まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

資本コストWACCの誤った考え方

2008-01-02 20:48:28 | 企業投資

     負債と株式の両方を合わせた全社の資金調達コスト即ち資本コストを求める考え方にWACC (Weighted Average Cost of Capital:ワック:加重平均資本コスト)と言う考え方が有ります。米国の企業財務では一般的な考え方で、米国等でMBAを取られた人が解説本等を出されて日本でも一般的な考え方になってきました。また、最近は、さらにはやりのEVA(Economic Value Added)でも、WACCが以下の様に使用されますね。

EVA = 投下資本x(ROIC-WACC:EVAスプレッド) 

ROIC=Return on Invested Capital (投下資本利益率)=税引後営業利益/投下資本

税引後営業利益=営業利益―みなし法人税(営業利益x実効税率)=営業利益(1-実効税率)

     WACC

WACC=D/(D+E)x(1-Tc)x負債コスト+E/(D+E)x株主資本コスト

D=負債、E=株主資本、Tc=実効税率

・ 負債コスト:これから借り入れる予定の負債のコスト(金利)ですが、過去の有利子負債コストを代用するのが一般的。

     資本コスト:株主がその企業に求める期待収益率。DDM(配当割引モデル)という方法もありますが、CAPM(資本資産評価モデル)を使用して算出するのが一般的。

計算式:r = rf + βx(rM ? rf)

株式の期待収益率=無リスクレート + ベータx(株式市場全体の期待収益率―無リスクレート)

     WACCの誤った考え方

計算式というものは、同一の基礎・前提で始めて成り立つものですが、負債コストと株主資本コストでは前提が異なります。

【負債コスト】

     負債は債権・債務です。返済は法律上の義務です。

     金利が5%なら、5%の金利・収益を得ます。

     期待収益ではありません。支払不能にならない限り、確実に収益を得られます。

     現実のキャッシュフローです。返済期日に、金利・元本が返ってきます。

【株主資本コスト】

     株主資本は、理論上は株主の持分ですが、これは清算しない限り配分されません。日本では剰余金分配規制があります。資本金や準備金は分配出来ません。(米国では、少し考え方が違います。*)

     株主のキャッシュフローの視点で言えば、株式取得金額が、キャッシュアウトですね。増資引受以外は、株式市場で株式を購入しますね。キャッシュイン、キャピタルゲインは、市場で売却して得ますね。キャッシュインとアウトの相手は、配当を除けば会社ではありませんね。

    

     配当は、経営陣の裁量・判断が働きます。株主の期待通りに配当する義務はありません。

     キャピタルゲインは、会社と株主の関係ではありませんので考慮できません。しかし、 業績を伸ばせば株価は上昇する可能性があります。例えば、株主資本コストを15%とすると、経営陣が15%利益を増やせば、株価は上昇するかもしれませんが、15%上昇するとは限りません。それ以上かもそれ以下かもしれません。株価は、会社の業績のみによって決まるものではありません。何パーセント上昇するか、経営陣のコントロール外です。利益が増えなくとも、画期的技術の発明、事業化の公表などでも株価は上昇します。また利益を増やしても、金融市場・政治状況等が原因で株価が下がるときもあります。

* 「日米の剰余金配当の考え方」下記↓ご参照

http://masaru320.mo-blog.jp/business/2007/10/post_819a.html

○ 最近日本でも、米国の企業財務の考え方を請け売りする人が増えています。しかし、Warren Buffettは、「バフェットからの手紙」Lawrence A Cunningham著 増沢浩一監訳 出版Pan Rolling 第8刷 第2章 コーポレット・ファイナンスと投資 Page 136)で、「企業の所有者、すなわち株主たちにとって、学者たちのリスクのとらえ方は全くもって的外れで、ばかばかしいほどです」と言っています。こんな馬鹿な資本コストの考え方が何の役に立つのでしょう。企業経営者に数字の屁理屈を述べてもっと儲けろと言っているだけですね。

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成功するベンチャー企業投資

2007-08-03 00:21:20 | 企業投資

     投資には、大きく分けて自ら事業を行う事業投資と、ベンチャーキャピタル(VC)がキャピタルゲインを狙って投資するVC投資がありますね。今回は、VCのファイナンシャル投資家の視点に立って、成功するベンチャー企業投資のポイント&投資をしようと意思決定する要素は何か、思うところを書いてみましょう。VC投資については、最近いくつか本が出ているようですね。私は殆ど読んだことがありません。理由は簡単です。読む必要がないからです。まあ、読んだからといって成功するVC投資ができる訳でもないと思いますね。

