まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
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『にんじん』この家族に愛は見える…?

2010-05-30 20:13:19 | フランスの作家
POIL DE CAROTTE 
1894年 ジュウル・ルナアル

『にんじん』を『赤毛のアン』の男の子バージョンだと
思っている人がいるかもしれませんけど(わたしだ… )大きな間違いでございます。

小さな頃に少年少女名作集みたいなもので読んだような気がするのですが
こんなに殺伐としていたかしら? 編集されてた?

“ にんじん ” と呼ばれる少年と、父のルピック氏、母ルピック夫人
兄フェリックス、姉エルネスチイヌの5人が主な登場人物です。
フランスの田舎か郊外が舞台で、一家はわりと裕福なようです。

60篇弱の短いエピソードから成る1冊で
物語というほど長くはないのでひとつひとつは揚げませんけど
夫婦仲の悪さのとばっちりをモロに受けている少年が、キレがちな子供に育ってる…
という印象が強く残っています。

たしかに、お子供は正直なだけに残酷なところがあることも
計算高さをうまく隠す…という一面があることも
虫なんか平気で殺す、という好奇心旺盛さもわかってますけど
この本は、にんじんという少年をダシに、親の(特に母親の)非道さを
存分に吐露している気がしてなりません。

例えばね…
食事中、家族は一切口をきかず、たまにルピック夫人が犬に話しかけます。
で、初めてルピック夫人が「パンをとって」というとルピック氏が投げつけるという…
にんじんがルピック氏と散歩に行こうとおめかししていると、夫人が行くなと言うし
ちょっと冗談をいったぐらいで出張のおみやげをしまい込まれて一生もらえません。

おねしょをしたらスープに混ぜられて、飲んだら大笑いする、
にんじんの額にツルハシがささって血が出ているのに、気絶した兄の方を看病する、
にんじんだけメロンがもらえず、ウサギの餌からあさって食べる、って
どうみたって、ひとりだけ虐待されてんじゃないの?

ルピック夫人はたまに優しさをみせますが、それが隠された愛情だとはぜったい思えない、
気まぐれで頭をなでる飼い主みたいな感じ…

そして、にんじんは口答えもしなければ、怒りも泣きもしないのです。
そのかわり癇癪もちで、嘘つき、たまに凶暴です。
このままほっといったら大変なことになるんじゃないの? と心配になったところで
(ほんの)少し明るい未来が垣間見えるラストが訪れます。

兄、姉、にんじんを同じように気にかけてくれて、一緒に転げるほど笑ってくれて
たまにお小言をくれるルピック氏の存在がなかったら、にんじんはどうなったことやら…
皮肉なことに、不仲な両親のバランスが上手くとれていた、ということでしょうか?

解説には “ 児童教育の貴重な参考書 ” “ 年少の読者に類い稀な一冊 ” となってるけど
年端のいかない子に読ませても、きっと意味が分らないと思いますよ。
モグラとか猫の頭が飛び散るところは面白がるかもしれないけど…

にんじん 角川書店


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