ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

報道ステーション『ドイツのワイマール憲法から学ぶ、自民党憲法草案・緊急事態条項の危うさ』←文字起こし

2016年03月21日 | 日本とわたし
報道ステーションの古舘さんが、またまた素晴らしい取材をしてくださいました。
感謝の気持ちを込めて、文字起こしをしました。

画像はこちら↓の方が良いのですが、記事に転載することができません。
『ワイマール憲法から学ぶ、自民党憲法草案緊急事態条項の危うさ』
【報道ステーション】2016.03.18
http://www.dailymotion.com/video/x3yonfg

なので、ユーチューブの方に上げてくださったものをここに載せさせていただきます。




文字起こしはじめ
(冒頭のスタジオ収録の部分は、ユーチューブの方にはありません)



▪️スタジオ



古舘アナウンサー:
日本憲法改正というものが、徐々に徐々に、視野に入ってまいりました。
ならばあの、緊急事態条項から動いていくのではないか、ということに関して、もっともっと議論が必要なのではないか。
その場合に、専門家の間では、ドイツの、あの、ワイマール憲法の国家緊急権、この教訓に学ぶべきだという声が、かなり上がってきているのも事実であります。
その国家緊急権を悪用する形で、結果、ナチの台頭があった。
ですから、これからご覧いただく中に、思わず目を背けたくなるような映像が入っています。
しかし、ドイツで実際に起きたこと、ありのままに放送をしよう、という結論にいたりました。
そこはご了承いただきたいと思います。
もちろん、日本で、ナチ、ヒトラーのようなことが起きるなんて、到底考えておりません。
しかしながら、将来の日本で、緊急事態条項を悪用するような、想定外の変な人が出てきた場合、
どうなんだろうということも考えなければ、と言う結論に至りまして、一泊三日でワイマールに行って参りました。


▪️ドイツ・ワイマールにて

朝方の雨が上がりました。
そのせいか、だいぶ人通りが多くなってきた感じがします。
そして、私が立っている後ろ、国民劇場です。


今夜は、ゲーテのハーストが上演されるという事ですが、
この向かって左手の人物が、その文豪ゲーテ、そして右側が、あの年末吉例、第九の歓喜の歌の詩人、シラーです。


見たところ、シラーがゲーテに、軽くツッコミを入れている感じがします。

さて、第一次世界大戦後、今から100年近く前に、当時世界でも最も民主的と言われた、あのワイマール憲法が、この劇場で、まさに制定されたんです。


第一条は、もちろん国民主権。
そして男女平等。
思想信条の自由。
その基本的人権を尊重する。
日本国憲法も、大きく影響を受けたわけです。
このプレートに、そうです、1919年8月11日、ドイツ国民はこの場所でワイマール憲法を制定したとしっかり書いてあります。


ただ、ここで、ちょっと見てもらいたいものがあります。
カメラさん、引いていただけますか。

これが、今の国民劇場の前の広場、


同じ場所ですがトンと飛んでこれ、1926年のこの広場です。


ワイマール憲法制定からわずか7年後の、この1926年、ナチスの第二回党大会が開かれている様子です。

アドルフ・ヒトラー、


ナチ国民社会主義ドイツ労働者党率いて、独裁体制の下、第二次世界大戦を引き起こして、ユダヤ人の大量虐殺という大惨事を生んだ。


でも、ヒトラーというのは、軍やクーデターで独裁を確立した訳じゃありません。
合法的に実現しているんです。


実は、世界一民主的なはずのワイマール憲法の、1つの条文が、独裁につながってしまった。


そしてヒトラーは、ついには、ワイマール憲法自体を停止させました。


だから先ほどの、このワイマール憲法制定のプレート、これも親衛隊に、一時外させてます。


今のプレートは、戦後また、同じものをかけなおしたというわけです。

ヒトラー独裁へのいきさつ、というものを振り返っていくと、日本がそんな風になるとは、到底思わない。
ただ、今、日本は、憲法改正の動きがある。
立ち止まって考えなくていけない、ポイントがあるんです。