○ 成功するVC投資のポイントは、いろいろあると思います。それぞれのVCで過去の経験を踏まえたチェックリストやノウハウマニュアル等を作成していると思います。しかし、成功の確率はどれぐらいでしょうか?それによって、変な投資は多少防げるかもしれませんが、それほど成功確率が上昇しているようには見えないですね。

  ポートフォリオですから、まあ10件投資して、2件上場すれば成功でしょうね。3件上場すれば大成功ですね。

-  2件上場すれば、十分なリターンが得られると思います。投資全体の内部収益率(IRR)10%とか15%ぐらいになるでしょう。即ち、例えば、10件で10億円投資して、2-3件が駄目で全損、2-3件は低迷でリビングデッド(Living Dead)、2-3件が泣かず飛ばずと言う状況、即ち次回のファンドで承継しようか、他に転売しようかという状況、そして2-3件が晴れて成功ですね。この2-3件の成功案件で、投資総額の10億円の内部収益率が10-15%になるということですね。

     ベンチャー投資のポイントは以下ぐらいではないかと思います。

     大きな経済・景気のトレンドに乗る。即ち、今のような景気の良いときに投資をするのではなくて、景気が悪いときに投資をすることですね。即ち、ITバブルがはじけた、2001-04年ぐらいに投資をして、今年ぐらいにIPOを目指す会社に投資をすることですね。不況時にそれなり頑張ってる会社は筋肉質でしぶといですからね。今は、種々の要因があって新興市場は低迷していますが、例えば昨年上場したmixi等は、上場時の時価総額が2000億円にもなりました。Lock-upとか、小型株、流動性不足とかいろいろありますから、最高値のときに売却できるものでもないですし、IPO時の売り出しを逃せば収益がすぐに実現できるかなかなか難しいですけれども、投資の方は不景気のときに底堅くしましょうということですね。

(最近は、投資資金が後ろからどんどん押し寄せてきて、ともかく投資しないとというファンドもあるかもしれませんが、投資を暫く休むということも重要ですね

     経営者は信用出来るか・きちんと働いているか、その器量の大きさはどれぐらいかですね。例えば、資料提出をお願いしたときに、きちんと期限通り出してくれるか。言ったことをきちんと守るか。こつこつ情熱を持って働いているかをきちんと見ることですね。また人物の大きさ器量は、その会社が大きくなるかのバロメータにもなるのではと思います。VCからお金が入ったら、急に自分の金のように新規事業とかお金の使い方を変える人がいますが、こういう経営者の会社には、お金を入れてはいけないですね。入れてからでは遅すぎます。よく経営者を見ないといけません。

     会社の従業員は活気を持って働いているか。伸びる予感を肌で感じる。投資を検討している会社には、何回も行って、従業員がどの様に働いているか。明るいか?積極的か。

経営者とどの様に接しているか等を実感として感じる事ですね。それによってこの会社は伸びると感じ事も出来れば、ちょっとそこまで行かないのではと感じることもありますね。

勿論実務的には、事業内容・財務諸表・税務申告書を見せてもらったり、取引先へのインタビュー、業界動向の調査分析等も必要ですけれども、こういった事務的な事もさることながら、結構重要なポイントは、上記の様な点だと思います。

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外国VCの投資手法-CB&種類株

2007-03-11 09:28:01 | 企業投資

     日本のVC等の日本のベンチャー企業への投資を見ていると、ベンチャー企業側の事情もあると思いますが、まだまだ普通株式の取得が多いですね。さすがに最近は、同時に投資契約書等を締結して株主の権利などを保持しているケースが増えてきましたが、昔は投資契約もろくに結ばずにともかく株式を取得して、あとは経営者任せ、運任せ、景気任せ、上場してくれたらラッキーとか、いつの間にか破綻してたら、はずれとか、まあほったらかしでいい加減というか、ベンチャー企業の経営者側から見れば、いったんお金を引き出せば、日本のVCは「ちょろい」ちょっと脅せば、まあサラリーマンがやっているから楽賃と言うことでしようね。まあ、これは仕方が無いですね。体を張って、自分の個人財産も賭けて事業をされていますから、一方VCのお金は自分のお金でも無いですし、投資が失敗しても生活は安泰ですし、真剣勝負の事業家に、竹刀をもって「こて」とか言っても通じません。

