まりっぺのお気楽読書

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『三色すみれ・水に沈む』清き乙女のための小説

2009-09-30 01:26:43 | ドイツの作家
VIOLA TRICOLOR.AQUIS SUBMERSUS 
テオドール・シュトルム

シュトルムも岩波文庫『大学時代・広場のほとり』新潮文庫『みずうみ』 に続き
3冊目ですが、内容はともかく文章は美しいなぁ、やっぱり。
収められているのは2篇です。

『三色すみれ(Viola Tricolor)/1873年』
幼い娘ネージーがいるルードルフへ後妻として嫁いだ若いイーネスは
ネージーが死んだ母親の影を引きずっていることにショックを受けました。
それどころかルードルフまでが前の妻の肖像画を見つめたりして…
イーネスは自分の居場所がないと嘆きます。

そりゃあ仕方がないでしょうよ、と思ってしまいますが
若き後妻としてはなんとか自分の立場を確立したいものかもしれませんね。
会社でも、あまりにも輝かしい実績がある前任者の後がまというのは
ちょっとつらいもの… 頑張りすぎがかえってマイナスになっちゃったりしてね。

『水に沈む(Aquis Submersus)/1875年』
少年の頃友人宅の教会で見かけて気になっていた牧師と溺死した子供の肖像画。
長い時を経て、田舎の下宿屋でその絵と画家の覚え書きが見つかりました。
画家ヨハネスは恩人の娘カタリーナに恋心を抱いていましたが
彼女は横暴な兄ヴルフから大嫌いな男との結婚をせまられていました。
ヨハネスとカタリーナは密かに結ばれ、ヴルフから逃げようとしたのですが…

今まで読んだシュトルムの中では情熱的でドラマティックな物語でした。
物語の題材としてはありがちなものがちりばめられているのですが
ベテランならではの落ち着いた筆運びで安心して読めました。
新鮮さはありませんけどね…

シュトルムはリアリズム作家のひとりに数えられるそうなのですが
私はものすごくロマンティストだったんじゃないかと思っています。
女性の方が見落としがちなセンチメンタリズムと
夢のようにメロドラマティックな恋心の描き方。
これは男性ならではの、愛し合う男女の偶像なのではないかと…

シュトルムには、木陰で恋物語を胸にため息をつき涙を浮かべるお嬢さんが似合うわ。
ボンネットと白い衿のドレスが似合うって感じね。
修道院系の女学校を出たばかりで、使用人の息子なんかにときめいたりしているとGood!

あぁ、美しい恋物語を読んでハラハラと涙が流せたあの頃にもどりたいわ

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