ワイマールの街を代表するホテル、ホテル・エレファントです。


このホテルを、ヒトラーはとても気に入ったといいます。
最終的に、このホテルは、ナチが経営をしていたんです。
二階には、かつて、ナチが会議室に使っていたという部屋があります。
ここです。
今はきれいに改装されて、客室になっています。
そして、続きにバルコニーがあります。
ヒトラーは、このバルコニーに出て、パレードを謁見していた。




当時のドイツは、第一次大戦に負けて、巨額の賠償を抱え込んだ。
しかし、経済においては、一旦は立て直すことができた。
その後です。
世界恐慌が起きてしまった。
失業者が街にあふれた。


さらには、失業していない人々の心の奥にも、失業への恐怖というものが渦巻いていた。
そういう中でヒトラーは、『経済対策』と『民族の団結』を、前面に打ち出していった。


そして、表現がストレートだった。
「強いドイツを取り戻す」「敵はユダヤ人だ」と、憎悪を煽った。


演説が得意だったヒトラーというのは、反感を買う言葉を、人受けする言葉に換えるのがうまかった。
例えば、独裁を「決断できる政治」、戦争の準備を「平和と安全の確保」といった具合です。


平和を愛するとともに、勇敢な国民になってほしい。


この国を、軟弱ではなく、強靭な国にしたいのだ。


この道以外にない。





ヒトラーの腹心、ヘルマン・ゲーリングも、その手法を語っている。


国民は、指導者たちの意のままになる。


それは簡単なことで、


自分たちが外国から攻撃されている、と説明するだけでいい。


平和主義者に対しては、愛国心がなく、


国家を危険にさらす人々だと、批判すればいいだけのことだ。


この方法は、どこの国でも、同じように通用する。



ヒトラーの息遣いは、どんどんどんどん大きくなっていった。
ただ、ドイツの憲法は、世界一民主的な、あのワイマール憲法ですよ。
独裁なんていうものが、許されるわけがないんです。
じゃぁヒトラーは、どうしたんだ?
実は、使ったのは、ワイマール憲法の第48条、『国家緊急権』というやつなんです。


これがポイントです。
これは、国家が緊急事態に陥った場合に、大統領が、公共の安全と秩序、これを回復するために、必要な措置を取ることができる。


大統領が、なんと、一時的には何でもできちゃう、という条文だったわけです。

この条文が、実は、ヒトラーに独裁の道を、ついに開かせてしまった。
じゃあなんで、そもそも、この条文が入っていたのかといいますと、
憲法を当時作った人たちが、国民の普通選挙による議会制民主主義というものを、実はまだ、完全には信用していなかったんです。
国民の男女平等選挙による議会というのは、初めてのことですから、
言ってみれば、憲法を作ろうとしていた人たちが、まさにこのぎっしり詰まったソーセージのように、疑いをぎっしり詰め込んでいた、ということなんです。
庶民は全く信用されていなかった、ということなんです。
でも、ヒトラー以前には、この条文は、実は何回も使われていたんです。
議会が紛糾して、全く動かなくなる。
さぁどうしよう、法律を通さなきゃいけないという時には、何回もこれは使われていた。
しかしヒトラーは、完全にこれを悪用した、ということなんです。



