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福田の雑記帖

www.mfukuda.com 徒然日記の抜粋です。

書評:日本は世界5位の農業大国-大嘘だらけの食料自給率  浅川芳裕著 講談社+α新書 2011 838円 

2012年07月23日 05時12分02秒 | 書評
 


私は今まで食糧自給率について一般的に言われている数値を鵜呑みにして何とかしなければ、と考えていた。先日、秋田県の食糧自給率が174%であると言う素晴らしいデータを眺めているうちに、計算式の分母、分子となる数字現実と異なるのに気が付いた。自給率の計算では国民、県民一人あたりに供給されているカロリーが2.458kcalと異常に高いし、厚労省のデータでは国民の摂取カロリーは1904kcal/dayとなっている。これはどう言うことか?その疑問を解くために求めたのが本書である。

 読んでみて自分の無知に恥じ入った。今後は考え方を変えなければならない。
 ただ、筆者は国の食料農業政策に疑問、と言う視点に立脚しており、それも生半可でないことを感じ取ることが出来る。そのために読者に対して意図的誘導が目立つ。だから、直ちに筆者の意見をそのまま受け入れることは出来ない。しかし、考える切っ掛けになる。豊富な資料が掲載されているから読みながら自分で考えてみることが必要である。

 本書から学び取った点の一部を以下に示した。

■著者は農水省に対して何故かかなり深い怨念を持っているようだ。その視点で貫かれている。だから注意しながら読むべき。
■食糧自給率は実際より少なく計算されている。その背景は農水官僚の保身と権益保護。
■農水省の食糧自給率に関する主張は世論操作の数字で、日本の農業は実は強く確実な産業である。現実に農業人口が減少しているが生産量は低下していない。
■食料の安全保障の面から自給率向上が叫ばれているがは、実際は率を上げれば良いという問題ではなく、国家としてのリスクマネージメントの一項目としてとらえるべき。不作や自然災害、病気の蔓延や国際紛争など、多様なリスクを読み取り管理すべき。
■食料・飼料用穀物の生産をあまりにも外国に頼りすぎると、非常時には弱みになるし、外交カードとして使われるが、現実には二国間の問題ではないから国際協調の中で解決出来る。農業国等に先端技術の提供とかが重要。そのためには経済的バックは力になる。
■先進国、英国、ドイツ他が日本よりたくさんの食料を輸入している。しかし、わが国と異なり輸出量も多い。
■日本の農業は輸入農産物に負けない高付加価値の作物をつくるべき。国民の生活は幅広い価格の中から身の丈にあった食材を選ぶ様になる。
■カロリーベース自給率は日本独自の考え方であり、指標として使うことは疑問。資料の扱いも非合理的。廃棄される食料も計算されている一方、わが国の畜産関連の食品は外国産飼料を用いているから国産と見なされていない。従って率の計算上、分母はより大きく、分子はより小さくなる。従って食料自給率は実際より大幅に低い値となる。60%を超えるかも。生産額ベースの自給率は66%である。
■・・・・

 この本は読んでいて痛快であり、一気に読み上げた。私から見て、本当にそうだろうか?少し言いすぎでないか?この点は納得出来ない・・といった疑問点が各所にある。だから、読むものの知識力や自尊心をくすぐる。だから、やめられなかったのかな。

 問題もあるが、大事な食料に関する分かりやすい解説書である。多くの方々に読んで頂きたい本である。

日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率 (講談社プラスアルファ新書) [新書]

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