私も、人生を賭けて仕事するつもりもないです。ローリスク・ローリターンの人生です。(だいぶ話が横にそれました)

     外国VCではそうは行きませんね。一般的にはベンチャー企業経営者に、4年とか5年以内に上場を約束させて、それを資本注入のときに、転換社債や、優先株等により強制でも無いですけど、プレッシャーを与える条文で縛る場合が普通です。勿論、うまく継続的成長が出来ない場合は、これもただの空約束になりますけれども。また、性悪説でも無いですけれども、事細かに契約で規定します(日本のように法令が整っていれば良いのですが、判例法の国なのでというのも理由ですが)。経営者もずっと経営しますとか。ずっと株式を保有しますとかの契約書と同時にいろんな誓約書を出さないといけません。そのかわりVCは汗もかきます。一緒に経営も考えますし、手助けもします。お金だけではありません。

○ 簡単な例として、CBを使った例と、優先株を使った例の条件概要をご紹介しましょう。

① CB(例:US$4 million Convertible Loan Facility

・ Loanですから、金利が生じますがCBですから低金利ですね。

     上場時(直前の上場が確定したとき)に、CBですから、これを普通株に転換します。

     転換価格が問題ですね。額面株の額面(米国の様に、US$0.01では駄目で、台湾とかタイ等の様にNT$10.00とかBahts10とかの場合)、例えば1/4US1m相当現地通貨だけを額面で転換を認めるというのもあるし、US$4m相当現地通貨額とも転換を認める例もありますが、転換価格の設定をどれぐらいにするかですね。

     もし、5年以内に上場しなければ、例えば、10%のイールドを保証して、Loanを返済する。→この部分が経営者に対する圧力ですね。

     Loanですから、優先劣後も決めます。担保付きにすれば、かなりの圧力になりますが、経営者の(再起を潰す)自宅不動産というのは外国ではまず無いでしょう。経営者の保有株式というのはありますが。

        優先株・償還株(取得請求権付株式)

     議決権は、1株1議決権で普通株と同じ。

     配当は、普通株と同じ。

    優先株の優先は、残余財産分配権のみで、普通株に優先する。

     5年以上経過した場合(5年内に上場しない場合)には取得請求権が効力を有する。この場合は、投資金額に 10 p.a (複利)で計算した配当を付して償還する。

     総会は、普通株の総会と同じで種類株のみの総会は、残余財産分配のときに限り開催

どちらが良いでしょうか?ケースバイケースですね。優先株の償還の配当は、あくまで配当可能の剰余金が無いと出来ませんね。 CBの金利は利益剰余金と関係なく払わないといけないですが。まあ、他にもいろんなバリエーションがありますが、典型的にはCBを利用するケースと優先株&償還株を利用するケースが多いのではないでしょうか。

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株式と社債の進化

2007-02-22 00:52:28 | 企業投資

株式と社債の違いは一般的に以下と言われていますね。

     株式は一般に償還がなく、株主は投下資本を回収出来ない、これに対して社債は、一般に期限が来れば元本が償還される。

     株主は、その会社が利益を上げられなかったら配当が受けられないが、社債は利益の有無によらず約定の利息が支払われる。

     株式は、払込額が資本となるが、社債は負債となる。

     社債権者は、担保の有無にもよるが、債権者であり、株主に先立って支払い・返済を受けられるが、株主はその後の残余財産の分配を受けるもので、債権者に劣後する。

     株主は、会社の所有者であり総会で議決権を行使して重要な意思決定に参画するが、社債権者はその利害に関係する重要事項のみしか決議出来ない。

上記について、

     について、逆転させたものとして、株式については償還株式(取得請求権付株式&取得条項付株式)があり、社債については永久債(会社法で社債は元本を償還するものとされているため、永久には出来ず、会社の解散時に償還するとする)があります。