▪️ワイマール・ナチ党本部跡

ヒトラーは、権力掌握のために、国家緊急権をどう巧妙に使ったのか、という点です。


1933年です。
念願の首相に任命されたヒトラーは、議会で多数を取るために、すぐに議会を解散しました。


そして、選挙に向けて、互いに利用し合う関係にあった、当時のヒンデンブルク大統領を動かした。


そう、共産党が、全国ストを呼びかけていた。
それを見るや、国家緊急権を発動させたんです。


集会と、言論の自由を制限。
政府批判を行う政党の集会やデモ、出版を、ことごとく禁止した。


そして、それからおよそ3週間経って、また立て続けに、国家緊急権を発動します。

有名な、ベルリンの国会議事堂が放火される、という事件が起こった。


一説では、ナチの自作自演だという話もありますが、
ヒトラーは、この放火事件を、共産党の国家転覆の陰謀として、またも国家緊急権を使ったわけです。


今度は、あらゆる基本的人権を停止した。
司法手続き無しで、逮捕もできるようにしてしまった。


野党はもはや、自由な活動はできなくなりました。

当時、お父さんが、野党のベルリン市議会議員だった、ローラ・ディエールさん、95歳です。


ローラ・ディエールさん:
父は、社会民主党の集会に参加しました。
しかし、二度と戻ってこなかった。


ナチは家の中を荒らしまわり、めちゃくちゃにしました。
当時は、(メディアも含めて)思っていることを口に出すことは許されなかった。
ナチは、そこを最も重視していました。
ナチ政権について思っていることなど、誰も口に出来ませんでした。


当時の共産党の党首も、突然逮捕され、後に殺害されました。


そのお孫さんです。

祖父が逮捕され処刑された、ヴェラ・デーレ・テールマンさん(59):
共産党の党首だった祖父が逮捕されたことで、母は、学校で、ナチを支持していた女の子から殴られました。


その後、母も祖母も、逮捕されてしまいました。
母は、強制収容所に連行され、拷問やひどい暴力を出ました。

民主的に選ばれた政権であっても、憲法の条文によって、独裁者に変わる可能性があるんです。


この歴史を、二度と繰り返してはいけません。



当時のドイツの政情は、左翼勢力右翼勢力の対立が激しくなって、各地で暴動や反乱が繰り返されていた。
非常に不安定だった。
そんな中で、ヒトラーの国家緊急権行使を後押しをしたのは、〝保守陣営と、そして財界〟でした。


財界も、何もナチのことは好きじゃあなかったけれども、何よりも、共産勢力の盛り上がりを怖がっていた。


憲法裁判所元判事の、グリム教授の話です。

ヒトラーは、国家緊急権で自由を廃止し、野党の息の根を止めました。


それが、民主主義と議会の終焉につながったのです。


この憲法でまさか独裁者が誕生するなど思いもしなかった。
でも実際に独裁者は誕生した。それは想像を超える世界でした。



さぁ、野党が自由を奪われた選挙ですから、ヒトラー率いるナチ党は、議席を増やして、いよいよ仕上げにかかろうとします。

恫喝と懐柔策を駆使して、反対派を従わせて、議会の3分の2まで抑えて成立させたのが、あの『全権委任法』です。


国会の審議を経ずに、政府が、憲法の改正含めて、全ての法律を制定できてしまう法律です。
この瞬間、世界一民主的な憲法のもとで、合法的に独裁が確立したんです。


ヒトラーの演説:
私やナチを疑うのは、頭がおかしい者か、ほら吹きくらいのものだ。


我々は、ドイツのために戦う。
断固として、戦わなければならないのだ。




ワイマールの市街地から、15分ほど車で来た、小高い丘の上なんです。
まるっきり別の世界に迷い込んだようです。
ここは、ブーベンヴァルト強制収容所です。


ここには、25万人のユダヤ人の方々が、収容されました。
そして、また同時に、ナチが敵と見なした共産党を始め、多くの野党の人たちも、ここに入れられました。
正面は何も見えませんけど、ここに、多くの収容所がありました。
その跡地です。

ここは、人体が解剖された部屋です。


ここに器具がありますね。


ここは、多くの方々の遺体が、焼かれたところです。


多くの方が犠牲になりました。
これが、その時の映像です。
(遺体の映像が映りますが歴史の事実を伝えるためそのまま放送します)

