まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

技術ベンチャーの失敗の原因

2007-03-15 00:56:27 | 企業一般

○ 米国のシリコンバレーでは、多くの企業が生まれています。また同時に、多くの企業が消えています。成功するベンチャー企業、特に大きく成長する企業は、ほんの一握りです。技術の事業化はとても困難な仕事です。基礎研究と応用研究開発との間には、大きな溝(*)があり、これはなかなか越えられませんし、その先の製品化にも更に多くのハードルがあります。また、製品化しても売れるかわかりません。普通は、殆ど売れません。多くの新製品がマーケットの支持を得ることなく消えていきます。

*この溝の事を、「死の谷」(Valley of Death)とか言われています。詳しくは、独立行政法人経済産業研究所 児玉氏のセミナー ↓をご覧下さい。

http://www.rieti.go.jp/jp/events/bbl/05020101.html

それはさておき、技術志向のベンチャー企業の失敗の原因にはどのようなものがあるのでしょうか?

1)             技術の過信:よく言われていることに技術の過信があります。優秀なエンジニアの陥りがちな失敗です。長年の研究の成果がやっと出来て、これは使えると思いがちです。特許も取れるかもしれません。しかし、画期的な薬などを除いて、仮に基本特許をとっても、殆ど役に立ちません。その周辺多くの周辺特許もとって、一群の技術の固まりがないと技術だけでは簡単に売れるものではありません。

2)製品力の弱さ:技術的にすばらしいものができても、魅力ある製品にはなりません。

完成技術と製品の間には、大きな溝がいくつもあります。製品はお客様に気に入られなければ使われません。技術的に完成度が高くても、お客様の使い勝手が悪ければ使われません。かゆいところに手が届いた製品でなければなりません。お客さんの無理難題を全て満たした製品など開発出来ませんが、キーポイントの使い勝手のところは、お客さんに満足を与えるぐらいの作り込みをしておかないと、一部のマニアのおもちゃでは製品力はありません。また、使い勝手の部分は、何も最先端技術がいるわけではありません。例えば、ソフトウェアで言えば、GUI(Graphic User Interface)等の開発は、工数はかかりますが、先端技術がいるわけではありません。

3)営業力への過信:よく営業力が弱いから製品が売れないと言われます。これはエンジニアの誤解です。営業は、お客が気に入らない製品を売る力などありません。お客が大型トラックを買いたがっているのに、軽四輪を売りに行っても買ってくれません。なじみのお客さんが一つや二つ買ってくれるかもしれませんが、それで終わりです。営業力のポイントは拡販力であり、製品に製品力が無ければ売れないのです。

最初はマニアに少し売れるようになっても、浮かれてはいけません。その後また下降します。それをより多くの人に売るためには、技術マーケティングの力が必要です。技術マーケティングでは、アップルやインテルのマーケティングを手がけて成功したレジス・マッケンナ(Regis McKenna)の手法を解説した本がでています。これは非常に参考になると思います。

「キャズム」という本です。翔泳社から翻訳本がでていましたが、絶版になったようです。図書館で借りましょう。もし、原著を読まれたい方は、「Crossing the Chasm by Geoffrey A.Mooreをアマゾンでお調べ下さい。

     大企業などに営業攻勢をかけて、担当者等が興味を示す場合があります。しかし、購入については口を濁す場合があります。この場合の深追いは禁物です。彼は、単に調査しているとか、ノウハウを盗むとか、興味本位で聞いている場合があります。

ノウハウを教える場合は、しっかりNDAを結んで、目的も明記、それ以外の利用禁止、知的財産の帰属等を定めてからにしましょう。NDAを結ぶのにためらう人がいれば、さっさと止めることです。こんな客に何ヶ月も引っ張られて、膨大なパワーポイントを作成するのは無駄です。他の顧客を捜しましょう。

4)コスト管理の甘さ:重要な開発にはそれなりに資金を投入しないといけませんが、収入も考えないで開発予算を使ってはいけません。また、取引先に言われるままにお金を払ってはいけません。知恵を出して、取引先への発注価格を徹底的にねぎりましょう。

  「けちで、せこく」が基本です。大企業でもけちでせこく、1円でも50銭でもコストダウンを計っています。

5)お客様の声を聞かない:これは最悪の対応です。お客は無理難題をいう。そんな声にいちいち答えていたら開発など出来ないしコストが著しくアップすると考えて、聞いても対応しない場合があります。勿論単なる夢のような顧客の声に耳を傾ける必要はありませんが、これを満たせば製品力がアップして、他の顧客にも売れるというレベルまでの開発は必須です。

6)戦略の実行とフレキシブルな変更がない:一定の顧客を想定して、戦略を立て顧客の開拓を開始します。顧客が少しは興味を示すが、それ以上進まない場合があります。これは可能性があります。その顧客では無く、その周辺の顧客です。但し、この場合は顧客の要望をきちんと聞いて地道な対応をすることです。戦略・ターゲット顧客の微調整をして、執念深く取り組みましょう。

・ 顧客が、全く興味を示さない場合があります。同じ分野の複数の顧客にコンタクトをしても、しっかりした反応が無い場合があります。この場合はすっぱり戦略の転換が必要です。一度建てた戦略に固執は禁物です。会社が左前になる前に、戦略の転換をしましょう。

7)社長の会社の私物化や適格性欠如:会社は従業員のみんなの力を総合的に発揮するところです。創業者等の才覚で伸びる場合も多いですが、著しい公私混同・会社の私物化を図る経営者がいる場合は、その会社の将来性はありません。従業員も、経営者を見習います。モラルも低下します。陰で悪いことをする可能性もあります。この場合は、転職なども考えないと行けませんね。

ベンチャーキャピタル(VC)等から金を調達すると、現在の事業がいまいちなので、新規の開発等を行う場合があります。特に日本のVCは、金の使途とか管理が甘いですから、経営者もそれにつけ込んで、金の使い方が荒くなる場合があります。これは会社凋落の兆候ですので注意しましょう。

Crossing the Chasm: Marketing and Selling High-Tech Products to Mainstream Customers (Harper Business Essentials)Crossing the Chasm: Marketing and Selling High-Tech Products to Mainstream Customers (Harper Business Essentials)
価格:¥ 2,176(税込)
発売日:2002-08-20

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