福田の雑記帖

www.mfukuda.com 徒然日記の抜粋です。

映画 「教誨師」(2018年) 監督:佐向 大、主演と企画:大杉 漣

2019年10月12日 09時04分27秒 | 映画評
 秋田弁護士会の「死刑制度を考える会」の主催の映写会。通常の映画館でなく市の文化会館小ホールで開催された。
 主催者の説明によると用意した300部のパンフレットがなくなったという。終了後に佐向監督を交えてトークショーがあり、それにも参加した。監督は多数の出席者に驚かれていた。

 教誨師は刑務所や少年院等の矯正施設に出向き、宗教的立場で対話し、更生するきつかけを与える人と考えていいだろう。現在、約2千人か活動されている。被収容者の宗教上の希望に応じ、宗教教誨活動—-礼拝・面接・講和等—-を行う民間の篤志の宗教家。

 主人公は教誨師になってまだ半年という設定。
 6人の死刑囚と向き合い、傾聴に徹する。死刑囚の発言に喜怒哀楽する教誨師の表情は、さすが「300の顔を持つ男」と言われた大杉氏の秀演が光る。
 大杉氏は400本以上も映画に出演している超ベテラン俳優というが、私は無知にして初めて聞くお名前で、今回の映画会で初めて見た。2018年2月21日(66歳)で死去している。

 秋田弁護士会の「死刑制度を考える会」の主催であるが、時間にして8割近くが面会室を舞台にしている。限られた空間や時間の中で進行していく。派手な場面はなく、映像は教誨室での会話のみ。死刑囚と教誨師それぞれの言葉と表情によって、彼らの人となりが次第にわかっていく。

 
 (会場で配布されたパンフレットから一部を引用させていただいた)

 死刑の意義など話題になされておらず、結論など出ない。死刑囚が独房で過ごす姿もない。
 死刑囚の中で、カレー事件の犯人を想起させる中年女性、相模原の障害者施設での殺傷事件犯を想起させる青年もいる。後者の対話内容も印象的、死刑囚を演じた俳優、そのうちの一人は監督の知己のサラリーマンらしいが、いずれも演技は、心理描写を含めて素晴らしかった。

 この映画は教誨師だけの話ではなく、面談を仕事する全ての人間に関連する映画だと感じた。
 従って私にとっても意義深かった。多くの職業的相談者は傾聴に徹するよりは自己の考えを押し付ける傾向にある。
 人の悩みや苦悩を傾聴すること、対話し語りかけるとは何か?親身になるとは何か?
 傾聴に長けていると自認している私にとっても、人の心を引き出すとは何だろうか?見習うべきヒントがあった。

 なかなかいい作品だと思う。詳細は記載できない。見るべき映画か?と問われれば疑問なくそう答えたい。
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