まりっぺのお気楽読書

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『すばらしい新世界』“世界はひとつ” への簡単ではない道のり

2018-03-19 22:24:23 | イギリス・アイルランドの作家
BRAVE NEW WORLD 
1932年 オルダス・ハクスリー

オルダス・ハクスリーは、短篇を2篇ほど読んだことがあったみたいですが
印象に残っているのは『ジョコンダの微笑み』というお話しだけでした。

で、裏表紙のあらすじを読んで「な、なんて面白そうな!」と思い手にした
『すばらしい新世界』なのでしたが…

すごく興味深い内容ではありましたが、わたしはちょっと好きになれませんでした。
ざっと書いてみるね。

地球は、九年戦争を終えたあと、戦争を放棄し平和に共生する道を選びました。
もはや “ 国 ” という概念はないみたいで、大陸や都市は世界の中の一都市という
認識になっているみたいです。
本当にそうなっていたら素晴らしいことですね!

人々は世の中になんの不満も抱いておらず、仕事の後はデートや映画
スポーツを楽しみ、孤独や哀しみを感じる暇はありません。
進歩した技術のおかげでほとんどの病気は絶滅し、若々しいまま年老いていきます。
夢のような世界ですね! 老けないなんて…

しかしその実態は…

主な舞台は、ロンドン孵化条件づけセンターというところなんですが
このセンターは世界各地にあるようです。

そこで行われているのは “ 人間の製造 ” って感じかな?
子供は身ごもるものではなく、受精卵の段階で上流のアルファ・ベータ
下層のガンマ・デルタ・イプシロンに選別され、ビンに入れられ
各々の階級にふさわしい薬品や刺激を与えられて育てられます。
それだけでなく、仕事にあう体型や体力に仕上げられます。

生まれた後は、あかちゃんの時から睡眠療法で各々の階級にピッタリの
例えば「ガンマでよかった、ベータのように勉強しなくて良いから…」というような
スローガンをたたきこまれます。

家庭や両親というものは存在せず、おぞましく卑猥なものと考えられています。
でも寂しくないのは “ みんなはみんなのもの ” というスローガンのもと
ひとりの人ではなく、たーくさんの人と付き合うから…
一部の方々には嬉しい世界かもしれませんね。

だから、人々は自分の境遇に満足しきっているわけですね。
ちょっと悩みがあれば、ソーマというものを飲めば楽しい気分になれるというわけで
だーれも世の中に疑問を感じず生きています。
だから争いもおこらず、世界はアッパラパー的に平和を謳歌しているのね。

ここまでで長くなっちゃったのであらすじは省くんだけど
やはり「なんかおかしいかも…」と思う人はいるわけです。

間違ってビンの中にアルコールを入れられてしまったと噂される
アルファプラスらしからぬ(背が低くハンサムでない)容姿のバーナード・マルクス

ものすごくアルファプラスらしいモテモテ男のヘルムホルツ・ワトソン

バーナードが “ 野人保護区 ” から連れて来た、文明人の息子らしいジョン

この3人がなにかしでかしてくれるかと思ったんだけどな…
でも皆が幸福な世界なら変えなくてもよいのか…? 判断がつきかねるラストでした。

それにしても、世界から争いをなくし誰もが幸せだ!と思う世界にするためには
こんなにも手間ひまかけなきゃならんのだろうか?

以前、誰だっけ? グレアム・グリーン
『最後の言葉』という短篇を読んで、やはり “ 世界はひとつ ” は
何かの犠牲の上にしか成り立たないのではないかと思った記憶があります。

お互いの精神的安定のために、せめて三軒隣りの国ぐらいまでは仲良くしたいものですけど…

わたしは読み終わって混乱してますが…
読んでみたいな!という方は下の画像をクリックしてね




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