     については、利率・利息支払及び期限等を定めないといけないとの規定があります。例えば、ゼロ金利時代がありましたが、利率0.0%というのは可能でしょうか?よくわかりません。仮に無理なら、例えば0.1%ぐらいにしておき、利益配当にあずかる社債(利益参加社債)や利益配当だけを受ける社債を発行すれば、株式と同じになります。ユーロ市場ではこういった社債がありますね。

     については、永久債は会計上負債でしょうか?よくわかりません。償還しない社債を負債というのもおかしな気がします。勿論会社の解散のときは償還しないといけませんが、株主の場合は財産の分配という言葉になりますが。例えば、銀行の健全性を確保するためにBISの自己資本比率規制がありますね。これでは、永久劣後債と期限付き劣後債をTier II、短期劣後債務をTier IIIの自己資本と考えていまね。

     について、考え方はそうなんでしょうけど、無担保社債権者等、会社が倒産すれば大抵のケース殆ど戻ってきませんね。

     について、最近株式特に上場株式を意識して、所有ではなく、債権的な概念で説明しようとする学説があるようです。そうですね、例えば5000万分の1の持分だとか言っても、なんじゃそれ。何の力もない。議決権も行使しない。優先株で議決権の無いのもある。

今までは転換社債が、社債から株式に転換する架け橋で一方通行でしたが、上の様に、株式と社債の間の溝がますます無くなりそうと言いますか、実質的に同じものが作れるようになり、双方通行に進化してきたように思います。

会社法は償還株式から社債への道も開きました。でも社債への転換が可能な償還株式は、多分まだ日本の会社で導入した企業はないのではないでしょうか。

どういった場合に、永久債や償還株式の必要性・需要が考えられるのでしょう?(会社型投資ファンド等を除く)

償還株式についていえば、横並び意識の強い日本企業が、バブル時代こぞってエクイティーファイナンスを行いました。その後90年代末、過大資本を特別法まで作って株式消却を行い減らしました。そのときに、社債への変換型の償還株式があれば使えたかもしれません。しかし、80年代末に10年後の日本の状況を予測し、それに備えた人もいなかったでしょうからね。どういった場合に備えて発行すれば役立つのか、実は私にはよく分かりません。どなたかこの辺のアイデアをお持ちの方がおられれば、教えて頂ければ有り難いです。

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合弁契約の精神・目標

2007-02-13 00:20:06 | 企業投資

それぞれの企業がリソースを出し合って合弁会社を設立して事業を行うケースが内外で多く見られます。そのとき合弁事業に関する契約を締結します。この契約には設立する新会社の内容や役員の指名権、株式譲渡等が規定されて、それに従って会社を設立します。しかし、大半のケースで重要な点が抜けていると思います。それは、新会社設立の精神です。即ち

     経営の基本原則と

     ビジョン・目標です。

契約書の前文のところに1行ぐらい書いている合弁会社設立契約は見たことがありますが、新会社のビジョンと目標を明確に規定した契約書は、あまり見たことがありません。

これは勿論契約条項ではありません。また、拘束力も無いケースも多いと思います。しかし、合弁契約は新会社の憲法ですから、きちんと記載して当事者間で意思と目標の一致を確認する事が重要ですね。本文に条文として記載する必要もないかもしれません。日本国憲法のように前文に記載しても良いと思います。

会社設立の伺いに、各社で会社設立の狙いとか目標数字を記載します。合弁当事者間で、だいたい一致するときもあるかもしれません。しかし、新会社が何年も経ち担当者も変われば、双方の意思の一致した点など忘れます。当事者で共有した目標は何だったのか、何を目指したのかは両者の合意文書でハッキリさせて置くべきだと思います。もし状況が違って目標を変更する必要があれば、「憲法改正」をすれば良いですね。

「今の合弁契約は、仏作って魂入れず」が多いです。

会社が設立されれば合弁契約の内容はすぐに忘れるケースもあります。これは法務部等に任せて、会社を作るためのみの契約になっているからです。合弁会社の経営がうまく行かなくなったときとか、株式を譲渡するとき、清算するときだけ、合弁契約をひっぱりだしてきて、「こんなこと書いてあったの」とかになります。

私は、合弁会社を何社か設立してその経営にも従事しましたが、合弁契約には、新会社の経営・運営の基本原則を入れました。これは、当事者の目標共有と、独立性をある程度確保して株主からの影響度を軽くするためでした。

