まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

事業譲渡とは何か

2010-02-07 22:25:56 | 商事法務

       事業譲渡については、会社法467条等に規定されています。特別決議の必要な事業譲渡は、事業の全部、又は重要な一部の譲渡ですね。旧商法245条の営業譲渡の規定と同じです。営業譲渡人の競業の禁止については商法16条(旧商法25条)に規定されています。

       では「事業(営業)譲渡とは何か」ですが、最大判S.40.9.22民集1961600頁では、以下とされています。「商法にいう営業の譲渡と同一意義であつて、――、詳言すれば、①一定の営業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産(得意先関係等の経済的価値のある事実関係を含む。)の全部または重要な一部を譲渡し、②これによつて、譲渡会社がその財産によつて営んでいた営業的活動の全部または重要な一部を譲受人に受け継がせ、③譲渡会社がその譲渡の限度に応じ法律上当然に同法(旧商法)25条に定める競業避止業務を負う結果を伴うもの」

       学説の多数説は、上記最高裁判例と同じようですね。即ち上記の①②③を要件としています。でも最近は上記の②③を要件としない学説も有力になりつつあるようです。尚、参考までに事業譲渡の対価としては、簡単には、「譲渡資産―譲渡負債=財産+のれん(=営業権:得意先関係等の経済的価値のある事実関係等)」になりますね。

       相変わらず学説というのはピンボケが多いですね。事業譲渡で最も大切な事を忘れています。それは事業に従事している人が、譲受側に移って同一事業を行う事です。

人、物(財産)、技術(資産)、情報(知恵)を有機的一体として譲渡する訳ですね。勿論会社法ですから、従業員の事は規定しませんから分からないわけでもないですけれどもね。人が移らなければ事業譲渡にはなりません。人が移らなければ単なる事業用財産の譲渡です。財産を利用し、得意先関係を維持し、ノウハウを使うのは誰ですか?今までその事業に従事していた人でしょ。その人が継続して譲渡先で仕事に従事しないと事業譲渡はできません。

       上記の③の競業避止義務は、譲渡人・譲受人間で取り決めればいいわけですし、事業譲渡の要件ではありません。①について、一般的には事業用財産を譲渡します。しかし、別に譲渡しなくても譲渡先に全部賃貸(リース)すれば出来ますね。平成2年の時代錯誤的商法改悪で事後設立を裁判所選任検査役調査にしたのを逃れるために、有名大企業の新設大規模子会社で、不動産はなじみの鑑定士に鑑定評価をやってもらい懇意な弁護士に証明書を出してもらい、それ以外の資産は全部リース会社をからませて、土地・建物等の不動産以外の工場(膨大な建物付属設備・機械・装置類)を丸ごと全部新会社にリースしたケースがありましたね。②を要件としない学説があるようですが、その内容は知りません。「譲受人に受け継がせ」ではないですね。事業譲渡の契約ですから、譲受人が契約しますね。②は本来なら「譲受人が有機的一体となった財産を譲受」とすべきですね。

       人が譲受人側に移って今までの事業に従事するわけですね。しかし、譲受人側の給与・待遇・賞与レベル、厚生年金保険(代行返上しているか、していないかの制度の違い)、企業年金・厚生年金基金の制度の違い、退職金算定基準の引継等簡単に行きません。さようならと言って転籍ではいろいろ問題も出てきます。ですから3年間は出向等という緩和処置を行って、人を譲渡人から譲受人に移ってもらう例なども結構ありますね。

       尚、会社分割の場合は、「会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(平成12531 103号)」が出来ていますね。イギリス等では営業譲渡(Business Transfer)の場合でも、それに従事している人も譲受人側で継続雇用義務が条件になっているようです。会社法の学者先生は、事業譲渡は人が移らなければ事業譲渡ではないという基本的な事を前提に会社法の解釈をより高度なものにして欲しいですね。


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