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1937年 谷崎 潤一郎
主要な登場人物は4人ですが、自らは労せずしてそんな人間どもを翻弄する
猫のリリーの存在感が際立つ物語です。
コレットの『牝猫』 は猫に愛情を注ぐ夫に妻が嫉妬するというストーリーでしたが
リリーの場合は嫉妬した女をも虜にしてしまうというしたたかぶりです。
ある日庄造の妻福子宛てに、追い出された前妻品子から手紙がきます。
寂しいので庄造が可愛がっている猫のリリーを譲ってほしいと書いてありました。
他にも、庄造は妻よりも猫の方が可愛いに違いないといったようなことが…
バカバカしいと思いながらリリーとばかり戯れる庄造を見ていた福子は
ムカついて、リリーを品子にあげてしまうように庄造にせまりました。
庄造をおびき寄せるためにリリーを欲しがったのだ、と福子が気付いたのは
リリーをあげてしまった後でした。
品子は以前リリーをいじめていたのでなついてくれるかどうか不安でしたが
庄造がいつかやってくるかも…という期待を抱いて一生懸命世話をします。
リリーが庄造に甘えまくる様子や、生きるために品子に媚びる有様などは
猫さまを飼っている方ならご存知でしょうが
「うわべだけでもいいの! 甘えてちょうだい! かつぶしあげるから~っ
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って言いたくなる愛らしさです。
リリーが子猫を生むシーンでは「なんだか急にからだの具合が変なのです」
「どうぞそこにいてください」なんて瞳で訴えかけちゃったりして
村上春樹氏のミューズもビックリの男性を悩ますおねだりぶりです。
庄造は案の定リリーに会いに行ってしまって、それが福子にバレちゃいます。
物語はこれから佳境というところで唐突に終わってしまうのですが
いったい男と女と猫はどうなるのか妄想が膨らみます。
私はどんなかたちであれ品子の道が開ければいいなぁ…なんて思っています。