まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

株式交換と債権者保護手続

2009-05-17 21:36:50 | 商事法務

       株式交換・移転及び事業譲渡では、一般的に債権者保護手続は要求されていません。しかし、例外的に完全子会社となる会社が新株予約権付社債の債務を、完全親会社となる会社が承継する場合、その社債権者は以後完全親会社からしか弁済を受けられませんので異議を述べる権利を与えられていますね。また、親会社が子会社株主に交付する対価に、親会社株式以外の財産が含まれている場合(対価総額の5%以下の場合を除く)には、親会社の財産が減少するので、親会社の債権者は異議を述べることができます。

       799 Iでは債権者が異議を述べることができる場合を規定し③では以下のように規定しています。株式移転の場合は、810 I ③ですね。

III 株式交換をする場合において、株式交換完全子会社の株主に対して交付する金銭等が株式交換完全親株式会社の株式その他これに準ずるものとして法務省令(施行規則198条)で定めるもののみである場合以外の場合又は第七百六十八条第一項第四号ハに規定する場合(=完全親株式会社が新株予約権付社債の債務を承継する場合): 株式交換完全親株式会社の債権者

       債権者保護手続が不要の理由として、株式交換等しても当事会社が消滅するわけでもなく、また財産に変動がない、完全子会社の債権者は原則として影響を受けない。従い変動が考えられる上記の場合だけ、債権者保護手続を要求したと説明されます。

       おかしな考え方ですね。企業財務について十分な知識を持っていない人の発想ですね。親子関係ができると、親会社からの融資・保証もありますし、子会社の資金繰りがうまくいっている会社で親会社の資金繰りがうまくいっていない場合は、その逆も考えられます。親が、子どもの資金を宛にして資金を吸い上げることもあるのです。即ち、財務構造が大きく変動するケースが多いと言いますか、あるいは財務構造を変える為に行うこともあるのです。財産に変動がないので影響を受けないなどとどうして言えるのですか?親子一体であるいは親の意向で資金操作できるようになるんですね。

       ということで、やはり株式交換・移転の際にも、債権者保護手続をすべきものと思います。債権者保護手続も随分簡略化されました。原則は、官報公告&知れたる債権者には個別に債権者異議申述催告書を送付して異議の申述を催告しないといけませんが、例外の方法がありますね(昔はなかったですが)。即ち、官報に加え会社公告紙(日刊新聞)か電子公告で公告すればよくなりましたね。例外の方法を行えば良いのですね。

公告方法を、官報と規定している会社は、組織再編の総会特別決議の承認を取得する、一つ前の議案で、公告方法を、日刊新聞紙に変更しないといけませんけれども、個別催告手続よりはるかに楽ですね。個別の催告手続は大変です。債権者名簿を作成して催告書を送ります。郵便代もかかりますしね。債権者が多数いるときは、手間も大変です。勿論、これらは登記の添付書類になりますからね。また、債権者が異議をとなえることは、現実的には非常に少ないですね。

○ 現実的には、債権者にも株式交換・移転の組織再編のときには、挨拶状をおくりますし、重要な債権者にはきちっと説明しますからね。まあ、実は公告などまず見てませんね。でも制度としては、債権者保護手続(現実的に機能しているかは別として)があっても良いと思います。


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