まりっぺのお気楽読書

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『みずうみ』恋愛小説スーパーライト

2009-03-11 22:16:22 | ドイツの作家

テオドール・シュトルム

岩波文庫の『大学時代・広場のほとり』を読んだ時もちょっと感じたのですが
シュトルムは失恋や悲恋をきれいにきれいに書いていて、愛憎とか修羅場という
恋愛にはつきものの醜い部分は黙殺しているのですよね~
だから、ロマンティックな印象はあるのだけれども、いろいろな経験をしてきた
いい大人が書くものにしてはセンチメンタルすぎるかな…と思ったりしています。

2冊まとめて読んでみると、心変わりをしてしまったり、心を惑わされた女性を
献身的に想い続ける男性の物語ばかりなのですが
なんだか自己満足というか、自己陶酔しているような感じです。
物語に登場する男性の方々が、一途なわりには女性をほったらかしにしてるんですよね…
ご紹介します。

『みずうみ(Immensee)/1849年』
厳格な老人が夕闇の部屋で思い出す、幼い頃に育んだ愛と別れ。
ラインハルトとエリーザベトは一緒に育ち、大きくなったら結婚しようと約束していました。
けれどもラインハルトが勉学のため故郷を離れている間に
エリーザベトはラインハルトの友人で裕福なエーリヒと結婚してしまいます。

ラインハルトは結局独り身のまま老人になってしまったようなのですが
学生時代に一度帰省して、エーリヒがエリーザベトに想いを寄せているらしいところを
目にしているんですよ。
だけどその後2年間故郷に帰っていないばかりか手紙も出していないのです。
それで母親の手紙でふたりの結婚を知ったという…本当に恋してたの?
その後、エーリヒに招かれてホイホイ訪ねて行くんですけど
そこでエリーザベトの本当の気持ちを知ってしまうのでした。

『ヴェローニカ(Veronika)/1861年』
人望ある弁護士の妻ヴェローニカは、夫のいとこが執拗な視線を向けてくることに
戸惑いを感じていましたが、ある日水車小屋でふたりきりになった時
男に腕をにぎらせたまま恍惚となってしまう自分に驚きます。
彼女は神に救いを求めようとしますが、急に考えを変えました。

それでヴェローニカは誰に救いを求めると思います?
夫なんですよね… 別に何かしたってわけでもないんですけど。
いとこの方もわりとあっさりしているんです。

『大学時代(Auf der Universitat)/1862年』
これは岩波文庫の時に書いたので省きますけど、この物語も語り手がローレという娘に
熱い想いを寄せていたと思ったら、いきなり傍観者になっちゃって驚きました。

どれもフランス人ならもっと熱烈でドロドロに展開しそうな話しなんですけど
さらさら~とあきらめて思い出しておしまい、というふうに終わってしまいます。
熱い想いの吐露もなく、お互いをとことん傷つけあうような激しさもなくて
恋愛小説だとしたらちょっと物足りないんじゃないかと、私は思うのですけれど…

でもね、文章はとってもきれいなの。

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