銅版画制作の日々

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過去のない男(-_-;)アキ・カウリスマキ監督作品

2007-12-19 | 映画:ミニシアター

 

「街のあかり」を観てから、アキ・カウリスマキ監督作品に、はまりつつある私です。といってもこの作品で三作目の鑑賞ですが・・・・・。

11月2日、京都シネマにて鑑賞しました。10月27日~11月2日までの一週間限定上映ということで、これはぜひ観なくてはと、最終日に行ってきました。2002年カンヌ国際映画祭で、グランプリを受賞主演女優賞・パルム・ドッグ賞。そしてアカデミー賞外国映画賞ノミネート。この他様々な賞を受賞しています。

 

過去のすべてを失う・・・・。

 

彼(マルック・ベルトク)は夜汽車に乗ってやって来た。そして着いたのはヘルシンキの街。たどり着いた途端、公園で暴漢に襲われ、身ぐるみ剥がされたうえ瀕死の重傷財布は空に、身分証明書はゴミ箱にポイッなんて感じ・・・・・。血まみれ状態で、何とか駅までたどり着くが、意識を失っちゃう。(何て酷い話だ)お話は淡々と進んでいく。アキ・カウリスマキの独特のテンポだ。むちゃくちゃえげつない話なのに不思議とこのテンポが合っているだよね。

 

セリフは少ないです。でも映像だけでよく分かります。そして男は深夜の救急病院に運ばれます。全身包帯を巻かれているのです脈拍は弱り、やがて心電図は死亡をを伝える午前5時12分、名前も分からぬまま男は死亡宣告を受けるのです

ところが、医師がいなくなった病室で男の意識は突然戻る

 

どん底の人生から、再生と希望の道へ

どのようにして、たどり着いたのか?港のそばの岸辺に倒れていた男港のコンテナに住む一家に助けられた

 

 

何とかスープを口にするほどまでに回復する男。しかし過去の記憶がすべてなくなっていた

 

かっての仕事も、住んでいたところも、自分の名前すらも・・・・・・・。そんなことは関係なくコンテナの住人たちの生活は淡々と過ぎていく。慎ましやかな生活に、いつしか男も馴染んでいく。


 

金曜日。この場所で暮す人にとっては特別の日だった。救世軍の計らいで、スープがふるまわれるからである。コンテナの住人ニーミネン(ユハ二・ニエメラ)はお洒落をして男を連れ出す。牧歌的な曲の演奏の元、多くの人々にスープが施される。そこで男は、スープを取り分ける救世軍の女イルマ(カティ・オウティネン)と運命的な出会いをする

 

 

ニーミネンは男をカフェに誘う。金曜日は給料日でもあった。妻に内緒でを楽しむ事が出来るのだ。男はアルコールが飲めるか?もわからなかった。覚えているのは列車に乗ってこの街にたどり着いたことだけ・・・・・。

そんな男にニーミネンは「人生は後ろには進まない」と進言する。

 

一方、イルマの生活もいつものように進んでいく。深夜の帰宅後、いつものナイトウェアに着替え、ベッドに入るとお気に入りのロック音楽♪を聴くというものだ。

彼女に限らず、そこに住む人々の生活そのものだ。

 

ある日、このコンテナを管理する警備員アンティラ(サカリ・クオスマネン)がやって来る。彼は極秘で人々に法外な家賃でコンテナを貸して、私腹を肥やしていた。逆らうとその場所で暮せないため、皆渋々従っているわけだった。

そのアンティラは男に目をつけた崩れかかったコンテナを週払いの家賃で貸す。やがてそのは周りの人々の好意で居心地のいいにと変わっていく。

の前にはじゃがいも畑、拾われたジュークボックスからは素敵な♪がそして周りには多くの友人が!

