まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
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『ろまん燈籠』謎が深まる太宰治像

2011-05-16 00:45:51 | 日本の作家

太宰 治

むかーし凝ったんだけどすっかり忘れてしまった太宰治を読み返し始めて
『ヴィヨンの妻』『グッド・バイ』『女生徒』に続く4冊目です。

私は作家像を深追いしない読者だからあまり気にはならないんですけど
太宰治ってよく分かんない人だわ…と改めて思いました。

呑気な厭世家なのかと思ったら、そこそこ愛国心溢れる人みたいにも思えるし
人嫌いかと思えばなんだか面倒見が良くて慕う人は多いみたいだし
人生の些事に頓着してないかと思いきや、心配性だし… 多くの顔を持つ人ですね。

でも、太宰治論は方々で出尽くしているのであえて私が考えるまでもないし
考えてたら単純にお話しを楽しめないので気にしない!

これは短篇集というより随筆集なんですかね?
16篇収められているのですが、第一人称で書いてあるものが多く
ほぼご自分のことを語っていらっしゃるみたいです。
『服装について』とか『小さいアルバム』などはかなりの自虐ネタです。

好きだったお話しをあげてみます。

『ろまん燈籠(1940年)』
洋画家入江新之助一家の三男二女はロマンス好きの読書家です。
五人は退屈すると連作で物語など書いたりします。
ある正月、末っ子の三男から物語を書き始めて連作を開始しました。
題材は『塔の上のラプンツェル』からの拝借です。

アニメ映画『塔の上のラプンツェル』は現在公開中みたいですが
五人が書いた物語は、だんだん五里霧中状態に陥っていって愉快です。
性格が全く違う人が連作を書くのって大変ですね。

『禁酒の心(1943年)』
配給酒の瓶に目盛りをつけて飲んだりウィスキィを薄めたり、他人に飲ませないために
居留守を使ったり…酒飲みは度し難いので禁酒をしようと思います。
戦時下になってから酒の店に行くと主人におべっかを使って無視されたり
酒を一杯多く飲むために、いらないつまみまで頼む始末。

ものすごく自嘲的な中にも哀しさが滲み出た一篇です。
「わかっちゃいるのに…」ってとこですよね。
太宰治がこのように公言しておいて禁酒したかどうかは不明です。

『佳日(1944年)』
友人に代わって北京で暮らす大隅君の結婚を世話することになってしまいました。
五年ぶりに帰って来た大隅君は、偉そうに日本で暮らす我々を呑気だと叱責します。
彼の話しから相手宅で大変な粗相をしてしまったことに気づき怒りが込み上げました。
大隅君を一人で相手宅に行かせ、恩師瀬川先生のお宅へ愚痴を言いにに行きます。

なんだかこの一篇を読んでいるだけで、太宰治へのイメージが大幅に変わるのよ。
すごいお人好しだし奥ゆかしい…恩師への尊敬も忘れず仁義にもかたい…ナイスガイです。
『人間失格』の内容と作者がリンクするエピソードが、大々的に世に出たことが
かなりマイナス(プラスなのか?)に作用している気がします。

若くして太宰治を読んでおきながら、な~んにも憂うことがなかった私…
もっと「人生とはなんぞや?」なんて考えてたら違う人生があったかもしれないのに。
ま、いいけど…

まだ何冊か太宰治を持ってるんですよ。
さらに読み続けて勝手に作家像を想像しようと思ってます。

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