まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

事業譲渡の競業禁止規定について

2007-04-02 00:15:57 | 商事法務

       会社法には、事業譲渡のとき、気を付けないといけない規定と言いますか、時代遅れと言いますか、変な規定がありますね。事業の譲渡をした場合の競業の避止・禁止の規定です。

○ 会社法21(旧商法25)には、事業譲渡会社は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一市町村及び隣接市町村内においては、譲渡日から20年間同一事業を行ってはならないと定めています。

1)     同一というのも難しいですね。洋食屋さんを譲渡して、日本料理屋さんを始めた場合は、同種で同一顧客層を対象とした事業ですが、顧客が毎日洋食を食べる訳でもないですしね。対象物(商品・役務)は何か、その分母をどの様に考えるか、メーカか商社か、流通段階のどのステージか、対象顧客層は誰か等を総合的に判断して、まあ、常識的に決めると言うことでしょうか。

2)     インターネットによる事業を行っている会社はどうなるのでしょう?例えばインターネットである物を販売していた会社が事業を譲渡して、インターネットで他の物を販売し始めたときはどうなるのでしょうか。この場合同一市町村・隣接市町村ってどういう意味に解釈すれば良いのでしょうか?

3)     コンビニを数店舗保有しているオーナが1店舗譲渡したときと、大規模ショッピングセンターを譲渡したとき、同一・隣接市町村をどのように考えればよいのでしょうか?商圏の大きさが事業により全然違います。

4)    20年というのは今の時間感覚から言えば、ちょっと長すぎる、まあせいぜい5年ぐらいで良かったのではないでしょうか。せっかく現代化された会社法ですが、この規定のスピード感覚・時間の流れの感覚は明治時代の発想のように思います。

○ この規定を見て思うのは、これが「典型的に」あてはまるのは、今ではかなり限定的になったのではないかということです。例えば田舎の老舗の料亭・旅館・造り酒屋等を譲渡した場合等がその例かと思います。

○ 事業の種類にもよりますが、最近はますます地域・土地密着性が薄れています。小さなベンチャー企業でも、同じ市町村でビジネスという発想は最早ないのではないでしょうか。また地域密着性のある小売業等でも、市町村から一地方へ、地域へ、全国に、そして世界に拡大(例えばイオン等)し、さらに国境を越えたグローバル企業になります。この規定は何か、土地縛りの昔ながらの臭いがする規定ですね。

○ いずれにせよ、任意規定ですから、事業譲渡のときは、当事者間できちんと決めた方が良いですね。

○ 尚、余談ながら、会社法467条以下に事業譲渡等の規定がありますね。効力発生日の前日までに、株主総会決議により契約承認を受ければよくなりました。でも公正取引委員会への事業等の譲受けの届出制度(譲受会社が届出義務者)に該当する場合は、届出義務と相変わらず30日の待機期間を要求しています。理由があれば届出書提出と同時に出さなくてもOKですが、総会議事録の写し等も添付書類の一つとして必要ですね。

○ マーケットの把握について、地域の範囲(例えば横浜市で大規模ハンバーガーチェーンを展開している企業が事業売却したとき、地域として横浜市で考えるのか神奈川県で考えるのか、あるいは首都圏と考えるのか)と分母(ハンバーガーチェーンで考えるのか、洋風外食というくくりで考えるのか、外食というくくりで考えるのか等)は公取に行って相談しないと記入できませんし、届出受理日は、届出書を持ち込んだ提出日ではありませんので、スケジューリングは注意したいですね。


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