まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

株式・株主無しの株式会社が可能?

2007-07-09 00:44:32 | 商事法務

       非常識な表題です。そんな馬鹿なこと出来るはず無いでしょと言われますね。だいいち会社法の大前提の株主総会も開催出来ないじゃないかと言われます。しかし、今度の会社法では、会社法の大原則に抵触する可能性がある規定があります。この規定を突き詰めれば株式・株主無しの会社が出来る?かも?

○ 会社法107条第1項では、「株式会社は、その発行する全部の株式の内容として次に掲げる事項を定めることができる。」として各号に譲渡制限・取得請求権付・取得条項付株式について定めています。即ち、全部の株式を取得請求権付・取得条項付株式に出来ますね。

     同条2項では取得請求権付株式について、柱書では、定款で内容を定めなさいと規定して、2号では、取得請求できる旨・その期間、及び引換えに社債・新株予約権・新株予約権付社債を交付するときは、その内容(種類・数・金額・算定方法等)を定めなさいと規定しています。更に「株式等(株式、社債及び新株予約権をいう。)以外の財産を交付するときは、当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法」と規定しています。取得条項付株式についても、会社が取得できる旨とその事由・日、及び上記と同趣旨の内容を定めなさいと規定されています。

     旧商法では、転換株式として種類株式の一つとしていました(旧商法222-2条)。しかし会社法では、取得請求権・取得条項付株式を、全株式の内容として定め、かつ他に種類株式を発行していない会社は、213項及び108条(種類株式)にて、種類株式発行会社ではなくなりました。即ち、種類株主総会を開催しなくても良いと言うことですね。

       取得請求権付株式は、株主が請求すれば会社が買い取ることを発行のときから約束しますね。通常は、金銭を対価とするでしょう。しかし、別の種類の株式、他社株式、社債その他の財産を対価に出来ます。Exchangeable Bond(他社株転換社債)というのも出来ますね。 例えば、配当優先株を取得請求権付株式にして、取得の対価を普通株にするというのも多いかもしれません。普通株となり配当の負担軽減になるでしょう。

     取得の対価として、株式等以外の財産もOKとしています。何故、金銭、株式(他社株式を含む)及び社債等に限定しなかったのでしょうかね。例えば、資本充実の必要なJALが、配当優先株の取得条項付株式を発行して、取得の対価を優待航空券にすることも可能なわけですね。正月・ゴールデンウィーク・お盆を除いて有効という優待券もだせますね。どうせ飛行機はがらがらでも運航しないといけませんので、JALにとっては優待券を使われてもコストがそんなにアップする訳でもないですね。普通株への変換でもないですから、航空券として使われてしまえば配当負担も生じません。JALとしてはベストの資金調達かもしれませんね。でも、定款変更の特別決議が取れないでしょうね(私なら航空券でも良いですけどね)。それと、JALとしても配当ができる剰余金がなければ取得出来ないですね(剰余金の分配可能額があるときに限り取得可能=1705項。取得請求権付株式でも同様=1661項但し書)

     また、1111項では、「種類株式発行会社がある種類の株式の発行後に定款を変更して当該種類の株式の内容として1081項六号に掲げる事項(取得条項の追加)についての定款の定めを設け、又は当該事項についての定款の変更(当該事項についての定款の定めを廃止するものを除く。)をしようとするときは、当該種類の株式を有する株主全員の同意を得なければならない。」ということで、上場企業では事後的に取得条項を付けるのは現実的には不可能ですね。

○ ともあれ表題の株主・株主無しの株式会社は可能かという奇問に戻れば、株主が少数で、業績が超順調な企業(十分な剰余金の分配可能額がある)が、株式の全部を取得条項付株式として、取得の対価を全て社債か何かにして取得を実行してしまえば、理屈としては可能となります。株主・株式がゼロになります。でもこの場合総会も開催できなくなります。突き詰めて考えれば不思議な規定だと思いますね。


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