まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
ゆる~い気持ちでお読み下さい。

『青い麦』少年、愛と愛情の違いを知る夏

2010-09-27 21:48:48 | フランスの作家
LE BLE EN HERBE 
1923年 ガブリエル・コレット

私は少年少女が恋愛にうつつを抜かすのも、
男子たちが1日の90%、いやらしいことを考えて過ごすのも当たり前だと思いますよ。

思えば十代の恋愛には、日々の生活や社会的な苦労がないだけに
美しくて切なくて、浸りやすいものですよね。
そればっかり考えてりゃいいんだもの。

『青い麦』の主人公フィリップとヴァンカは、まさにそんな恋愛真っ最中。

ふたりの両親は海辺に共同の別荘を持っています。
フィリップとヴァンカは幼い頃から毎年夏の休暇の2~3ヶ月をともに過ごしてきました。
今やフィリップは16歳、ヴァンカは15歳。
今年の夏、ふたりの想いは今までの夏とは違っていました。

このふたり、海老をとったり水遊びをしたりしてはしゃいでたと思ったら
いきなり将来のこととか話し出しちゃうんですよね。

それでフィリップは、まだ上の学校に行って
バカロレアっていうんですか? 大学入学資格をとったり、就職しないと
結婚できないと考えてイライラしてきちゃうわけなんです。

一方ヴァンカは、すでにお互いがお互いのものなのだから…と落ち着いた様子。
しかしその想いはフィリップよりいっそう強いもののようです。

ある日、フィリップの前にひとりの女性が現れます。
30代の優雅で妖艶なマダム・ダルレー…
彼女は最初からフィリップを「ムッシュウ」と呼び、ヴァンカを無視し
あきらかに魅力を見せつけているようでした。

あとはご想像通りですよ
フィリップは尻込みしながらも、マダムの大人の魅力にやられちゃいます。
そして大人の関係に身を投じちゃいます。

その関係に気付いたヴァンカだって黙っちゃいません。
フィリップに自分の愛をわからせようと身を投げ出します。

幸福そうなヴァンカとは裏腹にフィリップの想いは… てな内容です。

コレットが書きたかったのは、恋愛感情に年齢は関係ないということらしいのですが
誰の誰に対する想いが愛なのか…ちょっと悩みました。

フィリップの、ヴァンカに対する愛が幼くて、マダムに対する愛が大人の愛、
というふうに考えるのはどうかと思うし…

15、6歳で将来を決めようとする若いふたりは滅茶苦茶真剣です。
でもなんたって十代の夏で海辺だし、一時の盛り上がりのように思えます。

フィリップのマダムに対する想いは、どちらかというと憧れの域を出ていないと思うのよ。
手ほどきして下さった女性への畏怖と憧憬…みたいなものかしら?
だって、美しくてテクニシャンの女性ですよ! しかも自分からアタックして下さる。
少年たちなら愛とか恋とか関係なくいっちゃうでしょう?

そしてマダム・ダルレー… この人は本気なの?
恋愛のエキスパートなら、恋に夢中の初々しいカップルはそっとしておいてやらんかな?
初心な少年を落とそうと躍起になるあたり、クールじゃない気がするけどね。

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4 コメント

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コレットといえば・・・・・・ (マリアンヌ)
2010-10-01 14:04:23
まりっぺ様、こんにちわ、お久しぶりです。

さて、この「青い麦」、もう30年以上も前に読んで忘れてしまっておりました。それに持っていた文庫も古い家が取り壊される時に、処分してしまい、手持ちの物はありません。
でも、読んだ時、コレットの瑞々しい感覚に驚嘆した記憶があります。
でも、正直に告白しますけれど、フランス文学って真面目に読んだのはアンドレ・ジイドだけなんですよ。フランス文学ってとっつきにくい印象が私にはありますねえ。
そうそう、この作者のコレット、かの有名な女優、オードリー・ヘブバーンを見出した人ですよね。昔、なんかの本で読んだ事があります。
コレット、ヘブバーンのどんな面が女優としていいんだ、と思ったのでしょうかね。
いずれにしても、二人は運命的な出会いをしたのでしょうね。

ハンガリー王妃シリーズ、長くなりそうですね。楽しみにしていますよ。
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こんばんわ (まりっぺ)
2010-10-03 00:34:09
マリアンヌさん、こんばんわ
おひさしぶりです。

コレットはミュージカルの主役を探していたんですよね?
ふたりともが別々に出向いていた異国の地で出会えるとは、やはり運命でしょうか?

私も以前はフランス文学はあまり好きではなかったのですが、ゾラとモーパッサンを好きになってからは結構読むようになりました。
ドーデーやフィリップなど、昔の素朴な物語が好きです。
でも、映画は相変わらず苦手です
ミーハーと言われてもいい…思い切り楽しめる娯楽ものが好きで、ひねりが効いたフランス映画はあまり楽しむことができません。

ハンガリー王位はもう少しするとハプスブルク家に移るので残り少なになってきました。

次はどこにしようかな…と考えている今日この頃です。
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コレットの映画 (ルージュ)
2010-10-08 02:29:39
まりっぺさま みなさま こんにちは

私もこの「青い麦」は昔読んだのでうろ覚えなのですが、ラストでヴァンカのほうが「あなたはそれをわたしに求めるべきだったのよ。」と
フィリップを誘い、一線を越えてしまうのですが、数ヵ月後わが身をのろい、泣き叫ぶのであった・・・と記憶してるのですが、ちがってたかしら?これは妊娠を暗示してるのかな・・
と思ったのですが。
もう一度よんでみます。

コレット原作の映画が公開されるので見に行こうか迷ってます。
「わたしの可愛いひとーーシェリ」です。
高級娼婦が仲間の息子を愛人にして・・という話です。
たしかにフランス映画って意味不明の自己満足的展開が多いのでみたあと今のはいったいなにがいいたいの?と思うことがあります。
返信する
ラストは (まりっぺ)
2010-10-08 22:58:41
ルージュさま、こんばんわ

私が読んだ新潮社文庫(堀口大学訳)では、窓からヴァンかの幸福そうな歌声が聞こえてくるのですけど、数週間後には同じ窓辺で自分を有罪と知って泣き得ることもある…それをフィリップは想像もしなかった、というようになっています。少し省略していますが。
でも暗示されているのはたぶん妊娠でしょうね?

『シェリ』が映画化されるのですか?
かなり年上の女性役を演じるのはどなたでしょう? というわけで公式サイトを見たらミシェル・ファイファーなんですね? うぅぅむ…ハリウッド制作なんでしょうか?
キャシー・ベイツがいい味出しそうです。

フランス映画は私もちょっと苦手です。
あまり観ていないですけど『サム・サフィ』とか好きだったような気がします…古いですね。
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