ち政府といっても過言ではない」としている。
 また、危機を煽る財務官僚は、ほとんどが法学部出身で、経済のプロではない。大新聞やテレビ局がこうした評価を無批判に報道しするのは経済担当の記者も、経済の専門的な教育を受けていない人ばかりで、財務省の発表を書くだけだからで「官」との「共謀者」だとしている。 

 筆者は、一問一答方式で全33問にわたって、世の中に流布している様々な「常識」などを、歯切れよく解説、論破している。
 例えば、経済大国の米国の政府資産ですら150兆円ほどしかなく、700兆円もある日本政府は世界で一番の金持ち政府であると言っていい。しかもその7割がたは金融資産であり、必要があればいつでもに換金できるものである、とのこと。
 借金の総額は問題ない。名目成長率が上昇すれば、政府債務の負担は減っていくので、財政健全化よりも経済成長をさせることこそが国の運営のためには必要である。

 私はいま経済も勉強中であるが、どれだけ政治やメディア、学者から偏向した情報を与えられ、それでイメージを形成してきたのか、それを痛感した一冊である。
 その面では、、NHKが経済アナリストの森永卓郎氏の意見をラジオで取り上げたのは画期的でないのか、と思った。

 私は日常からメディアを疑がってかるように心がけているが、国の借金に関してはいかに己が無知にされていたか、改めて痛感した。