まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
ゆる~い気持ちでお読み下さい。

『メトロポリス』徹底的な格差に背筋が凍る

2011-06-16 22:57:49 | ドイツの作家
METROPOLIS 
1926年 テア・フォン・ハルボウ

『メトロポリス』と聞いて思い出すのはQUEENの挿入歌と『Radio Ga Ga』のPVで
フリッツ・ラングの映画は見に行ってないんですけどね…
小説でこんなに面白いなら映画はどんなに素晴らしいんでしょうね?

映画用の脚本が先にあったというこの物語、そのせいか文章で読むと
随所で動機付けが希薄な気がしないでもないですが、それはおいといて…
目くるめくスピード感でぐいぐい引っ張られていきます。
ちょっと忙しいけど…

詳しくは書きませんが、メトロポリスという未来都市を舞台にして
4:3:3ぐらいの割合で、社会派小説:SF:ラブストーリーが描かれています。
あくまでも私の印象ですけどね。

労働者たちが機械労働に食いつくされ消耗していくメトロポリスの主であり頭脳であって
神の域にまで達している人物が、ヨー・フレーデンセンという
愛と人の心を無くした男性です。

フレーデンセンの息子フレーダーは、富裕層の息子たちの溜まり場に
汚い子供たちを連れて現れたマリアという女性が忘れられなくなります。
マリアはで労働者たちに戦い以外で自由を得ようと訴える指導者のような女性でした。

フレーダーとマリアは再会して愛し合うようになります。
しかし恐ろしい計画を持っていたフレーデンセンは、発明家ロートヴァングに依頼した
機会人間(ロボットという言葉はまだ無かったそうでございます)の顔を
マリアと同じにして、本物のマリアを閉じ込めてしまいました。

愛するマリアと同じ顔を持つ淫らなマリアを前にしたフレーダーも
平静さを失って軟禁されてしまうのでした。

フレーダーの唯一の仲間と言えるフレーデンセンの元秘書ヨザファートも
裏切るようしむけられ、メトロポリスを発つことになります。

そしてある日、機会人間のマリアに導かれた労働者たちは暴徒となって
メトロポリスの中心を襲い、都市は崩壊していきます。
ところが、この状況を望んでいたのは、実はフレーデンセンでした。

さてさて、フレーダーとマリアはどうなってしまうのか?
メトロポリスはどうなっていくんでしょう?

どきどきするテンションを保ち続けた物語のエンディングが
いきなりそうなっちゃう? と気が抜けたりもしましたが
テレビが無い時代の娯楽である映画がもとになっていますんでね… 良しとしよう。

私が読んだ中公文庫版は、訳注も大量にあり、解説も多かったので
本の厚さのわりにはけっこう早く読めると思いますよ。

当時の最先端テクノロジー(ラジオ、バス、ネオンなど)がちりばめられていますけど
今見ればとってもアナログです。
化学が進むスピードって空恐ろしいですね。

それよりも内容がやけに現代にマッチしているような気がしています。

もしかしたら、貴族社会と庶民の格差を書いていたのかもしれませんが
近年の、所謂セレブと下流におきかえてもピッタリはまります。

徹底的に富を享受して、下々の苦労は知るかいな…と、さらに富を作る人々と
上を見たって仕方ないさ、生まれが違うんですもの…と脱力した人々のコントラスト…
最初の方の、フレーデンセンが単純労働者を見下した言葉なんか
今でも言ってる人がいそうなんですよね。

作者にどえらい先見の明があったんでしょうかね?
どんな時代も人間の本質は変わらない…ということなんでしょうか?

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« フランス王ルイ15世愛妾 マ... | トップ | フランス王ルイ15世愛妾 ジ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

ドイツの作家」カテゴリの最新記事