まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

合併・株式交換比率の算定

2007-03-17 16:28:18 | M&A
○ 合併比率は不当・不公正でも、特別決議で承認されればOK。反対株主には買取請求権が付与されているからというのが判例の様ですね。(最判H5.10.5資料版商事法務116号196ページ)。しかしながら時代も変わりましたし、先の大阪製鐵と東京鋼鐵との株式交換契約について、東京鋼鐵の臨時株主総会で、いちごアセットがリードした委任状合戦で個人株主のかなりが反対にまわり、不公正な交換比率に反対を表明した株主の反乱で特別決議が通りませんでした。これからは、やはり(だいたい)公正・妥当な合併比率や株式交換比率が求められるものと思います。では主として未公開企業の場合ですが、どの様に比率を決めれば良いのでしょうか?

○ 合併比率や交換比率は、交渉事ですし、どうせ最後は政治的要素や従業員への配慮等も働いて「えいやー」ですけど、まずは事務的に比率を算出する必要があります。比率算定に当たっては当事会社の評価・株価の算定が同じ基準・基礎及び同じ時点で行われる必要があります。研究開発力や有望技術の潜在力あるいは政治的要素はその後の考慮点です。株主等への説明は、政治的要素は控えめにして、合理性を全面に出してきちんと(詳細とまでは言いませんが)理由を開示して行う必要があります。

・私は、まだ合併比率等の説明書を不勉強のため見たことがないですが、ある会社の(A社B社の合併ではなく、A社のある事業とB社のある事業を新設会社で統合する)共同分割計画書を見ましたが、「DCF法などの評価結果を総合的に判断し、交渉の結果妥当と判断し」程度の事しか書いていませんでした。比率が妥当と判断するのは、当事会社の経営者では無く最終的に株主でしょと言いたいですね。株主が判断できる判断材料が不足しています。もう少し書いて欲しいですね。

○ 同一の基礎と時点で比較しないといけないと言いましたが、案外これが簡単ではありませんね。
○ 株価の算定をどの方法で行うか。個人的には、未公開企業の場合はベンチマーク企業等の株価を参考に類似業種・類似会社比準方式がよいと考えています。一株当たり純資産・利益・配当(配当を除く場合もある)をベンチマーク企業のそれと比準します。相続税財産評価基本通達の類似業種比準方式の場合、昔は利益の比重も純資産・配当と同じでしたが、最近は利益を加重にして3倍にしていますね。利益重視の傾向ですね。

○ 他には、企業価値算出のEBITDAのmultipleの方法も良いかもしれませんが、あまりに利益だけを重視しているのが少し気になりますけれど。この場合は、評価会社のMultipleは、全部同じで例えば、10倍とした方が公平ですね。尚、完全子会社の株式交換比率算定上の評価額を、完全親会社の取得原価としなければならないことはありませんね。

○ 尚、裁判所が株式の評価をどの方式で行っているのかあまりよく知りませんが、相続税財産評価基本&個別通達を踏まえて、配当還元や類似業種で行っているのだと思います。(日経新聞2005年10/13夕刊には、寺岡精工の株式評価―追徴課税の更正処分取消訴訟―で、国税局が類似業種で785円/株が妥当としたのを、適正価格は、配当還元で75円/株と、東京地裁判決で認定した報道がされています。10倍以上違っていても、いずれも時価ということですね。株価というのは、ほんとにどうにでもなる世界?ですね)

○ DCF法はナンセンスだと思いますね。明日結婚するのに、この先ずっと独身・別会社の稼得するキャッシュフローをベースにしますし、担当者のPCのExcelで作る何の客観性も無い方法ですからね。あまりに恣意が入りすぎます。公正・妥当な比率と言う目的には不適切な方法だと思います。

○ 合併・株式交換比率では、つい純資産に基づく方法に重点をおく傾向にあります。これは、未だに旧時代的なBS重視の発想で、PLが従という考え方です。純資産・株数が同じ会社でも、利益が1.5倍―2倍違えば当然株価は違いますね。1株純資産だけを比べての比率算出は非常に不合理ですね。

○ BSでも、古い棚卸資産(例えば1年以上不稼働の在庫)を消却していない・いる会社、売掛金でも回収できないのを計上したままの会社・償却した会社、退職給付債務の計上基準の異なる会社・積み立て不足のある会社・無い会社。給与水準が異なる会社。これらによってBS・PLが大きく異なります。大会社なら何百億円も違いますね。
(まあ、その前にBS,PLの数字を信用出来るかもチェックする必要がありますがね。棚卸資産など実地棚卸と合致しない場合も多いでしょう。M&Aのdue diligenceのポイントの一つですね)

○ 土地の評価も簿価では無く同じ基準の時価ベース、まあ比較的安い価格、例えば固定資産税評価額等に従って統一する必要がありますね。バブルの時に高値掴みをした不動産の減損会計も統一する必要があります。真面目にきちんと減損している会社が馬鹿を見ないようにしないといけません。

○ 上記のような事情がありますから、実際どれだけ同じ基準で評価・算出され、合併比率・交換比率が決められているのか疑問ですね。完全に同一ベースでBS,PLを作り替えるのも大作業ですけど、ある程度はきちんとしないといけないと思います。

○ 合併に際し、合併BSを作成している例を私は知りません。株主がきちんと判断できる時価ベースの合併BS&PL等を作成し開示して欲しいと思います。更に合併比率説明書もある程度きちんと記載して欲しいですね。株主のみではなく従業員等のステークホルダーの納得性の為にもね。

コメント
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