アメリカ兵が、この収容所を初めて見た時に、言葉を失ったそうです。
腐乱した遺体が、あちこちに散らばっている。


中庭には、遺体が積み上げられている。


生き残った人たちも、体に肉がほとんどない、骨と皮だけの状態だった。


この惨状を見た連合軍は、ワイマールの市民を、ここに連れてきて見せた。


その時の様子を撮影していた女性カメラマンが、後に、このように記しています。
「女性は気を失った。男たちは顔を背けた。あちこちから知らなかったんだ、という声が上がった」そうです。

しかし、収容者たちは、怒りをあらわに叫んだ。


いいや、あなたたちは知っていた。


監修:東京大学大学院 石田勇治教授(ドイツ現代史研究)
協力:首都大学東京 木村草太准教授(憲法学)
学習院大学 高田博行教授(ヒトラー演説研究)ほか




ここまでは、80年前のドイツで起こったことです。
当然、日本で、こんなことが起きるなんてのは考えられません。
でも、気になることがあるんです。

これは、自民党が発表している、憲法改正草案ですが、ここには緊急事態条項と言う条文が書き込まれているんですね。


今年7月の参院選で、与党が圧勝して、3分の2の数を取るとなると、日本でも、憲法改正というものが、より現実味を帯びてまいります。
その時、俎上に上がるとされているのが、今言った『緊急事態条項』なんです。
ここで言う『緊急事態』と言うのは、


大規模な自然災害だけじゃなくて、


外部からの武力攻撃、


社会秩序の混乱、などと位置づけて、


この緊急事態の際に、ここです、
(緊急事態の宣言の効果として)内閣は、法律と同一の効力を有する政令を、制定することができる、と規定しているんです。


さあそこで、最後に、ワイマール憲法研究の権威であるドライアー教授に、日本の緊急事態条項について、それを見ていただきました。

ワイマール憲法に詳しいイエナ大学・ミハエル・ドライアー教授:
この内容は、ワイマール憲法48条(国家緊急権)を思い起こさせます。


内閣の一人の人間に、利用される危険性があり、とても危険です。


一見読むと無害に見えますし、他国と同じような緊急事態の規則にも見えますが、


特に、(議会や憲法裁判所などの)チェックが、不十分に思えます。


このような権力の集中には、通常の法律よりも、多くのチェックが必要です。


議会からの厳しいチェックができないと、悪用の危険性を与えることになります。


なぜ、一人の人間、首相に、権限を集中しなければならないのか。


首相が、(立法や首長への指示など)直接介入することができ、


さらに、首相自身が、一定の財政支出までできる。


民主主義の基本は『法の支配』で、『人の支配』ではありません。


人の支配は、性善説が前提となっているが、良い人ばかりでは無い。

民主主義の創設者たちは、人に懐疑的です。
常に、権力の悪用に、不安を抱いているのです。
権力者は、いつの時代でも、常にさらなる権力を求めるものです。

日本は、あのような災害(東日本大震災)にも対処しており、


なぜ今、この緊急事態条項を入れる必要が、あるのでしょうか。




▪️スタジオ

古舘アナウンサー:
さあここからです。
ドライアー教授も、議会のチェックが弱いというニュアンスを、懸念されているところがあります。
これに関して、自民党に、どうなんでしょうか?というふうに聞きましたら、
国会での丁寧な合意形成に、真摯に取り組んでいく、という回答を得ました。
そして、後にありますのが、自民党の憲法改正草案、ということになります。


そしてこちらに、Q&A形式になりまして、この憲法改正草案の質問、それに対する答、こういう分厚いものが用意されています。


ちょっとこちらをご覧ください。
まず、98条の方ですが、改正草案の緊急事態の中の、
『事前または事後に国会の承認を得なければならない』


と、こうはっきり書かれているわけなんですね。
で、Q&Aで、それに相当するところをより詳しく見てみると、
「国会による民主的な統制の確保の観点から、緊急事態の宣言には、事前または事後に、国会の承認が必要であると規定した」と、やはり書かれている点。


