わ! かった陶芸 (明窓窯)

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質問 22 700~750度で溶ける無鉛の透明釉に付いて。

2016-03-04 21:47:35 | 質問、問い合わせ、相談事
「西田まり様」より以下の質問をお受けしました。

 ◎ 低温釉につきまして

 700~750度で溶ける無鉛の透明釉薬を作りたいのですが、可能でしょうか?

 本焼き焼成した磁器に施釉したいと思っています。


 ◎ 明窓窯より

1) 低い温度で熔ける釉として、無鉛の「楽焼」の釉があります。

  一般には800~900℃が多いです。市販品の中には、750℃程度から熔ける透明釉もあり

  ます。ネットで検索すれば、メーカーや値段なども知る事ができます。

  但し、700℃程度で熔ける無鉛の釉は有りませんので、作る事は困難と思われます。

 ① 西田様は、ご自分で調合を希望しておられるようですので、調合例をお知らせします。

   以前は唐の土(とうのつち)と呼ばれる鉛白(えんぱく)を主原料に、白玉と呼ばれるフリット

   (炭酸鉛や鉛丹が主原料のガラス))と、珪石を混合した物が用いられていましたが、近年

   鉛の害が大きく報道され、無鉛の釉が推奨されています。

   注: フリットとは、水に溶けるソーダ(ナトリウム)、カリ、硼酸などは、高温で溶解させ

    水に投入してガラス化させてます。これをフリットと呼びます。比較的低温で焼成する場合

    に使われる事が多いです。

  ) 白玉のみ(100%)

  ) 白玉:70 長石:30

  ) 白玉に亜鉛華を数%添加、又は硼酸(硼砂)を添加

   釉の温度を下げる為に、亜鉛華や硼酸を入れる場合があります。

   更にCMC(化学のり)を添加し、水と一緒に攪拌します。

 ② 白玉は、ご自分で作るのは、大変ですので、市販の物を使うと良いでしょう。

   硼酸や硼砂を主原料にした、無鉛の物が市販されていますので、便利に使う事です 。

  ) ご自分で無鉛白玉を少量作る場合。

   石灰石:13.5%、長石:10.5%、炭酸カリ:4.5%、硼砂:2.5%、硼酸:36.5%、石英:32.4%

   坩堝(るつぼ)や匣鉢(さや)を用い内側に珪砂を塗る。混合物を入れ、800℃位で焼

  (かしょう)し、わずかに溶けた状態で冷却して取り出し、これを粉砕する。

 ③ 無鉛釉の欠点。現在では大きく改善されてきていますが、以下の欠点があると言われています。

  ) 釉の流動性が乏しく、平滑面にするのに時間が掛かる。その為、気泡が外に逃げ難い。

  ) 焼成温度範囲が、有鉛釉より狭い。

  ) 顔料の発色がやや劣る。

  ) 素地との密着度が劣る。などです。

 以上が、質問に対する答えですが、質問の中に気になる点がありましたので、一言述べます。 

2) 当方には、質問者の趣旨が良く理解されません。

 ① 本焼きした磁器に、低温の釉を施釉する理由とは、どうゆう事でしょうか?

  本来磁器の本焼きの際には、磁器用の透明釉(白釉)が施すのが一般的です。

  本焼き時には無釉で焼成したのでしょうか?

 ② 低温で焼成する目的は何でしょうか?

  磁器の場合絵付けは上絵付け(又は下絵と上絵の共用)で行います。即ち透明釉を施し、本焼き

  した作品に上絵の具で模様を描き、800℃程度で焼き付ける方法を取ります。

  上絵付けの上に施釉する事はしません。施釉するのは、下絵付けの場合のみです。

 ③ 上絵付けは使用と共に、絵が剥がれ易くなる欠点があります。

  その為、取り扱いや洗う(洗浄)場合は、細心の注意が必要に成ります。特に表面を強く擦ると

  模様が剥がれてしまいます。

  質問者はこの事を心配して、絵の上に釉を掛ける下絵付けの技法で、行たいと思っているので

  しょうか? 下絵付けならば、下絵付け用の絵の具を使う事になります。その際問題に成るのが

  本焼き後の絵付けです。一般には絵の具の載りの良い、素地の吸水性がある素焼き後に行うから

  です。

 ④ 上絵付けの絵の具の上に釉を施する事は、余り薦められません。(やらない方が良いでしょう)

  その理由は、以下の事が有るからです。

  )上絵の具は塗ったままの状態で、焼成する事で、綺麗に発色する様に調節されています。

   上絵の具の上に施釉すると、発色が悪くなります。即ち彩度が悪くなります。

  )本焼き後の施釉では、素地は収縮せず、釉のみが収縮する事になりますので、釉の剥がれや

   ひび割れ(貫入)が発生する恐れがあります。

私の意見は以上ですが、疑問や不明な点がありましたら、再度質問して下さい。
  
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