まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
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『サキ傑作集』サキのミステリー

2010-05-07 00:46:14 | イギリス・アイルランドの作家

サキ(ヘクター・ヒュー・マンロー)

ちくま文庫の『ザ・ベスト・オブ・サキ』と新潮文庫の『サキ短編集』では
皮肉たっぷりのユーモアが効いた物語を紹介しましたが
サキの作品にはちょっとミステリアスなものもあります。

岩波の『サキ傑作集』からはそんな物語を…

『狼少年(Gabriel-Ernest)』
ヴァン・チィルは、友人から「君の家の森に得体のしれないものがいる」といわれた日
素っ裸で日光浴をする少年を見かけました。
彼は森の中に住んでいて、ウサギや鶏、子牛の肉を食べると言います。

マイケル・ジャクソンの『スリラー』なんかで映像も見ているわけだが
なんだか読むだけでゾッとする物語です。
特にラスト、思い浮かべるだけで恐ろしい…

『蜘蛛の巣(The Cobweb)』
若いラドブラック夫人は、嫁いで来た日から台所を心地よくしたいと思っていました。
しかし80年近くも台所を我がものにしてきた女中のマーサは聞く耳を持ちません。
ある日マーサが「死神がきた」と言いだしました。

お姑さんならともかく使用人なのにね…でも80年の貫禄にはかないませんよね。
古ぼけて汚れた台所に居座る老嬢って、なんだか不気味です。
居間のソファで編み物とかしていればミス・マープルみたいで可愛いのにね。

『セルノグラツの狼(The Wolves of Cernograts)』
グルーベル男爵が手に入れた古城にはある伝説がありました。
代々城を持っていたセルノグラツ家の者が死ぬ時、狼たちが一斉に吠えるというのです。
その夜古城のまわりでは何百頭もの狼たちが吠えていました。

実は落ちぶれた貴族のエピソードがからむ、哀しい話なんですけど
最後にはたっぷり皮肉が効かせてあります。
家柄に命をかける貴族の世界…利用できることはなんでもやる!という
ガッツが感じられます。

『イギリス怪奇傑作集』という本を読んだ時にも思いましたが
おどろおどろしい描写も絶叫もなく、じわじわと恐ろしさを感じる要素が
イギリスのミステリーにはありますね。
何百年も前から建っている城や屋敷があるだけに、説得力があります。

でもやっぱり、ユーモアがあって意地悪な作品の方が好きですね。
涼しい顔で他人を欺く手管が鮮やかでございます。

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