それから、もう一つ、99条に移りますが、
「法律の定めるところにより、内閣は、法律と同一の効力を有する政令を、制定することができる」という、


先ほど、VTRの中でも、ここをポイントとして指摘いたしました。
これに関して、やはりこちらも押さえておきますと、
「その具体的な内容は、法律で規定することになっているために、政令と言っても、内閣総理大臣が何でもできるようになるわけでは決してありません」と、はっきりここに書かれております。

これを踏まえた上で、専門家の長谷部さんに伺います。
一つ、ワイマールに大急ぎで行ってきたりして、いろいろこう、もやもやするのは、
何回も再三再四申し上げているように、ヒトラーが日本に出てくると、あのような人間が、到底想定なんかできないんですが、
将来、ヒトラーではなくても、とんでもない人が出てくる可能性がないというふうに、否定するわけにはいかないと考えると、
立ち止まらなければいけないというところが、数点あると思うんですが、いかがでしょうか。

早稲田大学・長谷部教授(憲法学者、元東大法科大学院長):
まず、この、自民党の改憲草案の緊急事態条項に対する問題点ですが、
他の憲法の緊急事態条項と比べても、発動の要件、つまり宣言するときの(ようき?)が、どうも甘すぎるのではないのかと。
確かにその、武力攻撃とか、大規模な自然災害、例示はあるんですが、ただ、結局のところは、法律に丸投げしているんですね。
どういう場合に宣言ができるのか。


古舘アナウンサー:
『法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる』


長谷部教授:
そうなんですね。
しかもそれは、首相が特に必要があると認めればと、これはまあ、客観的と言うよりは、内閣総理大臣がそう思えばという、主観的な要件になっています。
ここも非常に甘いな、というふうに思われるところですね。

それから、先ほど古舘さんがご指摘の通り、この宣言がなされますと、その後に、
内閣というのは、法律と同一の効力を持つ政令を出せる、ということになります。
法律というのは、いろいろ重要なことを決めてます。
例えば、身柄を拘束される場合、あるいは、その刑事裁判がどう行われるべきか、
これは、刑事訴訟法という法律で決まっているものですので、それを政令で変えられる、ということになりますから、
そうなりますと、これは、人身の自由と言うのは、他の基本的な人権全てを支えているものでして、
それが、政令によってどうなってしまうのか。
場合によっては、令状無しで、怪しいと思われれば拘束をされると、そんなことになるということも、理屈としては有り得ることになります。


古舘アナウンサー:
戦後ずっと生きてきた感覚で言いますと、もっと私より上の方も含めてでしょうけども、
昔と違いますので、今そんなふうに、急に、身柄拘束、疑わしきは全部とっ捕まえちゃうって、そんな事は無いだろう、と思いたい気持ちは強くあって当然なんですけど、
ずっと先の将来に、とんでもない政権とか、とんでもないことになっていた時には、コロッと今の政令みたいなことでいったら、
次の日、昨日までと全く違う世界で、身柄なんかすぐ取られちゃう、ということがありますよね。


長谷部教授:
そういう事は、確かに否定はできないと思いますね、可能性としては。
ですから、そういう道を塞ごうと、少なくとも起こりにくくしようと思うのであれば、
これはやはり、裁判所によるコントロール、その道をやはり開いておかないといけないと、こういうことになると思います。
世界各国、どの国でも、緊急事態条項を発動する時には、裁判所のコントロールを置くというのは、これはもう、いわばグローバルスタンダードなんですね。
だが、日本の場合、問題点がございますのは、日本の最高裁は、いわゆる統治行為の法理を取っておりまして、
高度に政治的な問題に関しては、裁判所は、独自には判断しない。
政治部門の言うことを丸呑みをするという、そういう考え方
なんですが、
これで行きますと、例えば、先例でありますのは、衆議院の解散が合憲かどうかさえ、これもまぁ政治部門の結論を丸呑みという事ですから、
緊急事態条項が必要なのかどうか、一旦発動された後、どういう政令が必要になるのか、果たして裁判所がきちんとコントロールしてくれるのかどうか、
そこのところが大変おぼつかない
、ということになるだろうと思いますね。


