照源寺は桑名駅から歩いても10分位の所にある。法盛寺から向かうのでタクシーを呼んだが、運転手が他所からの応援で来たと言い、照源寺をまったく知らなかった。辿り着くのにえらく苦労した。照源寺の山門は桑名市史跡文化財として昭和36年11月に指定されている。
お寺の縁起によると「寛永元年(1624年)桑名藩主 松平隠岐守定勝公(徳川家康公の異父弟)のご逝去に際し 二代将軍徳川秀忠公の台命により 御子松平隠岐守定行公が御父菩提のため新規に一寺を建立し、当地に埋葬しました。当初は東海山 泥垣院 崇源寺と号しました。それは定勝公の御法号(戒名)「崇源院殿」に因るものです。しかしのち、寛永三年にご逝去された秀忠公ご夫人の御法号(戒名)が偶然に「崇源院殿」と一致して、松平定綱公がご遠慮され 寺号を改め 照源寺 としました」とある。ここは観光客もあまり訪れないのか、静かな佇まいの古刹という感じのお寺さんだった。
昭和12年10月、照源寺にある松平定綱及一統之墓所が、三重県指定文化財として指定された。徳川家康の生母伝通院(於大)の再婚した久松俊勝の子、定勝を藩祖として松平定綱を定綱系久松松平家初代としている。桑名松平家の系図を独立させているため、定勝家系図が複雑になっている。桑名市教育委員会文化財HPの解説によると「当寺は元和3年(1617)桑名藩主となった松平隠岐守定勝が、寛永元年(1624)逝去の時、その子定行が菩提のため創建した。定行はその後、伊予松山へ移封となり、代わって弟定綱が城主となり、以後いくらか転変はあったが桑名へ再び復封した文政6年(1823)から明治まで、松平家の霊廟として永続した。廟は境内の裏山にあるが、明治期に整備されたようで、定勝公の廟堂はこのときこわされたらしい。すべて26基、その主なるものは藩祖松平定勝、同室、初代定綱(定綱を初代とするのは桑名松平越中守家の系図を独立にみたもの)、5代定儀、6代定輝、9代定信(楽翁)、10代定永、11代定和、12代猷室などである」とある。
1、少将松平宗源君墓(松平定勝) 2、大鏡院墓(松平定綱)
3、恵徳公之墓(松平定和) 4、楽翁源公之墓(松平定信)
伊勢桑名藩主となったのは、定勝、定行、定綱、定良、定重、定永、定和、定獣、定敬、定教。桑名藩主から松山藩主になった松平定行を桑名松平家の系図に加えていないためより複雑になっている。加えて照源寺松平定綱及一統之墓所前にある墓所説明図に三代藩主松平定勝とあり、誰から数えて三代藩主なのか余計戸惑う。幕末の旧桑名藩主、十二代定敬と十三代定教の墓は染井霊園にある。
この松平家の墓域の近くには桑名藩士高木貞作と共に藩主松平定敬の説得に訪ねた桑名藩家老吉村権左衛門を上意により暗殺したといわれている山脇隼太郎(正勝)と山脇一族の墓域がある。
染井霊園桑名定敬墓銘
公諱定敬幼称之助晩号晴山高須候松平義建之第七男以弘化丙
午生年甫十四出継桑名藩主英哲公之後襲封任越中守元治甲子以
特命補京都所司代與一橋公会津候協心大盡力於国家既而事與志
違戊辰難起蒙譴屏居壬申春被特赦公深感激報恩之念極切矣及西
南乱起公乃密奉 朝旨有所盡力以特旨叙正五位賜恩賞品爾後累
陞叙従三位二十七年補日光東照宮宮司無幾辞免三十四年叙正三
位四十一年罹病七月二十日特旨叙従二位其明日薨享寿六十三越
二日以礼葬于染井塋域公天資明毅善納人之諌自少脩文講武雖居
劇職之際亦未嘗怠其講習日課之業晩年愛音楽特修禅有所造詣配
松平氏先逝側室松平氏挙男曰定晴襲子爵定教公之後
注:(金扁に契)
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慶応四年、大坂から江戸に向かった慶喜と会津藩主を会津藩の神保修理と浅羽忠之助が陸路で追いかけた足跡を、大坂城から長谷寺、桑名、名古屋まで辿った旅の途中で照源寺に寄りました。かなりの強行軍だったので久松松平家墓所の個々の墓石を詳しく記録しませんでした。10年も前の事で記憶もハッキリしませんが、転封があった割には久松松平家の菩提寺が少なく、照源寺の松平定綱及一統之墓所の右側、定勝一族と定行娘松尾が嫁いだ服部半蔵正就一族の墓が残っているのに、他の藩主の家族墓がほとんど見当たらず、大名の墓域にしては小さいなという印象でした。藩主の家族墓はどこかに合祀されているのでしょうか。諱、字名、諡、幼名もあり、菩提寺では字名や俗名を墓石に表さない事も多く、菩提寺の過去帳にも諱を載せず、また系図にも表記しない人もいたのではないでしょうか。