株主より、ぐじゃぐじゃ規定を作れとか、毎月レポートしろとか、事業の協力もろくにせずに管理的側面だけ、むやみと干渉するケースもまま見られます。株主からの支援もうまく行き、株主との協業で、相互補完・相乗効果を生むケースも多いとは思いますが、必ずしもそうでは無いケースも多々あると思います。また最近の内部統制で益々手足が縛られるケースもあると思います。

「事業の進歩発展に最も害するものは、青年の過失ではなく、老人の跋扈である」と昔ある人がおっしゃって総理事を退任されました。老人の跋扈を株主・親会社の干渉と置き換えても良いようなケースもありますね。

株主を含む当事者は、合弁の精神を基本として、合弁会社の事業・経営拡大に尽力すべきと思います。今の合弁契約には精神と、その精神を具体化したビジョン・目標が足りないと思います。

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企業価値・投資収益評価-DCF法について

2007-02-06 00:41:52 | 企業投資

企業が新規事業等を始めるときには、事業計画を立て、B/S,P/L,CashFlowを作成し、投資収益(Return on Investment=ROI)を計算します。新規に事業を計画するときは、勿論きちんと計画を立てないといけませんので、ナンセンスとは言いませんが、私は数字などには興味はありません。定性評価と事情(事業を推進する本人がやる気で作成しているか、上から数字作れと言われ単に作っただけなのか等)と勘に基づき判断します。

まあ、ROIの数字というのは、それを作成した人の現時点での意思表示ということでしょう。

ROIの計算には、いろんな考え方がありますが、最近米国のCorporate Financeの強い?悪い?影響を受けて、Present Valueの時間価値を勘案したDCF(Discounted Cash Flow)で、IRR(Internal Rate of Return)を算出するという考え方が日本でもかなり用いられるようになりました。予算に限りある2つの案件があれば、IRRの高い方を選択するというのが教科書の教えですが、そんなの空論じゃないのというのが私の考えです。

○ 伺いに記載されたROI-IRRが、その通り実現する事は有り得ないですよね。有り得ない事を前提に意思決定するのは、意思決定能力のない人の意思決定方法ですね。意思決定の本質を見ようとしない者が好む自己欺瞞の方法です。これは宝くじと似ています。一億円当たれば良いなと強く思っている内に、ひょっとしたら当たるかもしれないと思い、これが高じるとうまく行くかもしれないと思いこんでしまうという事ですね。宝くじの例は極論すぎますがね。事業検討にのめり込むと、儲かる気になって、客観的に突き放して冷静に分析する目が曇るときがあります。ROIは自分を、また周りの人を、儲かりそうな気にさせる道具になりますね。

     DCF法では、企業価値算出の際に5-10年間の事業計画(Projection)をたてFCF(Free Cash Flow)を割引率で現在価値にして、かつそれに割引率で現在価値にしたTerminal Value(TV)を加えます。

     TVの算出では、考え方の矛盾するフローの収益では無い事業計画最終年度のBSの純資産を割引率で割引現在価値に持ってきたり、またはフローの収益を使うときは現実にはあり得ない一定のFCF・成長率(0成長でもOK)が永久に続く等と仮定します。事業計画の年数、TVの設定の仕方、割引率、成長率等の数字がくせ者で、これらの前提の置き方次第で、「当事者の判断で」自由に数字が作れる算出方法ですね。

     事業計画を作成するときには、通常は右肩上がりの計画を作成します。5-10年も右肩上がりでコンスタントに成長する企業は、現実には殆どありません。

実際5-10年の事業計画を立てている会社が世の中にどれだけありますかね(例外:資源開発案件・会社)?10年後純利益100億円等とぶち上げている会社はあるかもしれませんが、これは具体的な事業計画ではありませんね。事業計画を作成するときに、まあせいぜい2-3年は真面目に計画しますが、その後は適当に右上がりにするだけですね。5-10年先など誰にもわかりません。

どうなるかわからない510年間の将来収益を作成者の判断で作り上げ、大半の企業で実現しない右肩上がりの、事実に基づかない仮想計算モデルを作成して、これがこの事業計画とか企業の現在価値だなどとしていますね。何の客観性も無い「数字遊び」のDCFですね。私はDCF法に違和感を覚えます。

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