まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
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『幼なごころ』子供の世界もあまくない

2010-02-05 01:46:50 | フランスの作家
ENFANTINES 
1918年 ヴァレリー・ラルボー

私は子供目線の物語は嫌いではないんですけど、この本はちょっと…

子供が主人公の本と言えば、子供ならではの純粋さや無垢さを描いたり
大人には計り知れない根っからの狡猾さや意地の悪さを暴いたりします。
中にはまさかと思うようなことを考えているエロ…おませな子がいたりして

最初はこの本もそんな感じかしら、なんて思いながら読んでいたのですが
なんだかだんだん違ってきたぞ…
見たくないものをいっぱい見せられたような気になってます。

『包丁(Le Couperet)』
7歳のミルーは、田舎の屋敷で夏の休暇を過ごしています。
小作人の娘ジュリアに、新しくやって来た不幸な羊飼いの娘ジュスティーヌを
もっと不幸な目に遭わせてやろうと言われ、とても乗り気だったミルーだったのに
ジュスティーヌをひと目見るとその思いつきに後悔を覚えました。

始めて抱く恋心ってやつですかね?
12歳のジュリアも、単なる思いつきでミルーをたきつけた訳ではなさそうです。
これからの夏の休暇が楽しみですね!

『偉大な時代(La Grande Epoque)』
工場主の息子マルセルは、夏の休暇中、工場長のふたりの子供たちと遊びます。
領地内に王国を作り、戦争をして取ったり取られたり、同盟を結んで敵を倒したり
植民地を作ってまた取ったり取られたり…
ある日ふたりの赤毛の少女に出会い声をかけましたが、ふたりは相手にしてくれません。
マルセルはなんとか仲良くなろうと躍起になります。

子供らしい遊びをしていながら、かなり昔の歴史を取り入れているあたり
こんな授業もいいんじゃないか? と思いましたよ。
歴代の王様や有名な将軍の名前はこうやって覚えたらいいんじゃないかしら?

上にあげた2篇はわりに無邪気な内容に見えますが、けっこう難しいことを考えてんのよ。
大人たちの会話の空虚さとか、身分違いの悲しさとかね。
他の物語の子供たちも割と込み入ったことを考えております。
子供が子供なりに頭をひねって…というのとは、ちょっとレベルが違います。

で、全体的に、お下げ髪の膝丈スカートの少女がたくさん登場するな…なんて思っていたら
最後の2篇、『ひとりぼっちのグウェニー』と『平和の救い』を読んで
ちょっと引いたわ。

詩的に美しい文章で書いてあるけれど、大人の女性を好きになれない男性が
「幼い少女が好き!」って言ってるようなものなんですもの。
作家自身の嗜好がどうだかは知りませんよ。
愛した女の人もいたみたいですからね。

表紙には “ 作家に愛される作家 ” と書かれています。
過去の名作への造詣も深い方のようです。
名作を引用したりほのめかしたり…という書き方は嫌いではありません。

いい作家なんでしょうね?
でもこの本は苦手なんですよね

幼なごころ 岩波書店


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