福田の雑記帖

www.mfukuda.com 徒然日記の抜粋です。

現代人に必要な「いやし」(7) 医療不安は聴診器やデータでは除けない

2018年05月08日 05時12分40秒 | 医療、医学
 私は定期的に通院して来る患者には通常胸部や腹部に聴診器を当てる事はない。
 ただ、血圧はかならず自分で測る。その時は水銀式の血圧計を用いるから聴診器を用いる。血圧は自動血圧計で測ったとか、看護師が計ったのかはどうでも良く、どんな状態で計ったのかを確認しなけれ評価出来ないから、自分で測定する。直前に測って来た、と言っても参考にしない。

 何らかの症状を訴える患者、様子がいつもと違う患者、新患患者にはじっくりと聴診器を当て病態を判断する。
 私の診療に不慣れな患者は、或いはたまたま私の外来へ回ってきた患者は診察室に入ると上着やシャツを上げて聴診するのを待つ。私以外の外来では聴診が当たり前なのであろう。その様な時は聴診をサービスする。「聴診器一つも当ててもらわなかった」、とかつては患者からもよく言われた。いまでも時に同僚から指摘を受ける。直接言われた事はないが、私の診療は評判が悪い様だ。
 
 定期的に通院して来る患者の場合は、待合室に顔をだし、患者の様子をざっと観察する。不調そうな患者、何かを訴えそうな表情をしている患者がいれば予約順にこだわらず繰り上げて診察する。
 多くは順番どうりに診察室に誘うが、待合室での様子、返事の様子、顔色や表情、椅子からの立ち上がり、歩いて来る様子など、それらがすべて患者の病状の評価の参考になる。それらがしっかりとしている場合、いつもと変わらない場合などは長身するまでも無い。

 診察室では、症状や不安などについて聴取しながらまず血圧を測る。聴診しない場合でも血圧を測定することで最小限のスキンシップは保たれる。

 あとは会話である。
 私から「最近の様子はどうですか??」と笑顔で、これが結構辛いのであるが、静かに水を向ける。これで大概会話がスムーズに始まる。聞き慣れた悩みや症状、不安の気持ちであっても黙って聞き続け、途切れるのを待つ。途中で若干の質問を挟んだり、相槌を打ちながら患者の言い分を整理しながら十分に聴く。

 私との会話を通じて、患者の悩みや不安が自分の中で整理され、自分で納得できるようになる。その後いつものようの処方をだし電子カルテを閉じるが、多くの患者は納得しきった様子で診察室を出る。
 中には短い診療時間に治らないような深刻な内容を訴える患者もいる。そのような場合は後日の予約を取ったり、待てない様な場合は当日の最後に回って貰い、再度じっくりと、ときには1時間も対応する。

 これが私の診療の様子、治療の様子である。私の治療の基本は黙って患者の言い分を聞き続ける、ことである。精神科医でないから、聴くだけ、である。
 この様な外来診療は、患者には癒しになっている様であるが、私にとってはストレスの元である。
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