まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

譲渡制限株式―過半数譲渡は承認不要に

2007-08-07 00:14:03 | 商事法務

○ 譲渡制限株式(ここでは普通株が前提です)を譲渡しようとするときは、承認機関(取締役会等)の承認が必要ですね(136)。請求を受けた会社は、請求から2週間以内に、承認可否の決定通知を譲渡等承認請求者に通知しないといけません(1392項)。通知がなければ承認したとみなされますね(145条)。請求者は、承認が得られない場合には、買取人を指定するよう請求できますね(138条1号ハ)。会社は、自己株式として買取るか、買取人を指定しないといけません。買取人は供託したり(純資産/株x株数の額の供託)、価格交渉して協議が整えばそれでよし、協議不調のときの裁判所への価格決定請求等の手続きをします(141-145)。じゃまくさいですね。

50%超譲渡は承認を不要とすべき】

     過半数の株式を譲渡するときに、どうして取締役会等の承認が必要なのでしょう?不要だと思いますね。「当該株式会社(取締役会等)の承認を必要とする。但し、議決権ある株式の過半数の譲渡の場合は、この限りではない」とすべきですね。

     勿論、大半の場合は取締役会等は承認するでしょう。過半数の譲渡とともに経営支配権が新株主に委譲されます。旧経営陣の(全部又は一部の)退陣と新役員の選任を株式の譲渡の際に、総会を開催して行う例も多いですよね。

     承認機関を、取締役会や代表取締役ではなく、上位の機関である株主総会とすれば、50%超保有の株主が普通は譲渡等承認請求者ですから、当然承認されますよね。

【理由1:過半数譲渡は事業の売却・買収である。当事者のM&Aの合意を尊重すべし】

     過半数の譲渡の場合に、「買取人を指名します。価格が折り合わないので裁判所に価格決定の請求をします。」こんなめちゃくちゃな決め方はありませんね。これは事業の売却・買収です。指定買取人は、勿論関係者でしょうけれども、事業はそんな簡単に買えるものではありません。重大な責任を負います。即ち今後役員を指名して経営支配するとともに、連結対象(40%以上でも条件が整えばなりますが)ですから連結ベースで経営責任が生じます(親子で取引を行ったり、融資・保証等いろいろ関係してきます。)詳細なデユーディリジェンスを行い、買収に値する事業か、今後事業を行うべきか、行える経営者は見つかるか、会社の価値・株式売買価格を幾らとすべきか、会社のビジョン・将来の方向性をどうすべきか、支払う金はあるか、無い場合はどのように調達できるか、調達出来るまでどれだけ時間がかかるか等、こういった点を詳細に検討する必要があります。指定買取人がいきなり指定されて買える筈ありませんね(勿論例外を否定しませんが)。

     当初の取得予定者は、事業買収者ですから、上記を検討の結果、何ヶ月もかけてやっと売主と合意。その結果株式を譲渡しようと、売主から会社に譲渡承認を申請したら、保身を計る現経営者が承認を拒否したという場合などが考えられますね。過半数の株式を持つ株主の行為を、経営者が承認しないのもおかしな話ですね。経営者は、いつのまに株主よりも偉くなったのですか?

     裁判所が価格を決定等と書いていますが、財務諸表が粉飾だったり、後から簿外負債が出てきて、裁判所が決めた売買価格が不適切だったら裁判所が責任負ってくれるのですか、損害を賠償してくれるのですか?そんな事あり得ないですね。裁判所は、詳細なデユーディリジェンスをして価格を決めるのですか?裁判所にそんな能力はありません。

・ 当事者間で株式譲渡契約を締結する必要がありますが、株式譲渡の他に、詳細な事実の表明、約諾事項・保証(譲渡の前に現株主をして経営陣に行わしめること等も含む)、事実が相違したとき、約諾事項を守らないとき等の解除・損害賠償等を規定する必要があります。価格を決めて譲渡代金の支払いだけを行えばよいというものではありません。過半数譲渡は、株式の譲渡という意味以上に事業の譲渡です。当事者の事業譲渡の意思を尊重すべきですね。

【理由2:会社が承認しないときは、譲渡人は経営陣を解任して、新経営陣をして承認させることができる】

     過半数の株式を譲渡しようとする者は、普通は譲渡に反対する取締役をもともと指名した株主の場合が多いですよね。現取締役を見放したか、それとも金に困って株式売却するのか、事業ポートフォリオ組み替えとか売却の理由はいろいろでしょうけど、ともかく株式を売却し、事業を売却します。

     経営陣にとっては、自分を指名・選任してくれた株主がいなくなります。経営委任をした者がいなくなれば、受任者たる経営陣が経営を継続するには、新株主から信任を受けて受任される必要があります。即ち新株主を当然承認するのが前提となります。もしごねて、承認をしないなら、譲渡人(株主)は株主総会を開催して、現経営陣を解任(今度の会社法で特別決議から普通決議になりましたね)して、暫定経営陣を指名・選任して、取締役会等で譲渡承認をすることができます。譲渡承認をしない代表取締役・取締役会で反対する取締役は、承認しないならまあ辞任して下さいということでしょうか。

     現経営陣は、承認を拒否して、一次的延命と保身は出来るかもしれませんが、これは悪あがきですね。(実は、実際上もし悪あがきをしようと思えば、かなりできますね。例えば、譲渡人が株主による総会招集(承認をしない取締役の解任の総会)をしようと思えば、代表取締役に招集を請求します。しかし、これも無視すれば、株主が裁判所の許可を得て自分で招集しないといけません。大変な手間ですね。)

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