まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

社債利用の株式移転

2009-03-15 01:50:00 | 商事法務

  株式移転とは、ある株式会社が、株主総会特別決議の承認により他の株式会社(株式移転設立完全親会社)の100%子会社(株式移転完全子会社)となる取引ですね。自社の親会社を作る手法です。簡易株式交換はありません。株式交換の場合は、既存の会社ですが、株式移転は新設親会社であり、株式移転の効力発生日に完全親会社が成立します。株式移転計画(2社以上の株式会社が共同して株式移転をする場合には、共同株式移転計画の締結)を作成して取締役会承認、株主総会承認の上、株主宛通知・公告を行い、既存子会社が株券発行会社の場合は株券提出手続き行い取り進めます。反対株主は、公正価格での株式買取請求(806)が出来ますし、買取価格に不満があるときは協議を行い、協議が調わないときは裁判所へ価格の決定の申立ができます。尚、当事会社の財産に変動がないので、債権者保護手続は要求されていません。

     通常は、子会社の株主は、その保有株式を、移転計画で定められた親会社の株式との株式交換比率に基づいて、親会社の株式と交換されて、親会社の株主となります。単純に言えば、子会社株式が、新設の完全親会社の株式と一定の比率で交換されるわけですね。条文では774②ですね。株式移転完全子会社の株主は、株式移転設立完全親会社の成立の日に、前条①VIに掲げる事項についての定めに従い、同項Vの株式の株主となる。としています。

     しかし、未だ良く分からない規定の仕方をした条文があります。773VII等です。株式移転計画で定める事項についての規定です。

- 773VII=「株式移転設立完全親会社が株式移転に際して株式移転完全子会社の株主に対してその株式に代わる当該株式移転設立完全親会社の社債等を交付するときは、当該社債等についての次に掲げる事項

  イ 当該社債等が株式移転設立完全親会社の社債(新株予約権付社債は除く)であるときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法

  ロ 当該社債等が株式移転設立完全親会社の新株予約権(新株予約権付社債は除く)であるときは、当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法

  ハ 当該社債等が株式移転設立完全親会社の新株予約権付社債であるときは、当該新株予約権付社債についてのイに規定する事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのロに規定する事項

    IIX号では、「前号に規定する場合には、株式移転完全子会社の株主に対する同号の社債等の割当てに関する事項」と規定しています。

- 774=次の各号に掲げる場合には、株式移転完全子会社の株主は、株式移転設立完全親会社の成立の日に、前条第一項第八号に掲げる事項についての定めに従い、当該各号に定める者となる。」とし、社債権者and/or新株予約権者(新株予約権付社債の場合は両方)になると定めています。

     子会社の株主に、その株式と交換に親会社の社債を一律に割り当てるんですよね。ということは、発行済株式の全部に割り当てると親会社の株主はいなくなります。社債権者だけですね。しかし、773V&IVでは「子会社の株式の株主に対して、親会社の株式を交付しなければならない」としています。即ち、株式の一定割合は、親会社株式に、残りの部分については社債ということを言いたいのでしょうが、そうなら「一部について」という規定の仕方をしてくださいということです。

  同条②1では、種類株式発行会社の種類株式について、「ある種類の株式の株主に対して株式移転設立完全親会社の株式の割当てをしないこととするときは、その旨及び当該株式の種類」と規定しています。例えば、配当優先株式の株主に対して、社債を発行する場合などですね。これならわかりますね。

     どうも規定の仕方がいまいちではないでしょうか。その他にも、株式移転でははっきりしないことがあります。

1)      もし、共同株式移転の内の1社の総会で特別決議が否決されたときは、残りの会社だけで出来るのか?これは、株式移転計画の中に、他方の会社の特別決議で否決されても、単独で株式移転を実行するという内容であれば、出来ないことはないと思いますね。問題は、そういった内容が無い場合ですね。

2)      新設親会社成立の日に、募集株式の発行が出来るのか。即ち、成立の日に第三者が株主となるように、事前に公開会社でない会社は総会特別決議ができるのか、公開会社は取締役会で(成立の日前で取締役会は存在しない段階ですが)公正発行の決議が出来るのか?新設親会社を作るだけなら、出来ないですね。新設親会社の取締役会・株主総会事項ですね。社債ではなく、親会社株式を取得する場合なら、交換比率が極端で無い限り、子会社の株主は親会社の株主となり、その株式保有比率は、1:1で無い限り端数処理される場合もありますが、基本的にはほぼ同一ですね。ですから認めても良さそうに思いますが。

3) その他、親会社の総会の決議事項(定款に規定の無いばあいの、役員報酬額等)を、株式移転の総会のときに、併せて決議できるかも問題になろうかと思います。

○ その他の新設型再編、即ち新設合併・新設分割でも同じことが言えますが、省略します。


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1 コメント

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まさるさん カロキです。よろしくお願いします。 (カロキ)
2009-08-20 18:48:05
株式移転で質問させてください。
A社とB社が新設のC社を設立します。株式移転によってC社の株主は旧A社株主と旧B社株主になりますが、A社とB社の
株主はC社になるのでしょうか。
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