まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

産業革新機構について その②

2009-08-08 00:35:47 | 社会・経済

前回に引き続いて、産業革新機構についてです。今回は、投資対象と、投資の意思決定機関の産業革新委員会という、投資対象評価等出来る筈の無い集団無責任機関の「産業革新委員会」について述べます。

●投資対象:投資対象として以下の3つが書いてありましたので、それぞれについてコメントします。

     大学の特許の事業化:独立行政法人の科学技術振興機構(JST)は、大学発ベンチャー創出推進を行って来ました。「大学発ベンチャー」と言っても、実際は、大学の先生とベンチャー企業等が共同で申請して研究開発費等を受領していますので、民と学との協力による特許・技術の事業化ですね。

かなりおこなわれているようですが、全般的にはそれ程目立った成果は出ていないのではないでしょうか。大学発技術の展示会などでテーマを見ても、ちょっとRemoteというか、実用化という視点がないのが多いですね。社会に役立つ技術というのは、お客さんが興味を示し買ってくれる可能性のある技術・特許ですね。厳しい言葉で言えば、自己満足・唯我独尊では社会に貢献しませんね。

有力な特許を取得していても、それが事業化に結びつくと考える事自体、全く技術の事業化を理解していない人の発想ですね。仮にコアの特許を取得しても、事業化をするためには、関連特許、周辺特許を押さえないと事業化等出来ません。そんな周りの特許まで大学で取得している例を私はあまりしりません。大学には、そんな周辺迄開発できる人材、時間、技術、人(大学院生等)の継続性はありません。特許を元に要素技術のいくつかを開発しても、事業化の道のりは長く険しいですね。

でも成功例が無いかと言えば、少しはあります。筑波大学山海教授のロボットスーツの会社、サイバーダイン株式会社(http://www.cyberdyne.jp/index.html)ぐらいでしょうか。これも一朝一夕に出来た訳では無いですね。いろんな技術の組み合わせの成果ですね。20年間のロボット技術研究の成果です。こういう将来性の明るい会社には、多くの企業がお金をもって集まります。官民ファンド等のお世話は、大きなお世話ですね。

大学発ベンチャーは、山ほど出来ましたね。補助金を売上計上して、売上がたった等という馬鹿げた事も行われています。大学院の学生の事業化・企業化もありました。ただの事業遊びですね。かなり消えました。そんな大学院生の開発するおもちゃでどうして事業として存続・発展できるのですか?

     技術力はあるが資金の無いベンチャー企業

例えば、バイオベンチャーが一時はやりました。大学の先生が関与したベンチャーもありました。いくつかのベンチャーには金が集まりました。技術力があるのでお金が集まったわけですね。今は、これらベンチャーの話はあまり聞きません。たまに聞いても、累積損失が一杯の事業の現状の話です。

技術力がないと話になりませんが、それが売れる技術か、買ってくれる人がどれだけいるかですね。お客さんがいて始めてお金がもらえて事業として成り立つわけですね。

技術力があるかないかという視点がおかしいのです。要するに売れる技術を持っているかどうかなのですね。しかし、他にまねされない売れる技術の確立には短くて数年から10年ぐらいかかります。この産業革新機構というのは、成功するかどうかわからないのに、5年―10年ベンチャー企業を支えられるのですか?非常に疑問ですね。

ベンチャー企業が手がけられる事業分野は限られています。当然装置産業や製造装置製造等はかなり無理ですね。設計分野、ソフトウェア等の分野でしょうか。数少ない成功例として液晶=FDP関連半導体のファブレスメーカーのザインエレクトロニクスがあります。創業は91年です。時代の波に乗った、受託設計・下請けからスタートした、雌伏のときが10年弱あった、そうして花が咲いたわけですね。

技術力はあっても成功しない企業の数の方が多いですね。つまり投資をしても普通は失敗例の方が多く、しかも失敗の事例が先に出てくるという事です。失敗事例が山ほどでてきても産業革新機構は、諸々の批判・政治的圧力に耐えられるのですか?

     同業他社の特定部門を一本化して新会社設立

まあ、わかりやすい事例としては、日本で唯一のDRAMメーカであるエルピーダメモリ等ですね。NECと日立のDRAM部門の統合会社ですね。マイコン・ロジック等のシステムLSIメーカのルネサステクノロジは日立と三菱電機の合弁企業ですね。

これらは、民間が主導してやったのとエルピーダ等は経営者に恵まれてなんとかやって来られたのです。

産業革新機構が絵を書いて、一本化出来ると考えるのが間違いですね。今までに政府主導でそんな事出来ましたか。まあ、将来性の無い企業等は出来るかもしれませんが、それでは税金の無駄使いですね。

こんなこと考える前に、多くの独立行政法人の重複・類似部門を一本化して統合して欲しいですね。自分の傘下の独立行政法人の統合・整理もろくに出来ていないのにね。

    産業革新委員会

  投資の意思決定は産業革新委員会が、収益性や事業の公共性等を精査して決めるとの事。メンバーは、委員長として科学技術振興機構の吉川研究開発戦略センター長、メンバーとして新日鐵の三村会長等が委員になるとのこと。

  りっぱな人を揃えて権威を持たせて、如何にも慎重判断で決めた振りをするスタイルですね。委員会を開催して、ファンドマネジャーの作成した投資プロポーザルを読んで、差し障りの無い質問をいくつかして、何となくうまくいくかもしれない、あるいはよく分からないけどまあOKと言うのでしょうね。

  技術は、一つ隣の分野だともう分かりません。ましてやその技術・製品が将来大きく成長する等、判断の段階で分からない事が多いのです。収益性を精査と言いますが、投資プロポーザルは、ファンドマネジャーが右肩上がりの事業計画を作ります。そういった数字を並べて、如何にもそのように成長するかのように思うようになるのです。これが間違いなのです。

  投資判断は、直接ベンチャー企業の社長に会って話して、この社長なら信頼できるか、事業をやり遂げる情熱があるか、Andrew S.Groveが言うように、Only the Paranoid can surviveParanoidかどうかを自らチェックして、この人なら事業を大きくできるオーラがあるとか、そういった感触や理屈で説明出来ない事が結構重要なのです。自分の事業の事なら、しゃべり出したら半日でも、真夜中まで話し続ける人かなどですね。当事者にも会わずに、委員会室で書面だけ読んで判断するという事なら、投資判断はやめて頂きたい。

  投資を決定する委員には、自らの判断に責任を持って欲しいです。自分がYESというなら自分のお金を100万円その企業に出資して下さい。将来何倍にもになって戻ってくるかも。

 ベンチャー企業投資は、10件投資してうまくいって2―3件が成功ですね。2-4件が失敗。後は泣かず飛ばずですね。委員には、権威ある人ではなく、ベンチャー企業を興して成功した人等にやってもらいたいですね。

 


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