まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

おかしな基準日の規定

2008-06-14 23:20:00 | 商事法務

       会社法124条には、基準日の規定があります。そして4項には、おかしな規定があります。

1.株式会社は、基準日を定めて、基準日において株主名簿に記載され、又は記録されている株主(以下この条において「基準日株主」という。)をその権利を行使することができる者と定めることができる。

2.基準日を定める場合には、株式会社は、基準日株主が行使することができる権利(基準日から三箇月以内に行使するものに限る。)の内容を定めなければならない。

3.株式会社は、基準日を定めたときは、当該基準日の二週間前までに、当該基準日及び前項の規定により定めた事項を公告しなければならない。ただし、定款に当該基準日及び当該事項について定めがあるときは、この限りでない。

4.基準日株主が行使することができる権利が株主総会又は種類株主総会における議決権である場合には、株式会社は、当該基準日後に株式を取得した者の全部又は一部を当該権利を行使することができる者と定めることができる。ただし、当該株式の基準日株主の権利を害することができない。

       法務省の解説(一問一答 新・会社法)によれば、「基準日後に組織再編が行われた結果、新たに株主となった者などに議決権行使を認める機会を与えようとする実務のニーズに対応するものである。」と説明されています。更に、この場合も株主平等の原則への配慮は必要であり、例えば、同一の新株発行によって株主となった者のうち、一部の者だけを基準日株主とすることは、この原則違反になると思われると言っています。

       何故、こんな変な規定を設けたのでしょうね。実務のニーズに対応したと言っていますが、そんな勝手なニーズは無視すべきですよね。やはり、一律に行わないと混乱しますよね。「基準日株主の権利を害することが出来ない」とありますから、この規定が適用されるのは、基準日から3カ月以内に、取締役会決議で出来る株式交換(総会決議不要の簡易手続きの場合等)や第三者割当増資(公開会社の場合)等で、新規に株主になったり、持株数を増やした株主などが考えられますね。全株式譲渡制限会社の場合は、第三者割当増資は総会特別決議ですから、別に良いですけれどもね。

       3月末日を基準日として、6月に定時総会を開催する場合、「物言ううるさい株主」の議決権比率を希釈化するために、急遽取締役会決議で、取引先に割当増資をする。勿論正当な目的を装って行うわけですけどね。その取引先も、逆に第三者割当増資をして、株式相互持合をするということも考えられますね。経営陣保身の方策で、既存株主、特に反対株主の声を押さえる手段として利用できそうです。

       また、全部のみならず「一部を当該権利を行使することができる者と定めることができる。」としています。こんな規定があると、一部の株主を不平等に扱えます。私は、株主不平等と経営者保身を擁護しかねない規定だと思っています。

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