銅版画制作の日々

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歩いても 歩いても・・・・・。

2008-08-15 | 映画:ミニシアター

 歩いても~♪歩いても~

このタイトルは、これだったのだそう、あのいしだあゆみが歌った「ブルーライト・ヨコハマ」。懐かしい~~

8月8日、京都シネマにて鑑賞。何が凄いって、樹木希林の演技だ漂々としていて、彼女の口から吐き出す言葉は結構怖いものがある。まあ演技なのだから、それをそのままストレートに受け止めることはないにしても。凄かったし、やっぱり役者としての存在感がと心に突き刺さった。無論彼女ひとりがそうではないけどね。彼女の娘役を演じたYOUも負けず劣らずである。まるで本当の親子のような自然体の会話だった。どこかの家庭にある家族の日常が目に浮かぶくらいで、「うんうん分かる!分かる!」と思わずうなずきたくなる。

是枝監督最新作「歩いても 歩いても」、ここまでシンプルな表現を、じわじわ感動させる作品はないと思う。きっと山あり谷ありというお話のほうが作りやすいだろう。

 

ということで、ちょいと簡単にあらすじを・・・・・。

夏の終わり、横山良多(阿部 寛)は15年前に亡くなった兄の命日のため、妻ゆかり(夏川結衣)と息子あつし(田中祥平)を連れて実家へ。良多は子連れのゆかりと再婚したばかりなので、渋々の帰郷車中で泊まらずに帰ろうなんて言い出す良多の複雑な心境もじわじわと伝わる。それにはわけあり開業医だった父恭平(原田芳雄)とのそりがあわないこともあるからだ。そしてそのうえ、失業中ということも重なってかなり気が重い唯一救われたのは、姉ちなみ(YOU)の一家も来ていたおかげ老いた両親の家には久しぶりに笑い声が響く一見和気藹々の一家かな?と思って観ていると、この家族の心のズレやわだかまりが次第に見えてくる。実は長男の死は病死ではなく、事故死だったということが話が進むにつれて解明される。

海で溺れた子どもを助けるために、溺れて死んだ長男。その助けられた子どもは今は大学生となり、毎年命日にお線香を上げに来る。汗をかきながら、就職活動しても、職が見つからないと屈託なく話すその男性、その姿を見ながら不満げな父親恭平、それに対して対照的な母としこ(樹木希林)、「来年も来て頂だいね。」と優しく声をかける。その男性が帰ると、家族間での様々なやりとりがまたなんともいえない。太ったその男性の食べっぷりに長女ちなみは「自分で持ってきた水羊羹を二つも食べるんだから!」と呆れた様子。良多は毎年やって来るこの男性の思いを察するかのように「もういいのでは?充分罪を償っているはず」と言う。そんな良多にとしこはどんなに償いっても、長男の死は浮かばれない。訪ねて来てもらわないと許せない。ちょっと記憶が定かではないが、そんな意味合いだった。子どもを失った母親の気持ちを鋭い言葉で語るところは、ドキッとする恨む親の心を垣間見るところだ。

 

 

食事作りをしながら、母娘は他愛もない話で盛り上がる。食事の準備をする母としこの手早さには目を見張る。きっと樹木希林自身も上手いに違いない

 

良多の家族は何となく家族に馴染めない感じ。居心地はちょいと悪そうだ?表面的にも何とか溶け込もうとするのが良く分かる。

 

長女一家は帰っていく。その後は良多一家と両親だけのひとときとなる。お風呂に入る際も、良多の寝巻きは準備されているが、息子あつしのものはない。ゆかりは疎外感を感じる。やはりただのお客さん扱い?と良多に気持ちをぶつける。この辺もありがちな話だなと思う。

突然家に舞い込んだ黄色いを見た母としこ「純平かもしれない?」と必死に追いかける姿、いまだに長男の死を受け止められないような気がする。かたや父恭平、向かいのおばあさんが倒れたことで、連絡あるがもう自分では対応できず、救急車を呼ぶことに。救急車で運ばれる際、救急隊員にアドバイスするも、聞き入れてもらえない。そんな老いた両親の姿を目の当りにした良多。

 

いまだに医者だった昔を忘れられず、診察室にこもる父恭平の姿も印象的だ。

 

そして家族は昨晩の出来事は何もなかったように、次の朝を迎える。

 

良多の家族と母としこ、長男純平が眠るお墓に・・・・・。ここでもとしこの言葉が何か怖い。ゆかりに向かって「もう子どもは産まないわよね」なんて。

 

いよいよ良多たちが帰るときがやって来た。バス停まで見送る両親、見送った後二人は長い石の階段を上がる後ろ姿がまた印象的。まさかこれが最後になるとは・・・・。

さてちょっとネタばれです。何年後か忘れましたが、両親は亡くなってしまいます。またこのお墓に良多の家族が墓参りに。家族は増えていました。まぎれもなく、良多とゆかりの間に生まれた女の子です。それぞれの姿は分かるけど、かなり遠くに映し出されていてはっきり顔は分かりません。あつしも大きくなりました。

 

ということで、家族の一日は大きな出来事もなく過ぎていくという、まさにどこかにありそうな家族と重なるそんなお話でした。久しぶりに聴いたゴンチチの演奏もいい感じです。

 

歩いても 歩いても 

 

是枝監督のインタビューはこちらからどうぞ

 

 

Comments (3)    この記事についてブログを書く
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3 Comments

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こんばんは! (ryoko)
2008-08-15 23:19:09
TBありがとうございま~す!
とりたてて何も特別なことは起こらないある夏の2日間。
でも、ごく普通の家庭に渦巻く夫々の思いが見ていて重かったです。
家族って難しいなぁ~と思いました。
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これは染みた~ (sakurai)
2008-09-27 12:57:57
うちの両親とかぶって、しようがなかったです。
おっしゃる通り、劇的な展開の映画撮るより、ずっと難しいような気がします。
役者の妙がうま~く出てましたし、昔のちょっと悪だった、でもいい奴になりましたという寺島さんもグーでした。
ああいうのも、いるいる!みたいで。
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こんにちは (himagine)
2009-09-18 14:51:51
>見送った後二人は長い石の階段を上がる後ろ姿がまた印象的

そうですよね~。
あの長い石段のシーンは、何度か出て来ましたけど、
色んなことを象徴しているようで良かったです。
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