まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
ゆる~い気持ちでお読み下さい。

『なんといったって猫』多角的に猫を眺める

2011-06-05 01:25:06 | イギリス・アイルランドの作家
『PARTICULARLY CATS』
1967年 ドリス・レッシング

猫ちゃんに関する物語やエッセイは好きですが、この『なんといったって猫』は
他の本と少し毛色が違う気がしています。

レッシングが、南アフリカの農場時代にまわりにいた猫たちのことと
ロンドンで飼っている猫たちのことを書いているわけなんですが
飼い猫に愛はある、愛はあるけど猫は獣である、という一線を
ガッツリ引いている感じがします。

たとえばアフリカでは…
農場には家猫・外猫あわせてたくさんの猫が生息しています。
子猫もがんがん生まれます。
大空いっぱいに舞う鷲に目の前で子猫がさらわれても、それはしかたがありません。
増えすぎた子猫は人の手で始末することになります。

人に懐いた猫にはもちろん餌を与え、共生します。
しかし、農場の鶏や子猫を狙う山猫・野良猫には銃や罠で対応します。
以前農場にいて野生化した猫を撃ち殺すこともありました。

そしてロンドンでは…
さすがにフラットで飼う猫は、アフリカ並みに自由気ままに育つわけではありませんが
レッシングは医者が止めるまでは猫の本能に任せて子供を産ませています。
逆に相手選びがどのような法則やしきたりによって進むのか、窓辺から鋭く観察しています。
猫は好きな相手を勝手に選べるわけではないのですね。

そしてやはり、母猫の育児能力の許容範囲を超えてしまった子猫は(1回だけですが)
人の手によって始末しています。

主に登場するのは、媚を売るのが上手く女王でないと気がすまないシャム猫と
後からやってきて、シャム猫のポジションを虎視眈々と狙う黒猫の2匹です。
この2匹を、性格はもとより餌の食べ方、眠る場所、外出の流儀、喧嘩の優劣、
出産と育児などで対比させています。

猫同士ってわりと早く仲良くなるもんだと思っていたけど違うのね。
仲良くなるというよりは、相手の存在を諦めて自分のスタイルは崩さない、という
生き方をしているのではないか、と思えました。

ただの「猫がこーしました、あーしました」という話しではなく
文学的視点・哲学的視点・生物学的視点など多方面から見つめた一冊、という感じです。

だから猫を知らない人がこの本を読んで「あー!猫って可愛いぃっ!!」という気持には
ならないと思うし、新たに「飼ってみたい」なんて気はおきないと思うんですけど
以前長いこと飼ったことがある人、現在飼っている人は、各方面から書き表された猫を
自分の猫の可愛い仕草に置き換えることが可能だと思います。

いくら難しい書き方をされていても、猫が仰向けにデローンと寝ている姿を思い浮かべれば
本当ぉぉにキュートだものね
コメント (2)
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