本作は吉村昭著「魚影の群れ」に収録されている短編の一つ。
ねずみ騒動は実際に起こった事件である。Wikipediaを参照しながら抄述すると、騒動は1949年-63年頃まで続いた、宇和海の島嶼部及び海岸部で起こったネズミの大量発生に伴う農作物や海産物等への被害、人的被害が生じた。翌1950年には日振島に、1954年には三浦半島、1960年には南宇和郡、北宇和郡津島町まで騒動は拡大した。
島民にとってこの地は平地が乏しく生活用水も不足するなど厳しい生活環境であったが、ネズミにとっては天敵がおらず、温暖で環境が適し、いわしの煮干や甘藷、麦などの農作物、食料が
潤沢にあることで、他の地区から海を渡り、集団移転し定着したもの。7年後には120万匹に達したと思われた。
ネズミによる具体的被害は
——————————————————————————————
(1)甘藷、麦、トウモロコシ、大豆、小豆など。
(2)いわしの煮干などの水産加工物。
(3)家屋や家具の被害。
(4)幼児がかじられるなど人身被害。
(5)島民の安眠妨害など
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導入した駆除方法
(1)薬剤:黄燐製剤、デスモア、フラトールなど。
(2)器具:パチンコ式捕獲器、弓張式竹罠、鼠捕網
(3)天敵導入による駆除:青大将191匹、イタチ 156頭、猫4392匹導入
(4)ネズミの尾を一本5円で買い上げる等の捕鼠奨励制度
(5)栗のいがを鼠の穴に詰める、清掃など
しかしどの方策も、決定的な解決には結びつかなかった。
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終息
(1)1963年頃より、不漁によるいわしの煮干製造の廃業、
(2)若者の村外流出による段々畑の耕作放棄など
(3)畑作の減少などで餌が乏しくなり生息環境が劣化し、ネズミの生息数は徐々に減少していった。
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私はこのネズミ大発生事件をこの作品を読むまで不勉強にして知らなかった。
折しも、今世界は、日本もCOVID-19の蔓延の最中にある。COVID-19と同様に、降って湧いたようにネズミの大群が島を襲い、定着し、住民の生活を大混乱におとしめた。
島の住民達は郡や県、国に働きかけると共に、学者の意見を参考に上記のごとくの対策を行った。その多くは導入直後だけはそれなりに効果があったが、ネズミが慣れるのか効果は持続しなかった。
結局は10年以上もこの被害は持続したが、やがて島の住民達の高齢化、過疎化で住民の経済活動も衰退し、ネズミ達も餌が確保できなくなり、自然と消滅していった。ネズミが生存環境が悪くなった島を放棄した、と考えられた。
作家吉村昭氏はこのネズミ大量発生により被った島民の被害状況に注目し、島民の生活ぶりや被害状況を生々しくし描出している。氏はかなり抑制的にネズミと人間の関係を描写しているが、ネズミ嫌いの人は到底読めないだろうほどの迫力で描写している。
多くは引用できないが、
「海岸の岩石や砂浜が、一斉に動いている!!」
「上方の斜面は、静止しているのに磯だけがかなり長い距離にわたってゆらいでいる!!」
「黒々と動くのは岩や砂礫ではなく、おびただしい生き物の群れらしい!! 」
「それは、重なるようにひしめきながら磯づたいに西から東へと移動している!!」
「・・・・・・!!」
ネズミの出現を最初に気づいた漁民の驚きを描いた数行であるが、事の重大さと、その後に起こるだろうネズミとの闘いの困難さを見事に予告している。
吉村氏は入念な調査を重ね、この稀な騒動をわかりやすくまとめ提示した。
私は座して読ませていただいたが、驚きと感謝の念で一杯である。
ねずみ騒動は実際に起こった事件である。Wikipediaを参照しながら抄述すると、騒動は1949年-63年頃まで続いた、宇和海の島嶼部及び海岸部で起こったネズミの大量発生に伴う農作物や海産物等への被害、人的被害が生じた。翌1950年には日振島に、1954年には三浦半島、1960年には南宇和郡、北宇和郡津島町まで騒動は拡大した。
島民にとってこの地は平地が乏しく生活用水も不足するなど厳しい生活環境であったが、ネズミにとっては天敵がおらず、温暖で環境が適し、いわしの煮干や甘藷、麦などの農作物、食料が
潤沢にあることで、他の地区から海を渡り、集団移転し定着したもの。7年後には120万匹に達したと思われた。
ネズミによる具体的被害は
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(1)甘藷、麦、トウモロコシ、大豆、小豆など。
(2)いわしの煮干などの水産加工物。
(3)家屋や家具の被害。
(4)幼児がかじられるなど人身被害。
(5)島民の安眠妨害など
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導入した駆除方法
(1)薬剤:黄燐製剤、デスモア、フラトールなど。
(2)器具:パチンコ式捕獲器、弓張式竹罠、鼠捕網
(3)天敵導入による駆除:青大将191匹、イタチ 156頭、猫4392匹導入
(4)ネズミの尾を一本5円で買い上げる等の捕鼠奨励制度
(5)栗のいがを鼠の穴に詰める、清掃など
しかしどの方策も、決定的な解決には結びつかなかった。
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終息
(1)1963年頃より、不漁によるいわしの煮干製造の廃業、
(2)若者の村外流出による段々畑の耕作放棄など
(3)畑作の減少などで餌が乏しくなり生息環境が劣化し、ネズミの生息数は徐々に減少していった。
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私はこのネズミ大発生事件をこの作品を読むまで不勉強にして知らなかった。
折しも、今世界は、日本もCOVID-19の蔓延の最中にある。COVID-19と同様に、降って湧いたようにネズミの大群が島を襲い、定着し、住民の生活を大混乱におとしめた。
島の住民達は郡や県、国に働きかけると共に、学者の意見を参考に上記のごとくの対策を行った。その多くは導入直後だけはそれなりに効果があったが、ネズミが慣れるのか効果は持続しなかった。
結局は10年以上もこの被害は持続したが、やがて島の住民達の高齢化、過疎化で住民の経済活動も衰退し、ネズミ達も餌が確保できなくなり、自然と消滅していった。ネズミが生存環境が悪くなった島を放棄した、と考えられた。
作家吉村昭氏はこのネズミ大量発生により被った島民の被害状況に注目し、島民の生活ぶりや被害状況を生々しくし描出している。氏はかなり抑制的にネズミと人間の関係を描写しているが、ネズミ嫌いの人は到底読めないだろうほどの迫力で描写している。
多くは引用できないが、
「海岸の岩石や砂浜が、一斉に動いている!!」
「上方の斜面は、静止しているのに磯だけがかなり長い距離にわたってゆらいでいる!!」
「黒々と動くのは岩や砂礫ではなく、おびただしい生き物の群れらしい!! 」
「それは、重なるようにひしめきながら磯づたいに西から東へと移動している!!」
「・・・・・・!!」
ネズミの出現を最初に気づいた漁民の驚きを描いた数行であるが、事の重大さと、その後に起こるだろうネズミとの闘いの困難さを見事に予告している。
吉村氏は入念な調査を重ね、この稀な騒動をわかりやすくまとめ提示した。
私は座して読ませていただいたが、驚きと感謝の念で一杯である。
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