古舘アナウンサー:
そこが曖昧であって、緊急事態条項がすっと入ってくることを想定しますと、つまりこういうことですね。
発動用件を、仮にもっと厳しく締めたとしても、裁判所の方がそうじゃなきゃ、何も変わらないということですか?


長谷部教授:
おっしゃる通りで、発動が甘ければ、それは厳格にすればいいじゃないか、というお答えがあるかもしれない。
そうしたとしても、第三者の立場からの裁判所のコントロールが無いということになれば、
結局は同じことになってしまう、そういう可能性があります。



古舘アナウンサー:
かねてより、長谷部さんはこういう風におっしゃってますね。
憲法に緊急事態条項を入れなくても、必要とあらば、法律を改正したり、新たな法律を作ればいいんで、
憲法にこの緊急事態条項を入れなくていいじゃないか
、ということを、ずっとおっしゃってますね。


長谷部教授:
例えば、去年の11月に、大規模なテロが起こったフランス。
非常事態の宣言を出しているわけなんですが、この非常事態宣言というのは、実は、憲法に基づいたものではありません。
非常事態法という法律に基づいて、いろいろな必要な処置がなされているんですね。
日本でも、実はもう既に、災害対策基本法、大規模な災害に対処をする、応急の措置を定める法律もあれば、
いわゆる有事法制も、いろいろ整備をされております
ので、
本当に必要だということであれば、まず法律のレベルで何が必要か、それをまず考えるべき
だ、というふうに私は思います。


古舘アナウンサー:
先ほどもちょっとニュアンス、出されましたけれど、他国に比べてって、じゃあ他国はどうなんだと言った時に
一方で、やっぱりどの国だって、緊急事態条項的なものってのはあるんだと。
何言ってるんだっていう声も、もちろんあります。
それをちゃんと聞かなきゃいけない、と思うんですね。
でも、その場合に、フランスだとかドイツだとか、いろいろ見てみると、そういうものっていうのは、どう日本と違いますか?この草案と。


長谷部教授:
それぞれの国が、緊急事態条項を憲法に置いているのは、やはり、その国なりの事情なり経緯があって置いている、という事ですので、
どういう事情なり経緯があるか、やはり国ごとに考えていかないといけないと。
ドイツの場合ですと、これはもう連邦制国家、政府の権限が、中央政府と州の政府、極めて厳格に分かれております。
だから、緊急事態には、州の政府の権限を、中央政府に吸い上げる必要がある。



古舘アナウンサー:
そこは、緊急事態だから、より中央集権を強めなければいけない、という事ですね。


長谷部教授:
ただ、日本は連邦制国家ではございませんので、そういう事情は当てはまらないと思いますね。


古舘アナウンサー:
フランスはどうですか?


長谷部教授:
フランスの場合、現在の憲法第16条、確かに「大統領に権限を集中する」と、そういう緊急事態条項があるんですが、
ただ、この現在の第五共和政憲法というもの自体が、実は、アルジェリア危機という、特定の危機に対応するためにできた憲法、という色彩が非常に強いですし、
その色彩が特に強いのが、この16条の緊急事態条項なんですね。
ですから、言わばその、アルジェリア危機に対応するための特別仕様として、出来上がった条項ですので、
ですからつまり、歴史を見ると、16条の条項というのは、アルジェリア危機に対応するために、ただ1度使用されただけ、
その後は、1度も使われておりません。



古舘アナウンサー:
そうですか。
とにかく立ち止まって、じっくり議論をする、考えてみるということが、この条項に関しては必要ではないか、
その思いで特集を組みました。

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