ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

「今回ひどかったNHK。一番許せないのは『国会中継』を意図的にやらなかったこと」レイバーネット松原氏

2015年09月21日 | 日本とわたし
「報道しない報道機関」の犯罪的行為。
それを目の当たりにした毎日でした。

そのことについて、松原明さんが、すばらしい記事を書いてくださいました。
↓以下、紹介させていただきます。

メディアをめぐる攻防~もうひとつの「戦争法案」反対運動
松原 明
http://www.labornetjp.org/news/2015/0921matu



憲法を投げ捨て、「戦争する国」に大きく舵を切る「戦争法案」
この攻防は、戦後史の行方を賭けたたたかいだった。
今年2015年の5.3憲法集会に、3万人が集まり、反対運動の口火がきられ、5月~9月までの大闘争となった。
そして9月19日未明、インチキな強行採決と数の力で、ねじ伏せるように「戦争法案」は成立した。

そのなかで、メディアの果たした役割は、きわめて重要だった。
たたかいの半分は、「メディア戦」だといってもいい。
なかでも、NHKが果たした世論誘導は、犯罪的でさえあった
いっぽう、反対運動の広がりをつくったのは、「東京新聞」「TBS報道特集」「テレビ朝日報道ステーション」「日刊ゲンダイ」などのマスメディアと、民衆自身による「ネットメディア」だった。
私はこの間、国会前デモをはじめ、現場に足を運び、「レイバーネット」に記事や動画を流し続けた。
そこから見えたもの、感じたことを書いてみたい。


「報道しない報道機関」NHKの犯罪的役割

NHKがひどくなっているのはわかっていたが、今回一番許せないのは、「国会中継」を意図的にやらなかったことだ。
「報道しない報道機関」というコールが、NHK包囲デモで叫ばれたが、まさにそれだった。
NHKは、衆院特別委員会の強行採決も中継しなかったし、参院特別委員会の磯崎喚問の時もやらなかった
かろうじてやったのは、首相が出席した委員会質疑のみ
しかも、山本太郎の質疑途中で、放送を打ち切る事件もあった
参院大詰めの重要な委員会質疑は、いっさい流さなかった



私は、NHKに、「戦争法案」反対報道をしろとは言わない。
中立でいい。
でも、NHKがやることは、最低限の判断材料を、国民に提供することではないのか。
国会審議では、賛成討論も反対討論もあるのだから、中継することになにも問題があるはずはない。
それを見て判断するのは視聴者であり、NHKは公共放送として、「基本情報」を流す責任があった
しかし、これを放棄し、通常番組や高校野球、大相撲を、流しつづけたのである。

私もNHKに電話で抗議したが、電話を受ける人は、「ご意見ごもっとも。上からの指示で」と答える。
後日(9/9)、レイバーネットTVに出演した、元NHKプロデューサーの永田浩三さんが語っていたが、
その諸悪の根源は、「NHK政治部」や番組総責任者・板野総局長で、ごく一部の人間だという。

→参考・レイバーネットTV録画(9/9NHK特集番組)
https://www.youtube.com/watch?v=YBB8CSgwKco&feature=youtu.be

NHKテレビは、8.30大デモには10クルーも出しながら、まともな報道をしなかった
この時は、主催者発表12万、警察発表3万と併記したが、
9.14大デモの時は、主催者発表の4万5千人のみ、報道した。
知らない人は、9.14のほうが8.30より大規模だ、と勘違いしてしまいそうだ。
NHK内部で、現場の取材記者からの突き上げもあったのか、終盤にはデモの報道も増えたが、
政権寄りの報道姿勢は、最後まで変わらなかった


車道開放をめぐるたたかい

今回の国会前のたたかいは、「車道開放」をめぐるたたかいだった、といってもいい。
議事堂前を埋めつくすことそしてそれを、映像・写真・空撮の形で「可視化」すること
そのことが、反対世論を大きく広げる力になる
逆に、安倍政権には大きな打撃になり、各界各層に地殻変動をもたらすきっかけになる。
だから、政権側は、大デモの「可視化」をいかにさせないかが、最大の課題だった



8月30日、警察の鉄柵バリケードが決壊し、車道が開放されたとき、私はメインステージ横の少し高い場所にいたが、
人々が歓声をあげながら、国会正門前に押しよせる光景がよく見えた。
感動を覚え、足がガクガク震えた。
それは、大海原に起きた「津波」のようだった。
人々の歓声!
手を振り上げる人。
「やった」という表情が、みんな底抜けに明るかった。
権力がもっとも怖れたのは、こうした人々のチカラ、「ピープルズパワー」なのだろう。

議事堂前を埋めつくした写真は、海外メディアではすぐに、大々的に報道された
30日の午後4時すぎ、デモを終えて地下鉄駅に帰る人に、「赤旗」号外が配られていた
わずか数時間前に起きた国会前大デモの写真が、大々的にカラーで載っていた(写真下)。
参加者が、うれしそうにその号外を広げて、写真を撮っていたのが忘れられない。