 

家賃の支払日が迫っていた男は洗濯したを着て、職安へ・・・・。しかし申請書に社会保障番号も、誕生日も、そして何よりも自分の名前を書けない男は、職員から受付を拒否される。疲れ果てた男は一軒のカフェへたどり着く。ポケットには出がらしのティーバック。お湯だけもらい香りも失せたお茶を飲む。そんな男に店主は残り物であつらえた食事を提供する。人の暖かさに触れた男はその足で、救世軍の事務所へ・・・・・。着替えの準備をしてくれるとイルマから聞いていた。

 

 

イルマは男のために を用意、身の上を知った彼女は救世軍の仕事を斡旋する。給料前に、支払い期日がやって来てしまった。支払えない男に腹を立てたアンティラは出張中の見張りの代理にハンニバル(タハティ)というを置いていく。獰猛な犬だと説明する横でハンニバルはまるで自分ののようにすっかりくつろいでいた。

 

はじめてのくちづけ

 

イルマに密かな思いを寄せる男終業時間を見計らって彼女を待つ。まで送り届ける。はじめてのくちづけ別の日、に招待した男は手料理をふるまう。まるでずっと愛し合っていたのように抱き合うのだ

 

救世軍の聖歌隊への曲のアドバイスをした男の案によって、親睦会のコンサートは大盛況 とうとう彼が企画した救世軍主催のロックコンサートも日に日に行動的になっていく男がイルマには誇らしかった

 

ある銀行強盗の人生

 

 

ある日港で、溶接工の仕事を見かけた男は自然に道具を手にして、見事な仕事ぶりを見せる腕を見込んだ上司は彼を雇うと話す。振込み口座を開くように促す。しかし銀行に出向いた男はまたもや事件に巻き込まれる。銀行強盗に遭遇したのだ。リストラでひとりしかいない行員とともに金庫に閉じ込められることに・・・・・。強盗は自分の口座が凍結されたために、押し入ったのだ。預金していた金額だけ取って出て行く

 

名前も言えない男は警察に収監されてしまい、開放されずイルマに助けを求め、救世軍の弁護士によってやっと開放されることに。

帰り道、男の後を追ってきた人物がいた。それはあの銀行強盗の男だった。頼みがあるという。土木工事の会社の社長だった男は設備投資したものの、バブルがはじけ機械を銀行に買いたたかれた。口座凍結のため、従業員に給料が払えず、やむなく強盗することに・・・・・。追われる身となった男は元社員に支払うことは出来ないので、届けて欲しいと頼む男は快く引き受ける。

 

過去を取り戻し、過去を手放す

 

この事件で、彼の身元情報が次第に分かり始める。警察の元に、男の妻から情報提供が寄せられたのだ。そして彼の名前がやっと明かされる。

彼の名前はヤアッコ・アンテロ・ルヤネン。ヌルメス出身の板金工だという。駆けつけたイルマは男と抱き合う。しかし妻のある彼に、帰るように促すしかなかった彼に夜食を渡す、列車に乗り込む男は「俺を忘れるか」と聞かれる。「初恋の人だもの」と告白するのだった。

 

さてこの後の結末は??

 

過去を失ったことで、新しい人生が始まろうとしていた。過去に訣別するような感じでラストを迎える。

 

救世軍のマネージャーでバンドヴォーカリストのおばさんの歌声もです。

 

ハンニバル役の犬はタハティ、彼女の両親もアキ・カウリスマキ作品の作品に登場しているそうだ。作品にはよく犬が登場する。

 

登場する男女は確かに単純さがある。なるほど、そしてプラトニック的愛そしてメロドラマ的なカップルの延長と・・・・・。

そしてこの背後には、社会的なテーマも。フィンランドの失業率の実態、政治的不審をストレートにぶちまけている。強盗、暴漢、冷淡なお役所仕事、威張る警官など・・・・。社会の負の象徴が確かに現れている。でも少なくとも、希望がまったくないというわけではない。小さくても、密やかな幸せの希望が見えている。それが救いかもしれないと感じる。

 

過去のない男公式サイト 

 

 

 

 

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2 Comments

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日本インターネット映画大賞募集中 (日本インターネット映画大賞)
2007-12-22 04:38:21
突然で申しわけありません。現在2007年の映画ベストテンを選ぶ企画「日本インターネット映画大賞」を開催中です。投票にご参加いただくようよろしくお願いいたします。なお、日本インターネット映画大賞のURLはhttp://www.movieawards.jp/です。
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TB有難うございます (ぶーすか)
2008-01-01 14:43:06
はじめまして。レスが遅くなってすみません。
「街のあかり」は残念ながら未見ですが、アキ・カウリスマキ監督は大好きなのでなるべくチェックしたいと思ってます。この作品、音楽もめちゃくちゃラブリーで大好きです
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