まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

産業革新機構について その①

2009-08-02 20:28:40 | 社会・経済

       前回、産業革新機構=「官民ファンドは税金の無駄遣い」と言いました。その具体的な例としてIPA=情報処理推進機構をあげて説明しました。その後725日の日経新聞に追加の記事が出ていました。私は、技術の事業化を数年やっていましたので、その経験なども踏まえてコメントしてみましょう。

       出資者「官民ファンド」と言われますが、実質政府ファンドですね。政府の経済活性化の一つの施策としてのファンドです。但し、政府出資のみでは、大儀も不足がちですし、成功可能性等に疑問も出る可能性もありますので、有力企業にも出資してもらって挙国一致の振りをしています。政策投資銀行は10億円ですが、各出資企業は5億円で、政府出資の820億円と併せて全部で905億円ですね。各企業はただの「おつきあい」です。企業にとってはただの5億円、何の真剣さもないし、金額もはした金ですので、寄付金みたいなものですね。

       人材:新聞によれば「財務面だけでなく、技術の目利きや販路開拓などの経験が豊富な人材が必要になる」との事こういう発想は全く表面的です。事業化ができる技術かどうか、その目利きが出来る人材というのがどういう人かわかっていませんね。

例えば、業務外の闇研究でフラッシュメモリを発明した元東芝の東北大学名誉教授の桝岡さんの場合、フラッシュメモリ発明当事、その将来性に技術会社の東芝は気づきませんでした。安くインテルや韓国サムスンに技術供与してしまったのではないでしょうか。あるいは、半導体ステッパーでも、これ以上は物理限界で製造不可能等という結論をだして開発を辞める理論を論文で出している、優秀な?技術屋もいます。目利き等の言うことは当たりません。

では、技術の目利きが出来る人がいるのかですが、少しですがいます。それはいろんな問題を改良しようと意欲的な顧客側にいるのです。新規技術を採用すれば、技術・製品が改良できるか真剣に考えている人達ですね。一般的に技術屋は非常に保守的で、新規技術・革新的な技術の採用をためらいます。

当然です。例えば製造技術等は、生産性向上・効率化では、現在の技術の改良しかしません。もし革新的な技術を採用しようとしても、その予算・リスク等、米国と異なり日本では経営陣が簡単に採用・OKしません。新規技術を採用すれば、工場の生産工程・作業が異なってきます。歩留まりが向上しないどころか、操業中断等のリスクもあります。工場の操業中断では、簡単に何億円の売上がパーになりますし、顧客への納期厳守も危うくなります。そういった危険を現場の技術屋は冒しません。

米国では、技術責任者が外部アドバイザー等コンサルタントを雇って絶えず新規技術を探しています。良い技術があれば、トップダウンで決めます。トップが責任とリスクを負うのです。日本の様にボトムアップで、しかも上に上げない風土とは違います。日本の大企業の技術系経営陣(現場の部長クラス)は、新規技術を検討して採用するのではなく、他社の事例を横並びに見て採用するのです。こういった事も、技術の事業化を考えるファンドの人はよく理解しておかないといけないでしょう。

但し、日本でも新規技術に積極的な企業が少し存在します。例えば、昔はミシンを作っていましたが、現在は事務機器メーカであるB社等は、落ち目のミシン専業を若い人達で改革し成功したDNAがありますので、結構積極的です。その他、オーナー型企業で、オーナーが技術屋の場合は、その企業に技術がその企業マッチしておれば採用(+お金があれば)される可能性もあります。どこに最初に採用してもらうか、どこを狙って技術を売り込むか等は、実は結構重要ですね。それでお金になるかですからね。お金にならないと事業は出来ません。技術が採用されるかは、そういった革新的な人・会社に出会うかどうかという運の世界の部分も随分あるのです。

販路開拓の経験ある人についてですが技術マーケティングの出来る人という意味でしょう。米国の技術マーケティングについては、アップルのマッキントッシュ等のマーケティングを成功させたレジス・マッケンナの事などを書いた翔泳社のキャズム(ジェフリー・ムーア著)という本が多少参考になりますね。

販路開拓は、何年もかかります。簡単に採用してくれません。その間技術・製品を顧客の要望も取り入れかつ他社にも売れる汎用性も確保しながら改良しなければいけません。大変な労力・お金・時間・人材が要りますね。ファンドで、販路開拓の経験ある人を雇っても役に立ちません。人の紹介くらいしかできませんし、そんなファンドの人の口先アドバイスで技術・新製品が売れると考えること自体、技術の事業化等、汗水タラしてやったこと無い、頭だけで考える人の発想です。

長くなりますので①はこれぐらいで。②では投資対象と、投資の意思決定機関の産業革新委員会という、投資対象評価等出来る疑問の機関「産業革新委員会」について述べる予定です。

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