マスコミでは、「東京」「毎日」「朝日」などが、巨大デモの写真を流したが、「読売」「産経」はほとんど扱わなかった
それどころか、「産経」は、空撮写真から試算したとして、3万2千人と発表した
翌週9月3日、総がかり行動実行委員会の高田健さんは、議員会館前の集会で、
「産経の発表は、正門前の一部の試算で、行動は、国会周辺全体と、日比谷公園まで広がっていること、
地下鉄4駅の乗降客数だけでも、通常より6~7万多かったこと」
などを根拠に、怒りの反論をした。
8.30が、「60年安保以来の大デモ」として刻印されるのか、「通常のデモ」かでは、
歴史的事実として大変な違いであり、社会に与えるインパクトもちがう。

→参考・動画「高田健さん発言」
https://www.youtube.com/watch?v=SgWG-EJQEM4&feature=youtu.be

車道を占拠され、メンツをつぶされた警察
その後の弾圧はすごかった。
バリケードの鉄柵を動かそうとしたり、警察官に触れたりしただけで、「公務執行妨害罪」で次々に逮捕した
それほどの過剰警備にもかかわらず、9月14日の大デモで人々はあふれ、鉄柵が破られ、車道が完全に開放された。
そしてふたたび、大々的に、報道されることになった。



その後、警察の「可視化」阻止の悪知恵は、こうだった。
あらかじめ、2車線を完全に、警察車両と鉄柵でブロックして、空間をつくり、人が歩道に溢れた場合は、そこに参加者を誘導したのだ。
アパルトヘイトやパレスチナの、鉄条網・壁のように囲む「管理空間」を作った
警察指揮車からサーチライトを向けられて、監視される空間
だから、8.30のような「解放感」は、乏しかった。
このため、18日には、4万人以上という三度目の巨大デモになったが、「可視化」という点では、必ずしも成功しなかった。
(なお、16日には、13名の不当逮捕があった9.16国会前弾圧抗議声明


ネットメディアの活躍

6月から毎週金曜日に始まった、「シールズ」の国会前デモは、回を重ねるごとに膨れあがっていった。
マスメディアの好意的報道の影響もあったが、かれらがデモの告知拡散の武器にしたのは、フェイスブック・ツイッターなどのSNS「ネットメディア」である。
参加者の多くがスマホをもち、デモの様子を生中継している。
シールズの若者が演説をするときに、スマホの原稿画面を見ながら話すシーンに、私は、最初は違和感があったものの、すっかり慣れてしまった。

そしていよいよ、最終局面の、9月18日夜の、参院本会議採決をめぐる攻防になった。
この日はさすがに、NHKも中継した。
また、ネットでは、「参議院インターネット審議中継」サイト・ヤフー、ニコニコなどが流していた。
国会前のデモ参加者の多くは、それらをスマホで視聴して、最新情報をつかんでいた(写真上)。
そして、コールをあげていた。
だから、福山哲郎議員や小池晃議員の演説タイムに合わせて、「福山がんばれ」「小池がんばれ」のコールを、議事堂に向けてあげることができた
次に、公明党議員の発言の番がきた。
出てきたコールは、「公明党よ恥を知れ!」だった




国会の内と外をつないだリアルタイムのたたかいが、こうしてネットメディアを駆使することで実現した。それは、私にはとても新鮮だった。
午前2時すぎ、山本太郎の、5回目の「一人牛歩」が始まった
議場内では、与党議員が、ものすごいヤジと罵声を山本議員に浴びせていたが、国会前は逆だった
「タローがんばれ」「タローがんばれ」の、大コールが起きていたのである。

本会議採決は、19日午前2時18分だった。
それを受けて、リーダーの奥田愛基さんが、「採決撤回!」の声を上げた。
そのコールが一段落したところで、奥田さんは、たくさんのカメラに向かって、こう呼びかけた。
「いま、ネットで見ている人たちに訴えたい。
こんな状況を許してはならない。
あなたも声を上げてください。
賛成議員を落選させよう。
選挙に行ってほしい。
デモに行ってほしい」
と。

そしてすぐに、「選挙に行こうよ!」「デモに行こうよ!」の大コールが始まった。
午前3時、国会正門前に残った若者たちは、1000人くらいだと思う。
しかし、国会前のたたかいは、ネットを通して、日本中に、いや、世界中に発信されていたのだ。



→参考・動画(19日未明の国会前)
https://www.youtube.com/watch?v=nNflasPQ_MM&feature=youtu.be

安倍政権は、「戦争できる国」に向かって、またひとつコマ進めた
しかし、その前に立ち塞がる民衆の壁が、大きく生まれたことも間違いない。
メディアをめぐるたたかいは、これから一層熾烈になるだろう。
私も、レイバーネットで報道を続ける他のメンバーと一緒に、ビデオカメラを持って参加し続けたい。
(レイバーネット日本共同代表)

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2 コメント

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Unknown (反安倍)
2015-09-23 09:11:03
【要拡散】
「安保関連法案の採決不存在の確認と法案審議の再開を求める申し入れ」への賛同のお願い

↑↑↑
9月23日朝10時締め切りです
URLが貼れません!
安倍の陰謀か、嫌がらせか
ググって下さいm(__)m
返信する
反安倍さんへ (まうみ)
2015-09-23 14:07:44
この署名を、違う方からも教えていただきました。
ついさきほど、ブログ記事、フェイスブック、そしてツイッターで拡散しました。
返信する

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